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日没 の商品レビュー

3.8

169件のお客様レビュー

  1. 5つ

    27

  2. 4つ

    74

  3. 3つ

    43

  4. 2つ

    9

  5. 1つ

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2022/05/13

凄かった…。 割とボリュームあったけど引き込む力に圧倒されながら数時間で読み切ってしまった。 「1984」「PSYCHO-PASS ASYLUM 1」のようなディストピア感。一人称で紡がれるのであくまでも主人公の視点であって、真実は分からない、余韻のある結末と私は捉えた。 この物...

凄かった…。 割とボリュームあったけど引き込む力に圧倒されながら数時間で読み切ってしまった。 「1984」「PSYCHO-PASS ASYLUM 1」のようなディストピア感。一人称で紡がれるのであくまでも主人公の視点であって、真実は分からない、余韻のある結末と私は捉えた。 この物語の面白さは、2つあると思う。 1つは、未来にあるかもしれないと思わせるリアリティさにある。 そしてもう1つは、物語が終始主人公の目線でしか語られていないところだ。つまり、これが現実であるのかそれとも本当に主人公が精神病患者であり、全てが妄想であるのかが分からないため、どちらを捉えるかによって結末の余韻が違ってくるということだ。そこに本当の恐怖があるように思う。

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2022/05/07

05月-05。3.0点。 ある女流作家の元に届いた「召喚状」。無視していると、ほぼ強制で療養所へ連れて行かれる。。。 国による言論統制、思想統制に関する物語。結構ありそうで、それなりにリアル。 どっかで読んだようなテーマだが、筆力のおかでで一気読み。

Posted byブクログ

2022/04/06

桐野夏生さん、「日没」。図書館の貸出しの順番がやっとまわってきた。 前評判は聞いていたけど、めちゃくちゃ怖かった…。 ある日、マッツという小説家のもとに、「文化文芸倫理向上委員会(ブンリン)」という政府機関から、召喚状が届く。何の通知だろうと知り合いなどに聞いてみるがわからない。...

桐野夏生さん、「日没」。図書館の貸出しの順番がやっとまわってきた。 前評判は聞いていたけど、めちゃくちゃ怖かった…。 ある日、マッツという小説家のもとに、「文化文芸倫理向上委員会(ブンリン)」という政府機関から、召喚状が届く。何の通知だろうと知り合いなどに聞いてみるがわからない。しかしマッツの周りで、次々と関係者や知り合いの小説家が自殺したり、亡くなったりしていたことがわかる。ほとんど強制的にその通知にまった「療養所」に行くことになったマッツ。 そこは、政府の意向に沿わないもの、政府批判したもの、過激な性描写があるもの、差別的な表現があるもの、このような作品を書いた作家たちを監禁している場所だった。 電話が通じない、Wi-Fiもない、スマホの充電もできない中、粗末な食事を壁向かいに食べさせられ、私語も許されず、常にカメラで監視され、罰則をくらえば監禁1週間延長。そして「ブンリン」の意に沿う作文を書くよう指示される。 抵抗しながらも少しずつそれに従うようになるマッツ。果たして、もとの生活に戻ることはできるのか…。 大げさだ、現実的にあり得ない、と思う方もいるかもしれない。でも、これがかなり現実と重なる記事を今朝新聞で読んで私は寒気がした。 ある高校の演劇部の演題が、「反原発」的で一部差別的な表現があるため、予定していたケーブルテレビでの放送禁止、脚本改修の処分が下たという。 差別的な表現は、差別的な人物や社会を描くための表現であり、特定の個人を差別しているわけではない、と当事者が語っていたが、全く同じ表現がこの小説の中にも出てくるのだ。 自由に生きるとはどういうことだろう。身体の自由が保障されていれば、それだけで自由と言えるのだろうか。思想信条の自由、表現の自由はどうだろう。今朝の新聞にあったように、政府やスポンサー企業が気に入らなければ、表現を変えさせられるか、表現を保障されなくなってしまうか、「よく聞く話」だ。 さすがに、本人の意志を無視して監禁すれば大問題になるだろう。でも、誰にもわからないところでそれが成されていたとしたら…。 いつの間にか、小説家や劇作家や音楽家が制服に取り入れられていたら…。 表現の不自由展が脅迫などによって中止に追いやられたのも記憶に新しい。菅政権時の学術会議任命拒否事件もあった。私たちは、自由は守られているのか権力によって侵害されてはいないか、制限されてはいないか、常に考えなければいけない。 最初は関係のないことと思っていたら、自分たちが弾圧されていた、という話は過去に実際に起きたことだ。 それにしても桐野さん、後味悪いですよ…。こんな小説書いたらブンリンに監禁されちゃいますよ…。 #桐野夏生 #日没 #読書 #読書記録 #読書記録2022

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2022/04/02

「自由の危機」(集英社新書)からの スピンオフで読んでみよう となった一冊 桐野夏生さん、 お名前だけ存じ上げていたのですが ようやく 手にさせてもらった初読が この一冊 (良い意味で)いゃあ ちと ぶつたまげました こんなふうに 「自由」を壊される状況を これでもか と綴って...

