1,800円以上の注文で送料無料

芝公園六角堂跡 狂える藤澤清造の残影 の商品レビュー

3.6

8件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/03/10

芝公園六角堂跡/西村賢太著 #読了 既に芥川賞を受賞して世に名を売り、作家としてのみならず、タレント業で世に知られるようになった氏が、改めて藤澤清造の殉後弟子を自認し直すまでを4篇の短編をもとに描いている。本人も誰に読まれる必要も無いと述べており、自身が藤澤の殉後弟子として襟を...

芝公園六角堂跡/西村賢太著 #読了 既に芥川賞を受賞して世に名を売り、作家としてのみならず、タレント業で世に知られるようになった氏が、改めて藤澤清造の殉後弟子を自認し直すまでを4篇の短編をもとに描いている。本人も誰に読まれる必要も無いと述べており、自身が藤澤の殉後弟子として襟を再び糺すまでの決意が描かれている。所謂貫太シリーズとは異り破綻のカタルシスを得られる類の作品では無いけど、西村賢太ファンにとっては未読は避けたい逸品でした。

Posted byブクログ

2024/02/14

本人は「別格の作」と評しているということだが、その意味は、誰に読ませるでもなく自分のために、自分が清造の歿後弟子として恥ずかしくない人間であるために書いたという点で「別格」ということらしい。 冒頭、稲垣潤一のコンサートのくだりが異常に長く、なんだこれはと思っていたところからグッと...

本人は「別格の作」と評しているということだが、その意味は、誰に読ませるでもなく自分のために、自分が清造の歿後弟子として恥ずかしくない人間であるために書いたという点で「別格」ということらしい。 冒頭、稲垣潤一のコンサートのくだりが異常に長く、なんだこれはと思っていたところからグッと暗い調子になり、反省して、かなり自省的な調子で最後まで行く。読み終えてみればなるほど冒頭でコンサートの華やかさをしつこく描いておくことで後半との落差をつけているのだなとわかる。誰に読ませるためでもないと言いつつも、そういう意味ではちゃんとおもしろくしようとしているところがやはりかわいいと思う。

Posted byブクログ

2023/05/12

どうしようもないところまで追い詰められた、ギリギリの人に、射し込んだ純文学という一筋の光、蜘蛛の糸。 そんな切実な救いが胸に沁みる。 文学好きだけでなく、一度は絶望し堕落した経験がある全ての人に勧めたい。 いつもの罵倒や暴力、女性差別などは鳴りを顰め、その意味でも幅広い読者に受...

どうしようもないところまで追い詰められた、ギリギリの人に、射し込んだ純文学という一筋の光、蜘蛛の糸。 そんな切実な救いが胸に沁みる。 文学好きだけでなく、一度は絶望し堕落した経験がある全ての人に勧めたい。 いつもの罵倒や暴力、女性差別などは鳴りを顰め、その意味でも幅広い読者に受け入れ得る作品。

Posted byブクログ

2023/05/03

西村氏の本もかなり久々だし、私小説も同レベルで久しぶり。 西村氏が藤澤清造氏についての思いをこめた作品で、ご本人の書きたいことを書いたもの。自分の心を守るために小説にしている部分は当然にあり、そのために修正を加えておられる。西村氏という作家に思いが深い読者ならばもっと楽しめたのか...

西村氏の本もかなり久々だし、私小説も同レベルで久しぶり。 西村氏が藤澤清造氏についての思いをこめた作品で、ご本人の書きたいことを書いたもの。自分の心を守るために小説にしている部分は当然にあり、そのために修正を加えておられる。西村氏という作家に思いが深い読者ならばもっと楽しめたのかな

Posted byブクログ

2022/03/01

「芝公園六角堂跡」 ミュージシャン J・I のライブに招待されて 舞い上がってしまう北町貫多 ところがそのライブ会場が 藤澤清造の死去地に近かったもので 虚栄に浮かれ、初心を見失った自分自身を まじめに見つめなおすきっかけにもなった その機会を与えてくれた J・I には心のなか...

