ワイズカンパニー の商品レビュー
暗黙知が共有され、形式知になり、実践を経てまた暗黙知となる、その繰返しによって組織及び個人が成長していく、SECIスパイラルモデルの実例が豊富で現場の様子がありありと浮かんでくるようだった。また、組織の話が中心かと思いきや、リーダーシップの本だった。ワイズカンパニーを作るのはリー...
暗黙知が共有され、形式知になり、実践を経てまた暗黙知となる、その繰返しによって組織及び個人が成長していく、SECIスパイラルモデルの実例が豊富で現場の様子がありありと浮かんでくるようだった。また、組織の話が中心かと思いきや、リーダーシップの本だった。ワイズカンパニーを作るのはリーダーであり、そのリーダーのあるべき姿についてかなりのページ数が割かれている。政治力を行使する、の話あたりがすごく面白い。ただただ綺麗事を並べているわけではなく、矛盾に満ちたリアルな現場をどう打開していくか、そこに企業の未来はかかっているのだと思う。
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最新の事例を用いながら、SECIモデルをスパイラルさせて知識実践していくには?を論じた本。 JAL、シマノ、エーザイ、ファーストリテイリング、ホンダ、トヨタなど、ドキドキする話が多くて惹き込まれた。
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原点となる知識創造企業は1996年出版。時代に応じて書き加えられた要素と本質的な完成度。野中先生にとって晩年の最新刊という点も特に感慨深い。
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われわれの研究では、形式知と暗黙知を用いるだけでは不十分であることが示されている。リーダーはもう一つ別の知識も使わなくてはいけない。それはしばしば忘れられがちな実践知である。実践知とは、経験によって培われる暗黙知であり、賢明な判断を下すことや、価値観とモラルに従って、実情に即した...
われわれの研究では、形式知と暗黙知を用いるだけでは不十分であることが示されている。リーダーはもう一つ別の知識も使わなくてはいけない。それはしばしば忘れられがちな実践知である。実践知とは、経験によって培われる暗黙知であり、賢明な判断を下すことや、価値観とモラルに従って、実情に即した行動を取ることを可能にする知識である。 (引用)ワイズカンパニー 知識創造から知識実践への新しいモデル、著者:野中郁次郎、竹内弘高、訳者:黒輪篤嗣、発行者:駒橋憲一、発行所:東洋経済新報社、2020年、39 野中氏によって著された「知識創造企業」からおよそ四半世紀、ついに待望の「ワイズカンパニー(東洋経済新報社、2020年)が刊行された。サブタイトルは、「知識創造から知識実践への新しいモデル」とある。本書では、知識創造の世界から実践を繰り返し、知恵にまで高めることの重要性を示している。 野中氏が提唱し、もはや知識創造・実践モデルとして世界でも受け入れられている「SECI(セキ)モデル」。本書では、新しいSECIモデルが示されている。そこには、個人から始まり、チーム、組織、そして環境という要素を加え、存在論的な次元で生じる相互作用を加えた。そして、いまや伝説となっている京セラの創業者である稲盛和夫氏によるJALの再建を事例として、本書ではSECIモデルをやさしく説明してくれる。当時、私は、稲盛氏が難なくJALを経営再建していく姿を目の当たりにし、まさに、稲盛氏の「実践知」の凄さに感銘を受けた。と同時に、本書を読み、稲盛氏によって、JALの再建がSECIモデルに沿って実行されたこと、またSECIモデルの有効性が実証されたのだと感じた。 SECIモデルでは、共同化、表出化、連結化そして内面化のスパイラルを発生させることにより、拡大していく。最近、私は、シティプロモーション関連の本を読んだが、そこにもSECIモデルが紹介されていた。なにもSECIモデルは、企業だけのものではない。私は、まちづくりやNPO、行政など、様々な組織で活用ができると感じた。 本書の前半で「知識実践の起源」が紹介されていることも興味深い。時代は、アリストテレスの時代まで遡る。そのアリストテレスが唱えた「フロネシス(実践的な知恵(実践知)(本書、59)」は、2400年の時を経ても色褪せることがない。