「自由の危機」(集英社新書)からの スピンオフで読んでみよう となった一冊 桐野夏生さん、 お名前だけ存じ上げていたのですが ようやく 手にさせてもらった初読が この一冊 (良い意味で)いゃあ ちと ぶつたまげました こんなふうに 「自由」を壊される状況を これでもか と綴っておられる そんなこと現実にはありえない という浅はかな思いが 読み進めるにしたがって いや これは (この国の)近未来のことじゃないの それに 焚書坑儒ではないけれど この状況は これまでの「歴史」の中で 繰り返し出現してきた「思想狩り」だぞ と 最後まで 一気に読まされてしまいました 警鐘を鳴らす という言葉を身に沁みて 考えさせられました

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2022/03/30

36このような、権力が自由と権利と命を制限するような気持ち悪い物語(ちょっと現実感もあってきみが悪い)を伊坂幸太郎作品で読みたい気分になった。ゾッとするわ

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2022/03/18
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家族に勧められて読んだ。桐野さんの作品はこれが初めて。 表現の自由が「国」によって奪われるということについての警鐘的な話であると思うのだが… いかにせん、主人公への虐待や監禁、薬物漬け、混乱。誰を、何を信じれば良いのかわからない状況に、救われないラスト。 そういった記述が余りにも衝撃的過ぎて、自ら命を絶つことが救いになるような、そんな気分にさせられた。小説としては、あまり読みたくない作品だった。

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2022/03/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 一息に読了。感想は「怖い」の一言です。作家マッツ夢井(本名松重カンナ)は、作品の内容がよくないと総務省文化局から召喚され、「療養所」という名前の施設で、ほぼ監禁状態の生活に。歯向かったりすると、拘束衣を着せられおむつをしてベッドに縛り付けられる。薬漬け、点滴・・・。2人に助けられ娑婆に出れるかと思いきや、着いたところは断崖の上。桐野夏生「日没」、2020.9発行。

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2022/03/09

言葉狩りや、悪書追放というのは昔からありますが、最近ではあらゆるものが自主規制され、誰が見ても傷つかないように漂白されたようなコンテンツが非常に多いですね。それ自体が悪いとは言わないのですが、毒が全くないのはつまらないものです。 そんな状況が進んでいき、読者に悪影響を与えると判断...

言葉狩りや、悪書追放というのは昔からありますが、最近ではあらゆるものが自主規制され、誰が見ても傷つかないように漂白されたようなコンテンツが非常に多いですね。それ自体が悪いとは言わないのですが、毒が全くないのはつまらないものです。 そんな状況が進んでいき、読者に悪影響を与えると判断された小説家が隔離され、更生を促されるという悪夢のような小説です。 読者からの通報によって国が動くという、ポピュリズムの極みのような話ですが、絶対にこういう事は有り得ないのかというと・・・・。 品性に欠けると思う本というのは有りますが、それを判断するのは個人個人であって、全体としてそれを排除しようと動くのは非常に恐ろしい。 ではなんでも出版して良いのかと言われるととても困るんですよね。例えば僕としては「絶歌」は出版して欲しくなかった本ですが、表現の自由というものを守るという点では、あれが国から出版差し止めになる事は絶対違うと思うんです。そういう議論を色々しながら世に問うて行くという姿勢こそが必要ではないかと。 これはそういう議論を経ることなく、「不快」であるという意見の一部を取り上げて、取り締まるという設定です。 最近ちょっと不祥事が有っただけで、作品自体無かった事にされる風潮ともちょっとつながる所あるかなと思いました。作品は作品、人は人という分け方が出来なくなって来ていると感じています。 非常に興味深い作品だと思いました.

Posted byブクログ

2022/03/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

収容の中で狂っていく主人公を描くために必要だったのだとは思うが、主人公があまりに感情的すぎるし、後先を考えない点が目立つ。 周囲の人間も非現実的なほど性格が悪く、人間の描き方として納得できない部分が多かった。 帯には仰々しく「警世小説」と書かれている割に、表現の不自由に関する論議が深いわけでもないので、拍子抜けした。

Posted byブクログ

2022/02/28

こんな事があってはいけないし、ある訳がない。 小説の中の話に背筋が寒くなる、が、果たしてそうなのか? 今のこのご時世も本音を言うことは出来ているのだろうか? 忖度や阿りの蔓延する世の中になりつつはないだろうか。 そんな中でよくぞ書いて下さったとの思いが高まる。

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