pray human の商品レビュー
“聞く”ことは人になにをもたらすのだろう。 語ること、そして書くことは自己と向き合う作業だ。その過程は、もしかしたら自己治癒につながるかもしれない。読むこともまた、言葉を発しない対話だ。ページを繰る手が止まり、知らず知らずのうちに自らの過去やあの時の思いが引き出されてゆく。 ...
“聞く”ことは人になにをもたらすのだろう。 語ること、そして書くことは自己と向き合う作業だ。その過程は、もしかしたら自己治癒につながるかもしれない。読むこともまた、言葉を発しない対話だ。ページを繰る手が止まり、知らず知らずのうちに自らの過去やあの時の思いが引き出されてゆく。 では”聞く”ことはどうだろう。 相手を救いたいとか、立ち直らせたい応援したいとか、自分を重ねるとかではなく、ただ聞くことに徹する。それがもたらすものとは。 “安城さん”という聞き手を登場させなければ、作者もここまで物語を進めることはできなかったかもしれない。 親友や仲間といった自分にとっての理解者に対しては決して語れなかったことを、安城さんという相容れないはずの異者に向けて語り終えたとき、主人公は“私たちは似たもの同士だ”と思い至る。 聞き終えた安城さんは語る。 “人の話なんか時間が経てば、少しずつ忘れていく。けれど、自分の話を聞いてくれた人のことは絶対に忘れない” 自らを語るのではなく切実に聞くことで相手の中に残り続けるということ、が印象に残る小説だった。
Posted by
本屋の中古本で面白そうだなと思って衝動的に買った。 正直よくわからないと言うか内容を上手く消化できない感じ。 読んでてずっと心に響かない。 買ってちょっと失敗したなと後悔した作品。
Posted by
どんなに血塗れでも、人間でないような存在になってしまったとしても、誰にどんな目で見られようとも、ねえ、生きていこうね。 そう言われたような気がしました。 本書を読んでものすごく感動したか、とか、学びがあったか、とかは正直あまり感じなかったけれど、読んでいて、どんなに後ろ指さされ...
どんなに血塗れでも、人間でないような存在になってしまったとしても、誰にどんな目で見られようとも、ねえ、生きていこうね。 そう言われたような気がしました。 本書を読んでものすごく感動したか、とか、学びがあったか、とかは正直あまり感じなかったけれど、読んでいて、どんなに後ろ指さされるような人間でも「人間」なんだよ、生きてていいんだよ、と強く言われているような、励まされているような心地になった。 同時に人間扱いされないことの残酷さも突きつけられた心地。そうだよな。誰だって尊厳を持って生きていたい。私も。 自分の話を聞いてもらった人のことは忘れない、というセリフがなぜだか印象に残る。
Posted by
読む前は、想像を絶するような怖い話かと思ったけれど、全然怖くなかった。それもそうだ。化け物でなくて人間の話だもの。今でこそ、メンタルヘルスという呼び方に変わったが、その前はストレートな名称だった病院の話。 まさかと思うかもしれないけれど、自分で自分のことを虫けらだと思ってしまう...
読む前は、想像を絶するような怖い話かと思ったけれど、全然怖くなかった。それもそうだ。化け物でなくて人間の話だもの。今でこそ、メンタルヘルスという呼び方に変わったが、その前はストレートな名称だった病院の話。 まさかと思うかもしれないけれど、自分で自分のことを虫けらだと思ってしまうこともあるんですよ。私の場合は、高校中退後、人の目を気にしすぎて疑心暗鬼に陥り、何もやる気がおきないまま、家に長く居るようになったら、今度は下の階の騒音に悩まされて、大きな声を出したり暴力的になったりで。訴えても自分勝手な対応しかされないのもあって、恐怖症に近い感覚で体が覚えてしまい、それ以後、近くで大きな音がするだけで(悪気とか関係なく)、体がビクッとしたり、背筋が緊張するのは未だに治りません。その後の独り暮らしのアパートを転々としたときも治らず、今の戸建て賃貸になって、ようやく落ち着き始めた感じ。ちなみに騒音以外は、もう25年くらい前になるのですが、それでも完全に無くならずに、今の自分の人生に引きずっているのはなんとなく実感しています。良くも悪くも自分とはよく言ったもんだ。 でも、こういうことしても、自分は自分だって思えます? こういうことを踏まえて成長していくんだよって? 自分で自分のこと信用できないのは、自分のせい? 人の迷惑省みず、こんなに弱くて情けないのに? 昔、壁をおもいっきり殴ったりした時に、本当に屑だなと自分で思いながらも、どうしようもなかった。だって、そうしたいから。そうせずには、いられなかったから。人とすれ違って、自分の悪口を言われた時に叫んだこともよくあったけど、それと同じ感じ。おそらく私だって、一人の人間として存在しているんだと誰かに訴えたかったのだと思う。誰かを特定しているわけではないけれど。そして、当然ながら孤独だった。これがいちばん痛かったと、今になってはっきり分かる。自分のことを認めてくれる人の存在が必要なことに。人の力って、馬鹿にできないくらい途轍もない可能性を秘めていることは、よく分かる。私の場合、単純なのもあるだろうけど、何気ない一言をかけられただけで、気分がガラリと変わることもある。当時ならなおさらのこと。そんな事を、この作品を読んで、とりとめもなく思い起こしては、忘れたくなる。 暗い話ばかり長々と申し訳ありませんが、本編においても、主人公の人生に光を与えてくれるのは、他の人間です。人って、どんなに壮絶な体験や思いをしても、それでもその先に求めるのは、やはり人なんだ。心の病気とはいえ、主人公の場合は、同じ病棟にいた「安城さん(彼女は、主人公にとっては良きセラピストなのかもしれない)」が肉体的な病気に罹った時に、憤ることができたり、家族の事を思い出すことで、どうしようもない孤独を実感して、今の立場を見直したりと、すごく繊細な心を本当は抱えているのに、自分を責めていることに、何とも言えないやるせなさを感じてしまう。人にはこう思えるのだから、自分にもそう思える可能性はあったのかもしれない。それなのに、私は自分で自分を傷つけてきたんだな。 それから、私が言いたいのは、そうした心の病気を抱えた人たちへの偏見の目。その姿や行動が、どんなに醜態を晒しているように見えても、その人はその人なりに自分の存在を切実に訴えているだけだし、そうなった経緯を想像してみてほしい。できますか? 誰にだってそうなる可能性はあるはずなのに、その人自身の過ちであるような物言いをしたり、安易にかわいそうなんて言わないでほしい。同じ一人の人間として生きているだけなんだ。
Posted by
生きてて死んでる。 叫ぶような沈黙。 手を出しちゃダメなやつだった。 物語が核心に迫った時にそれは確信に変わった。 それでも出した手が、差し出された手を握りしめるように、本を閉じなかった。 私のボロボロの沈黙のミルフィーユが、何を守って何を壊してきたのかーー、 そんなことは知...