普段、私も仕事をしていて感じることは、「何事も実践してみること」だと思う。ときには、失敗を繰り返すこともある。しかし、実践を繰り返さなければ、「実践知」を得ることはできない。本書には、YKKの創業者、吉田忠雄氏の語録も紹介されている。 「何しろ、私は理屈抜きにして働かない人を好きじゃないですね。どれだけ頭がよくてもね(本書、172)」 この言葉に、私は強く共感する。いま、私が自分の仕事を通じて感じることは、「働きたくても働けない人」がいるということだ。それは、吉田氏が言われる「頭のよさ」に関係しない。私が言う「働けない人」というのは、今までの自身の仕事で、実践を繰り返さず、実践知が足りないということだ。ときには、「綱渡り的な仕事」も存在する。この仕事が失敗すれば、自分の地位を失うと感じ、チャレンジを諦める人たちがいる。私から言わせれば、「もったいない」の一言だ。新型コロナウイルス感染拡大時において、北海道や大阪府の知事が脚光を浴びた。これは、その危機から逃げず、前面に立ち、道民や府民を守るというリーダーの姿を見せたからであろう。私は、「ピンチはチャンス」だと思う。その危機的な状況においては、さらに貴重な「実践知」が得られると私は思う。そして、リーダーとしての自信にもつながるのではないかと思う。 少し脱線したが、本書では、私の敬愛するピーター・F・ドラッカー氏や稲盛和夫氏をはじめ、ホンダの創業者の本田宗一郎氏、ユニクロの柳井正氏、トヨタの豊田章男氏などが登場する。本書を読み進めると、「どこかで聞いたエピソードだな」と思うところが随所に出てくる。そのため、この1冊で、ビジネススキルの要点が網羅されているような感じも受けた。それらのエピソードは、ワイズ(Wise)リーダーになるための心得にもつながる。 今後、SECIモデルを用いて自身の事業や公共的な施策などを拡大していきたいかた、また一流のリーダーシップを学ばれたいかたに、本書をオススメしたい。
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感想 新しいSECIモデルは、コトだけでなく、人間という不確定変数の多い部分のプロセスを示すことで、現場で使えるものに解釈されている(実践から生まれたものをまさに形式知にしたようなイメージ) 評価 内容 知識創造理論を現在目線で捉えなおすこと 【今までの知識創造との変化】 存...
感想 新しいSECIモデルは、コトだけでなく、人間という不確定変数の多い部分のプロセスを示すことで、現場で使えるものに解釈されている(実践から生まれたものをまさに形式知にしたようなイメージ) 評価 内容 知識創造理論を現在目線で捉えなおすこと 【今までの知識創造との変化】 存在範囲の概念が加わった(個人なのかチームなのか) ←知識理論を実体化することには、人と人との相互作用が非常に重要な観点である ①共同化 個人同士が暗黙知を共通する(考えを話し合う) 組織内の各メンバーが暗黙知を獲得 ※身体的・感情でも理解が進む→相互信頼 ②表出化 個人がチームレベルで、共同化された暗黙知を統合(共通言語や事象とする) 暗黙知のエッセンスが言葉やイメージ、モデルになる ③連結化 形式知が組織内外から集められる(集合知マニュアル) 組み合わせや整理、慧さんを通した複合的で体系的な知識になる ④内面化 連結化によって増幅した形式知が実行に移される 個人がそれぞれのチームの中で行動を起こす →個人の血肉となるとともに、組織の業績が上がる 【JALの再生】 稲盛さんが考えていたことは、 ・個人が能力を引き出せて、生きがいをもって働けるようにするにはどうしたらいいか。 ➡創業時に戻ること(全員経営と業績連動の高速化) ・好業績の処遇はステップがある。まずは自分の満足・周囲からの感謝や称賛。そして、処遇。まずは人間として感情で得られる最高の報酬を味わう。 ★従業員の信頼関係と考えの共有と能力の集結が実現する ①共同化 稲盛さんとの2way、幹部会議、幹部のコンパを通して破綻の原因、再生への想いなどの表出が行われ理解が一人一人JALのメンバーとしての進んだ ②表出化 その結果、JALフィロソフィのガイドをリーダーシップを持ってまとめるに至り、全社員チームの言葉に変換された。