推し、燃ゆ の商品レビュー
〈病めるときも健やかなるときも推しを推す〉 ある日、推しが炎上…同時に主人公あかりの人生も加速をつけて崩壊する 「推しのいない人生は余生だった」 推しに人生を捧げる喜びと哀しみ 推しという幻想が永遠に続くことはないのかな?
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ある女の子の人生、周りに理解されない苦しみを背負いながら生きている様。この世には生きづらい人もいてるってこと。推し(アイドル)だけが唯一の望み。その望みが消えてしまうと生きる価値さえ分からなくなるという何とも言えない切なさ。 文面はすごく読みやすい。
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少し前までは、とても手の届かないのがスターだった。アイドルでさえ。でも今はSNSで私生活をさらけ出し積極的にファンとコミュニケーションをとる、すっかり身近にいるような錯覚を起こさせるアイドルたち。おそらくは精神的なハンデを抱えて生きる主人公。本来なら繭にくるまれたように引きこもっ...
少し前までは、とても手の届かないのがスターだった。アイドルでさえ。でも今はSNSで私生活をさらけ出し積極的にファンとコミュニケーションをとる、すっかり身近にいるような錯覚を起こさせるアイドルたち。おそらくは精神的なハンデを抱えて生きる主人公。本来なら繭にくるまれたように引きこもって生きたいはずだろうに、彼女は必死に学校に通い、アルバイトをする。全ては自分の愛する彼のため。彼のために生き、彼のお陰で生かされている。オタクというには、あまりに健気で、痛々しい。しかし、ある事件をきっかけに、気づくのだ。彼もまた生身のただの人であることに。 さあ、全存在をかけて支え支えられてきたという空想が砕けちり、裸の世界にたった1人放り出された彼女は、これからどうやって生きていくのか? しかし、視点がかわる。 見上げる彼方から、その足元へ。 そこにはなにもなく、あるのはただ空っぽの自分だけ。そして。這いつくばる。ゼロから。 でも。なぜか諦めないと思わせる。 行け。這いつくばったその先へ。一歩づつ。 そう、あなたの「推し」も生き続けるのだから。 諦めず、その先へ。 痛々しいほどに愚かだけれど、とても愛しい真面目な生との葛藤の物語。
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推しのアイドルにハマった女子高生、あかり。 彼女の言動には主体性がなく 救いようのない自堕落な生活を続ける。 “推し”の引退により自分の生き場所すら 見失ってしまう、読後感の悪いお話。 芥川賞狙いな作風。 1日で書き上げたような薄っぺらい内容。
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ひりひりする。この子を知っている気がする。ライブに来ていたあの子かもしれない。Twitterで見かけるあの子かもしれない。生きづらさを抱える生活の中で、ただただ推しの存在を感じ続けることだけを求めている彼女。 推しが推しではなく人になってしまったことに気づ...