「芝公園六角堂跡」 ミュージシャン J・I のライブに招待されて 舞い上がってしまう北町貫多 ところがそのライブ会場が 藤澤清造の死去地に近かったもので 虚栄に浮かれ、初心を見失った自分自身を まじめに見つめなおすきっかけにもなった その機会を与えてくれた J・I には心のなかで感謝せざるをえない 自虐に満ち満ちたようでいて かなり自己愛的な筆者の考え方が現れている 「終われなかった夜の彼方で」 前の作品では、J・I さんに気を使う面もあって なんかいい話っぽくまとめてしまったが 本当はぜんぜんいい話なんかじゃない 藤澤清造の没後弟子を名乗っておきながら 自分もいい歳になるというのに 全集の完成に向けて、具体的なことはなんにも進んでいないのだ そのような現状を招いている最大の原因は 藤澤の肉筆が古書市場に現れるたび 高いカネを払っているからなんだけど 金欠の問題というより その完璧主義が足踏みを余儀なくさせているのだった 完璧主義は「根津権現裏」の登場人物を縛るものでもあった 「深更の巡礼」 藤澤清造にハマる前は田中英光を研究していた それで、文学賞をとったのち 田中英光の新しい作品集を編纂する流れにもなったが 出版社の事情に阻まれてあまり上手くいかない しかし結局、商売がやりたいわけではないし ましてタレントとしてチヤホヤされたいわけでもない 文学に触れていたいのである それを、刹那的な情熱といわないこともないけど 「十二月に泣く」 田中英光は太宰治の墓前で自殺した それはたぶん最終的に、太宰治との向き合いにおいて 自分の世界を完結させてしまったのだと思う そういう生き方が西村賢太の琴線を どう刺激したかはわからんが 彼は藤澤清造の墓というものに強い執着を持っていた 藤澤の墓を勝手に作り直し その隣に自分の墓をたてた彼は そこから逆算して自分の世界を構築していったのだろう

Posted byブクログ

2022/06/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 追悼の思いで、最新作を読もうと思ったら文庫化されたのが最近で、単行本としてはずいぶん前に出ていた。新作としては他にあった。しかも、内容は自分の原点を見つめ返してモチベーションを上げて決意を新たに再起を図るというもので、お亡くなりになった直後に読むにはあまりに切なくてズシンとくる。  ストーリー性があまりなくて、主人公が悶々と考え続けている。主人公が暴言を吐いたり暴れたりするのを期待していたので痛快さに欠ける。  しかも初めて西村さんの本を読むとしたらちんぷんかんぷんだろうから、他の本を4~5冊読んでから読んだ方がいい。なじみの人向けと言える。  初期作品しか読んでいなかったのだけど、もう新作が世に出ないのかと思うと寂しい。

Posted byブクログ

2021/03/27

「芝公園六角堂跡」 「終われなかった夜の彼方で」 「深更の巡礼」 「十二月に泣く」 (文春図書館 著者は語る 『芝公園六角堂跡』西村賢太) (別格の記――『芝公園六角堂跡』文庫化に際して) こ、これは新機軸、というのか、自家中毒というのか……。 西村賢太にはずっと「うるせえこの...

「芝公園六角堂跡」 「終われなかった夜の彼方で」 「深更の巡礼」 「十二月に泣く」 (文春図書館 著者は語る 『芝公園六角堂跡』西村賢太) (別格の記――『芝公園六角堂跡』文庫化に際して) こ、これは新機軸、というのか、自家中毒というのか……。 西村賢太にはずっと「うるせえこの経血女が!」「秋ちゃん、でえ好き」などと書いてほしい者だが、 記事「著者は語る」にて、そんなくだらない”自称”読者にはうんざり、と言われてしまった。 「別格の記」という、その記事の注釈を読んで、本気なのだなどれどれ、と。 表題作では、これまで秋恵が好きというから聞いていたと書いていたJ・I(稲垣潤一)、実は子供の頃からのファンだったと明かしたり、よれよれの服は自己演出のものだと名言したり(そもそも『どうで死ぬ身の一踊り』のころはスタイリストらしくスーツでアタッシェケースを提げていたし)、作品だけでなくタレント化して自己演出をしていたにすぎない、と言われれば、読者としても薄々わかっていたけれど、一抹の寂しさを感じないわけでもないが、まあ表題作ははいそうですかというもの。 この作品集で凄いのは、次の短編、そのまた次の短編、さらに次の短編で、必ず前作を否定するというかズラす。 決意と振り返りを延々行いながら、では何をするかと言われれば、ただその過程を作品化するだけなのだ。 しかもあとがきめいた短文をつけて、それすらもズレのため? 43ページ「イヤ、自分で云うのも何んだが(この辺、作中の視点が滅茶苦茶だが)、敬愛なぞ云うヤワなレベルではない」という一文に現れるように、もう西村でも北町でもどうでもよくなるスレスレのところまで、この一冊で自己演出を、解体する? いやそれすらも自己演出の一環? もういいんだかよくないんだかわからない。

Posted byブクログ

2020/11/17

【何の為に私小説を書くのか。鬼気孕む短篇集】厳寒の深夜、師・藤澤清造の終焉地に佇む北町貫多。静かなる鬼気を孕みつつ、歿後弟子の矜持を示す四篇。巻末に「別格の記」を付す

Posted byブクログ