チーム制をとることで、それぞれの利益がどれだけかを正確に把握できることとなった ③連結化 表出した知識とチームの相互関係によって初年度のコストダウンは数百億円となったほか、新たな形式知となったフィロソフィは続々と自主的な勉強会に発展 ④内面化 これらの活動を通して、個人の具体的な行動に移されることとなった。手袋を捨てない・上司に意見を言う、フライトが満席であることが笑顔につながる(今までは仕事増で不満) など、多くの行動が変化した。 重要なのは、従業員の心に触れること(プロセスに踏み込む)。そうしないと個人の行動は変わらない。 【そもそも知識創造理論】 新しい知識はある知識を別のものに変換すること。 知識とは、二つの相互作用プロセスを踏むことで創造される。 一つは、知識の種類として ①暗黙知②形式知 の間で生じる認識の壁を越えていくこと もう一つは、人と他人の存在の中で生じるプロセス。ただし、これは多くを語られていなかった 【第7章】 ワイズリーダーは、あらゆる隠喩、比喩、物語を駆使して、 効果的に意思疎通を図る。 カギとなるのはレトリック。 相手のこと、受け止めを理解した上でレトリックを うまく扱うこと。 その前提には、共感できる力と、本質を見抜くこと。 ・共感、見抜く ・表現 ・意思疏通する 本田宗一郎のマン島TTレースの文面のように、 【誰にでも分かる言葉で、ここの状況の本質を捉え抜いて表現】すること。 【第8章】 人を動かすには政治力 政治力は、機転が効き、狡猾であること チームを動かすのはスクラム 組織のメンバーに権限を与えて、 分散的に進めつつもある一点で集まり、 チームでプロセスを完了させること
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留学先で唯一聞いた日本人学者の名前が「イクジロウノナカ」だった。矛盾を解決すればそこにチャンスが。空白の市場は挑戦者がないか挑戦者がいても諦めて撤退している。 物語。
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「知識創造企業」の25年ぶりの続編という位置付けで、おそらくは野中さんの最後(?)の主著、集大成という感じかな? 「知識創造企業」(1996年)以降の研究をまとめたということだけど、もともと英語ででたものを日本語に翻訳したというものなので、この25年の間の野中さんの本をある程度...
「知識創造企業」の25年ぶりの続編という位置付けで、おそらくは野中さんの最後(?)の主著、集大成という感じかな? 「知識創造企業」(1996年)以降の研究をまとめたということだけど、もともと英語ででたものを日本語に翻訳したというものなので、この25年の間の野中さんの本をある程度読んできた日本人にはデジャブ感のある話が多いかな? 集大成的な本としては、「知識創造企業」(1996年)とこの「ワイズカンパニー」(2020年)のあいだには、「流れを経営する」(2010年)という本がある。この「流れを経営する」からの理論的な進化という意味ではそこまで明確ではないかな? また、「流れを経営する」で、取り扱われた事例とのダブりもある気がする。「流れを経営する」をみると、英語版をベースにしたけど、いろいろ事例の入れ替えなどもしたとあるので、もしかすると英語圏の読者にとっては新しい事例を多く含む内容なのかもしれない。 いずれにせよ、日本の読者には、知っている話しが多いと思うけど、現時点での野中さんの考えの全体が1冊でわかるのはいいな〜。 とくに、知識・知恵の実践にフォーカスがあるためか、リーダーのあり方というところの説明が充実している。これもまた、「流れを経営する」と重複した内容が多いが、野中さんの言いたいことがより明確になった印象。 個人的には、10年くらい前に野中さんからきいてよくわからなかった「リーダーはマキャベリズムも必要」という言葉の意味もようやくわかったかな? ここで言われているのは、時と場所、コンテキストによっては平時のルールも乗り越えて、柔軟に変化していくことみたいな話し。 わかってみると、それって本当にマキャベリズムなの?という疑問が湧いてくるのだが、野中さんによると「目的は手段を正当化する」というのは俗流の理解とのこと。 もうちょっと違う言葉のほうがいいと思うが、とりあえずはキャッチーということでいいのかな?
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