ひりひりする。この子を知っている気がする。ライブに来ていたあの子かもしれない。Twitterで見かけるあの子かもしれない。生きづらさを抱える生活の中で、ただただ推しの存在を感じ続けることだけを求めている彼女。 推しが推しではなく人になってしまったことに気づき、自分を振り返った時の彼女の虚無が、昏さすらない虚無で、茫然としてしまった。 身の詰まった噛み応えのある表現力、また味わいたい。
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熱量がすごい。 終盤の一気に破滅に向かってく感じが痛かった。 救いのないエンディングはつらいなー、と思ったけど、よく考えたらほんのり救いあったのかなとも思ったり。 リアルすぎるフィクションは、そのあとリアルを侵食するので要注意。
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一介のオタクとして身につまされる心地がした。 わたしは二次元が推しなので推しと一体化することも、推しが不祥事を起こして炎上することもないにしても、推しに対する感情、童謡七つの子の歌のような切ないと思えるかわいさを感じるのはわかる気がする。 人口の半分はなんらかのオタクになりつつあるというのを最近どこかで見た。オタクと名乗ることがライトでフラットになったのもここ最近。 誰かしらがなんらかに縋りたい現代の厳しさみたいなものが見える気がする。 健全だとされる相互的な人間関係が薄れていってる中、多分社会にうまくリンクできない人間の方がこういうオタクコンテンツにハマりやすい。 家族や友達や恋人と同じ気持ちを共有したりわかってもらうより、コンテンツを介して気持ちをわかってくれる人がいるSNSやネット上は居心地の良い。 社会に必要とされなくてどんなに自分がダメでも、それでも日々は続くし、好きなものや人は自分を裏切る日が来る。それでも好きなものを好きでいることは絶望した社会でなんとか息をする私たちの最低限で精一杯の生き方である。 主人公あかりは死なないだけで死んでるように生きていくのだろうなと暗い未来が過った。 作者の前作かかでも母という信仰対象が終わったラストが印象的だったけど、この話ではまた違った信仰の終わりが書かれている。バッドエンドでもハッピーエンドでもなく一般的に考えると主人公たちはずっとバッドな状態を生きているんだろうな。 でもこれはよくある現実で、作者と同世代の私は、私たちの生きる時代のディストピアは加速しているという実感を伴って日々暮らしている。
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推しを推し続けるばっかりに高校も中退してしまったあかりちゃん。でもその推し、アイドルグループ「まざま座」の上野真幸くんは女性を殴って炎上して、やがてはグループの解散をもって表舞台から姿を消してしまう。 私には特に推しているようなアイドルや人間はいないけれど、推しがいる人にとっての...
推しを推し続けるばっかりに高校も中退してしまったあかりちゃん。でもその推し、アイドルグループ「まざま座」の上野真幸くんは女性を殴って炎上して、やがてはグループの解散をもって表舞台から姿を消してしまう。 私には特に推しているようなアイドルや人間はいないけれど、推しがいる人にとっての"推し"がどれほどかけがけえのない尊い存在なのかびんびんに理解できた。推しを解釈し尽くして、推しのみる世界をみたいという祈りにも似た純度の高い欲求。 「一定のへだたりのある場所で誰かの存在を感じ続けられることが、安らぎを与えてくれるということがあるように思う。何より、推しを推すとき、あたしというすべてを懸けてのめり込むとき、一方的ではあるけれどあたしはいつになく満ち足りている。」 腐女子のつづ井さんを読んでも思ったことだけど、私は推しがいる人が好きだ。誰かに夢中になってその人だけが世界の全てになって、一途に追いかけ続ける姿は美しいと思う。好きだ、という気持ちは常に原動力で、そういう自分にとっての精神的支柱のようなものがある人間は強いと思う。いや、推しがいなくなったら支えを失って倒れてしまうこともあるかもしれないが、でもきっとまた新たな誰かをみつけられるんだと思う。そうやってしぶとく生きていける。だからラストは希望だと思いたい。 私にはそういうのあるかな。盲目になれる誰か、なにか。 ガチャ課金やランダムグッズでどれだけお金を注ぎ込もうと、推しがでた瞬間実質タダになるって言ってたのは誰だったか。 私はそんなふうに考えられないから。そんなふうに思える対象がいないから。純粋にすごいと思うし羨ましい。 宇佐見りんさんの文体は純文学でありながらほどよく若者調で、その絶妙な塩梅がすごく心地よい。これが令和か。
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本作をある種の「天皇小説」と評価する意見に同意したい。推しの誕生日、あるメンバーの名前、そして推しが「人」になる瞬間…。推しを通じて人間と繋がり、推しと一体化して全能感を得る主人公の在り方は、大江健三郎『セヴンティーン』で描かれる少年の姿と多分に重なって見える。 宇佐見りんが「推し」と「天皇」の関係をどの程度意図して本作を描いたのかはわからない。しかし、この作品を解釈したいと思った時点で、彼女は私の「推し」になったのだと思う。
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若い子が書く文章だな。というのが第一印象。 読んでいて、苦しくなる本。何やっても、うまくいかない現実と、推しのためにいる、SNSのなかの世界。 推しにたいして注がれるエネルギーが想像を超えていた。 肉体が重いという言葉が印象的だった。
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