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非色 の商品レビュー

4.5

118件のお客様レビュー

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2023/10/28

マティス展に行ったら飾られていたので何気なく手に取ったが、本当に読んで良かったと思える一作になった。1967年に刊行された作品なのに、まるで色褪せていない。今でこそ皆に読んで欲しい。他の有吉佐和子作品も読んでみたい。

Posted byブクログ

2023/09/09

敗戦直後の日本、米兵トムと結婚し娘メアリー を産んだ笑子は、黒い我が子に向けられる冷ややかな視線に苦しみ、幸せな暮らしを夢見て夫の元へ渡米する。ところが、待っていたのは、もっと激しい人種差別と貧しいハーレムでの半地下生活だった。 逆境の中、気丈で逞しく生きる笑子の姿が潔い。時々...

敗戦直後の日本、米兵トムと結婚し娘メアリー を産んだ笑子は、黒い我が子に向けられる冷ややかな視線に苦しみ、幸せな暮らしを夢見て夫の元へ渡米する。ところが、待っていたのは、もっと激しい人種差別と貧しいハーレムでの半地下生活だった。 逆境の中、気丈で逞しく生きる笑子の姿が潔い。時々、逆上し、突飛ない行動に出るのも気持ちいい。 船で乗り合わせ渡米した笑子と同じ境遇の竹子、志摩子、麗子。笑子を軸に4人の対比が描かれる。夫の人種によって住む場所が決められ、ハーレムよりもさらに下の過酷な暮らしがある。 同じ黒人でも、アフリカの国から派遣された黒人は優秀で母国に戻れば要職が約束されており、ハーレムに住む黒人を蔑む。 白人は白人でもプエルトリコ人やアイルランド人、ユダヤ人は、蔑視される。 同じ肌の色でも、金持ちは貧乏人を蔑み、頭のいい者は悪い人間を馬鹿にし、家系の良い者は成り上がりを罵倒する。自分より何らかの形で下の者を設定し、自分は優れていると思いたい。 人種差別は、色ではない。色に非らず。階級闘争である。 本作は有吉佐和子氏が留学経験から1964年に33歳で書いた作品との事。差別を通して人間の嫌な部分を見事に暴き出している。 その若さでここまでアメリカの暗部に迫るとは凄い。 でも過去のアメリカの話ではなく、現代の日本でも通じ、そして、自分の心の中にもあるなぁ、と気づかされ、戒められた。 娘メアリーの賢明さに希望を抱く。彼女を強くしているのは、学びである。色や階級で決まるのではなく、意志と努力で人生を切り開く事ができるそんな社会でありますようにと、願わずにはいられない。

Posted byブクログ

2024/02/13

人種差別の話と一言で言ってしまうにはもったいない本だと思う。 発表から半世紀を過ぎているが有吉佐和子さんの文章には本当に心をつかまれる。 本文中にこんな一節がある。「人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。そ...

人種差別の話と一言で言ってしまうにはもったいない本だと思う。 発表から半世紀を過ぎているが有吉佐和子さんの文章には本当に心をつかまれる。 本文中にこんな一節がある。「人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。それでなければ落着かない、それでなければ生きて行けないのではないか。」 真理だなぁと思う。

Posted byブクログ

2023/08/30

有吉佐和子文学忌 1931.1.20〜1984.8.30 有吉忌 佐和子忌 “色に非ず” 1964年発表の作品です。 「戦争花嫁」と呼ばれた日本人女性の視点から、日本での差別、アメリカへ渡ってからの当時の人種差別と偏見を問いながら戸惑いながら、自分の生き方を探し求めていく骨太の...

有吉佐和子文学忌 1931.1.20〜1984.8.30 有吉忌 佐和子忌 “色に非ず” 1964年発表の作品です。 「戦争花嫁」と呼ばれた日本人女性の視点から、日本での差別、アメリカへ渡ってからの当時の人種差別と偏見を問いながら戸惑いながら、自分の生き方を探し求めていく骨太の小説です。 敗戦後の日本、東京。家族を養う為米兵相手の店で多くの日本人女性が働いていました。主人公の笑子もそのひとりで、そこで積極的にアプローチしてきた米兵と結婚します。彼の肌の色は黒かったのですが、優しく当時としては、恵まれた生活でした。 彼がアメリカに帰国して、娘と共に後を追ってニューヨークに渡ります。そこからハーレムでの極貧生活が始まります。 それでも笑子は仕事を探して、生活を支え続けます。そこで知る肌の色だけでない差別。彼女は人種差別というより、階級差別として捉えていきます。日本の 生まれが違う、育ちが違うというところです。 有吉さんの小説に描く女性は自分の意思をしっかりと持っていて、非色に出てくる女性たちも 差別に苦しみながらも生きていきます。当時、アメリカでの人種差別を臆する事なく小説にされた有吉さんも骨太です。

