1,800円以上の注文で送料無料

正義を振りかざす「極端な人」の正体 の商品レビュー

4.3

22件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    10

  3. 3つ

    2

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/11/05

「極端な人」がどのような属性で、彼らはどのような社会の中で生まれてしまったのかを、調査や科学的分析で読み解いていく書。これまで断片的に見聞きしたことのある話もあったが、改めて整理して冷静に読むことができた。(今こそ読みたいタイミングだった) 炎上や過度の誹謗中傷は特定のプラット...

「極端な人」がどのような属性で、彼らはどのような社会の中で生まれてしまったのかを、調査や科学的分析で読み解いていく書。これまで断片的に見聞きしたことのある話もあったが、改めて整理して冷静に読むことができた。(今こそ読みたいタイミングだった) 炎上や過度の誹謗中傷は特定のプラットフォームの問題ではない。ネットという社会は拡張する機能で、本質は、個々人の自尊心や、モノの見方、他人への姿勢の問題。 いままで「正義の反対は正義」という考えかたで見ていたが、もはやそこで思考停止してしまうことも、実は正義を言い訳に不満をぶつけたい人の行動を正当化してしまう可能性もありそうだ。とても難しい。 社会でどう対処するか?の章、"一歩間違えれば権力を持った人による言論統制となりかねない、バランスの難しさ"は、企業の外からはなかなか察することのできない課題だろう。 緩める、厳しくする、どちらか一端の取り組みだけを取り上げて企業側の取り組みを否定したくなる人も多いと思うので、企業側も、ほんとうに健全な言論空間を作りたいと思うならば、取り組みの開示、透明化を勧めていくのがよさそうだ。(ただし詳細に明かすとハックされるのでその開示・非開示も難しい) リテラシー教育は、生涯に渡ってうけられるといい気がするんだけど、そういう機会を提供しているところはなかなか無いし、凝り固まったプライドを持つ人は再教育の場に来ないだろうなと…。 自分自身が極端な人にならないことはできても、どうにか身近な人(親や友人)の「極端化」を防ぐ方法があったら知りたいところ…。

Posted byブクログ

2020/09/25

"炎上"や"クレーム"を起こす人々とそれを増幅させる社会的環境について、学問的考察を加え、その弊害(社会全体の萎縮効果)とそれに対する処方箋を示しているのが本書である。 前半はネット炎上における実相を解き明かす。なかのひと的には「そうなん...

"炎上"や"クレーム"を起こす人々とそれを増幅させる社会的環境について、学問的考察を加え、その弊害(社会全体の萎縮効果)とそれに対する処方箋を示しているのが本書である。 前半はネット炎上における実相を解き明かす。なかのひと的には「そうなんですよ、実は」という話が多かったが、それを多数の学者がきちんと定量的に分析していて、そのファクトをここで俯瞰で見れるのはとてもよい。 つまりは炎上に参加する人たちはごく少数であり、そのごく少数がとんでもない量の情報を創り出しており、ネットの可視化効果(逆に言うとサイレントマジョリティが可視化されない効果)によってさもそれが世論であるかのような幻想を創り出しているメカニズムを解き明かされている。 中盤は、その炎上がネットや匿名性だけによって作り出されているかというとそうでもない事実を解説している。特にテレビを中心とした"マスメディアとネットの共振関係"については、これもまたなかのひとの感覚からして的を得た指摘である。匿名性については、韓国が実際に行った"ネット掲示板顕名化法律"という壮大な社会実験によって実はその効果が極めて限定的であり、むしろ普通のあるいは良い意見等も委縮させてしまうという言論の自由の構造についての深い洞察がなされている。(ちなみにその法律は違憲判断がでて廃止) 最後は炎上に加担したりクレーマーとなる人の心理構造(ある種の病理?)に迫り、そうならない為の処方箋を解く。つまりは炎上に加担する人たちはそれが自分なりの確固たる正義感に基づいたものであり、が故に匿名だろうが顕名だろうが正義の行使は行われ、その正義の感覚は実は個人的な別の理由(社会的不遇感とか私生活が上手く行っていないとか)に起因する事が多いとのことである(この"別の個人的理由起因説"だけ定量的なデータが示されていないのはちと残念だが) そしてそうならない為の処方箋として「情報の隔たりを知る」、「自分の『正義感』に敏感になる」、「自分を客観的に見る」等の"5箇条"を提示する。 この五箇条は総じていえば""メディアリテラシーの涵養"ということだと思うし、自分なりのこの問題に対する対処策と合致していたのは自信を得たような気がする。無論、この本でも提案されているような国家ないし事業者による対策は不断の努力がなされるべきだと思う(特に全体の閲覧母数に対する極端意見の割合の可視化とかはやるべきだなと本書をみて思った)が、根本的な対処は人々がこういう極端な意見の人の発生のメカニズムをリテラシー教育を通じてよく理解して、気にしないとなることだし、それを起こしてしまう人もまた自己の心理的構造を客観的に理解して上記の五箇条などが心の中のビルドインされて起こさなくなることが、「いつの間にか炎上ってなくなっていたねー」という未来に繋がっていくように思う。 いずれにしても高度情報化社会はまた緒についたばかりであり、サイバーセキュリティと並び最初に訪れたこの社会萎縮の増幅という試練を乗り越えてこそ、より有益なネット社会は訪れるであろうし、乗り越えるためにこのような本質的理解の一助となる読みやすい良書が出回ることは重要であるように思いました。 追伸:本書において画竜点睛を欠いているのは、正義感を振りかざす個人の他に、炎上をビジネスにしてしまっている事業者とその手法の存在とがある点の言及なり考察なりだと思います(若干フェイクニュースの項で触れられてはいるが)。この弊害もかなりあると思うので、ぜひ重版の際には追加の考察をお願いします。

Posted byブクログ