生きてて死んでる。 叫ぶような沈黙。 手を出しちゃダメなやつだった。 物語が核心に迫った時にそれは確信に変わった。 それでも出した手が、差し出された手を握りしめるように、本を閉じなかった。 私のボロボロの沈黙のミルフィーユが、何を守って何を壊してきたのかーー、 そんなことは知る由もないけど、たとえ精神に障っても、魂は撫でられているようだった。 最後には、光を感じられた。 読んで良かった、きっと読むべきだった。 そばにいてくれるぬくもりが今はあるから、目を閉じて祈ることができる。 こんなところでもサーミ族のヨイクがまたリンクして、魂を揺さぶる。
Posted by
『ジニのパズル』以来、4年ぶりの著書! 回想で、由香と共に糸電話を介して 他人の秘密に触れる場面が印象的だった。 1作目は“在日韓国人”、2作目である本作は“芥川賞に落選した作家”が主人公となっていることから、多少、ご自身の実体験も交えながら執筆されているのだろうか。 崔実...
『ジニのパズル』以来、4年ぶりの著書! 回想で、由香と共に糸電話を介して 他人の秘密に触れる場面が印象的だった。 1作目は“在日韓国人”、2作目である本作は“芥川賞に落選した作家”が主人公となっていることから、多少、ご自身の実体験も交えながら執筆されているのだろうか。 崔実さんの著作って、 物凄い衝撃を兼ね備えていて 唯一無二の世界観だな、と。
Posted by
とりあえず読み終えたが、自分の中で全然消化しきれていない。いろいろな意味で“痛い”話だった。精神病院に入院していた女性が、再会した患者仲間に請われるまま自分の隠してきた過去を赤裸々に語るのだが、これでもか! と言わんばかりの悲惨な内容ばかり。それまでずっと“沈黙”してきた彼女が、...
とりあえず読み終えたが、自分の中で全然消化しきれていない。いろいろな意味で“痛い”話だった。精神病院に入院していた女性が、再会した患者仲間に請われるまま自分の隠してきた過去を赤裸々に語るのだが、これでもか! と言わんばかりの悲惨な内容ばかり。それまでずっと“沈黙”してきた彼女が、誰かに打ち明けることで救いが訪れるのだろうか。いずれ再読したい。
Posted by
どんなあらすじかって上手く説明できない。 人間らしいとは何だろう。 一般的な人間は社会に取り込まれ、ネット上の見えないコミュニティにまで絡められている。しかし、精神病棟は違う。社会と切り離されて命だけで生きている。 この作品は、命だけで生きるということがテーマなんだと思う。命...
どんなあらすじかって上手く説明できない。 人間らしいとは何だろう。 一般的な人間は社会に取り込まれ、ネット上の見えないコミュニティにまで絡められている。しかし、精神病棟は違う。社会と切り離されて命だけで生きている。 この作品は、命だけで生きるということがテーマなんだと思う。命以外が溢れた社会で。身体を用いた表現が多いのもこのテーマに関連しているかもしれない。 「人が沈黙している時こそ、最も耳を傾けるべき瞬間なのかもしれないね」 人と人が繋がれるのは言葉を介してでなく、命を介してなのだと思う。 上手く説明できないのだけれど…
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
狂気と正気の境目がない世界。 自分の内側と外側が溶け合い輪郭があやふやな世界。 私とあなたの存在がかすかにズレながら重なる世界。 そして、生と死がほとんど同時に存在する世界。 想像できるか、その世界を、と小説が問うて来る。 精神病棟は世界の縮図であり、拡大図でもある。 圧倒的な色と音と声と像に押しつぶされそうになりながら走り抜ける、言葉の渦の中を。 この小説は頭で考えることを拒否する。そのまま受け取れ、そう聞こえる。
Posted by
- 1