Posted byブクログ

2023/08/22

産まれた瞬間決定づけられた差別と逃れられない宿命は、確かにあるのだろう。そこに知らず知らずにハマってしまった日本人妻の物語。リアリティがあり絶望感に陥るが、そのうえで力強さも感じた。 人生は色ニアラズ。戦争での勝者と敗者、持つ者と持たざる者、支配する側とされる側、考えることをやめ...

産まれた瞬間決定づけられた差別と逃れられない宿命は、確かにあるのだろう。そこに知らず知らずにハマってしまった日本人妻の物語。リアリティがあり絶望感に陥るが、そのうえで力強さも感じた。 人生は色ニアラズ。戦争での勝者と敗者、持つ者と持たざる者、支配する側とされる側、考えることをやめた者と考え動き続ける者。しがみついてでも生きる者と死んでいく者。 自分で選択し自分を肯定することで、さだめや運命以上の人生を送ろう、と踏み出す過程の物語に思えた。

Posted byブクログ

2023/08/16

読み終わって正直どうかなぁと思いました。 小説として主張しすぎる感がありどんなものかと思ってましたが、偶然のタイミングで見た某テレビ番組を通して少し感覚が変わりました。 当事者たちにとっては苦難であり、この作品もその一端を垣間見せるに過ぎないのだろう、と当たり前と言えばそれまでの...

読み終わって正直どうかなぁと思いました。 小説として主張しすぎる感がありどんなものかと思ってましたが、偶然のタイミングで見た某テレビ番組を通して少し感覚が変わりました。 当事者たちにとっては苦難であり、この作品もその一端を垣間見せるに過ぎないのだろう、と当たり前と言えばそれまでの陳腐な感想に変わりました。 でも作品としてもう少し抑制を効かせた方がより効果的という感想は変わりませんかね。

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2023/08/03

太平洋戦争後の日本人が黒人と結婚し、後にアメリカへ渡り重ねていく様々な苦労や経験が主に述べられていますが、今読んでも全く古びていない事に驚きます。生きていく上で、誰もが誰かを下に見なければ駄目なのか、分かり易い、白人が黒人を差別する、だけではない、大きな問題を投げかけています。そ...

太平洋戦争後の日本人が黒人と結婚し、後にアメリカへ渡り重ねていく様々な苦労や経験が主に述べられていますが、今読んでも全く古びていない事に驚きます。生きていく上で、誰もが誰かを下に見なければ駄目なのか、分かり易い、白人が黒人を差別する、だけではない、大きな問題を投げかけています。そして主人公の女性の最後の気づき お勧めです

Posted byブクログ

2023/07/30

昭和45年発行の本 今の時代でも古さを感じる事なく読めました 図書館で借りましたが古くて表紙も中の紙も変色してボロボロなページをめくるのも楽しみでした

Posted byブクログ

2023/04/26

差別とは結局自分の中の優位性を顕示するもの。自己肯定感が低いと余計に自分の優位性を誇示したくなるのかもしれない。主人公が自分もニグロだと認めることができたところから、自分の人生を生きれるようになるのだろう。

Posted byブクログ

2023/03/05

戦後間もない頃の話ながら、今に通じるものが多々あり、差別について改めて考えさせられました。 『人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分を優れていると思いたいのではないか。それでなければ落ち着かない、それでなければ生きて行けないのではないか。』 主人公...

戦後間もない頃の話ながら、今に通じるものが多々あり、差別について改めて考えさせられました。 『人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分を優れていると思いたいのではないか。それでなければ落ち着かない、それでなければ生きて行けないのではないか。』 主人公の笑子が問いかける言葉が、胸に刺さります。 それにしても、笑子はよく働く! 厳しい環境に置かれているにも関わらず、前向きで正直で、読みながら沢山の勇気をもらいました。

Posted byブクログ