雨の中の涙のように の商品レビュー
人々を魅了するオーラを放つ大スター堀尾葉介とどこかで接点のあった人々の人生が描かれた短編連作。 後悔と哀しみを抱え、過去に縛られて佇んでしまった人々が、一歩前に踏み出す8つの物語は心に染みる。 読み進めるうちに堀尾葉介の実像が浮かび上がり、背負ってきたものの重さに愕然とする。救い...
人々を魅了するオーラを放つ大スター堀尾葉介とどこかで接点のあった人々の人生が描かれた短編連作。 後悔と哀しみを抱え、過去に縛られて佇んでしまった人々が、一歩前に踏み出す8つの物語は心に染みる。 読み進めるうちに堀尾葉介の実像が浮かび上がり、背負ってきたものの重さに愕然とする。救いを得るために払った犠牲は決して小さくないが最後、葉介自身は悟ったように明るい。人はつらい想いをした分、優しくなれるのか?人々を魅了する葉介のオーラは、彼の心の有り様が滲み出ているからなのか。 雨の日の切ないシーンが多い。 雨の日の思い出は、雨が降ると思い出すとある。最後の章、雨の日に過去とシンクロするような出来事が葉介に起こる。 「想い出も時と共に消える。雨の中の涙のように」タイトルになった映画の台詞。 雨の中で流される涙は誰にも気づかれない。もしかしたら自分自身もどれだけたくさんの涙を流したか気づいていない時もあるかもしれない。 雨が重要なモチーフとなり、閉塞感や肌寒さ、切なさが雨のように心に降り注ぐ物語だが、つらい想い出はいつか消えていくのだと、読後感の雨のイメージは包み込むように優しかった。
Posted by
ぼくが読んだ遠田さんの中で初の短編集。まあ広い意味での連作ではあるのだが、それぞれの短編につながりはなく、1人のキーパーソンを除いて登場人物も異なる。短編ゆえに描写は控えめで読みやすく、それでいてしっかりと余韻が残る。1編ずつを味わいながら読んでいくと最後にすべてのピースがはまり...
ぼくが読んだ遠田さんの中で初の短編集。まあ広い意味での連作ではあるのだが、それぞれの短編につながりはなく、1人のキーパーソンを除いて登場人物も異なる。短編ゆえに描写は控えめで読みやすく、それでいてしっかりと余韻が残る。1編ずつを味わいながら読んでいくと最後にすべてのピースがはまり、1枚の絵が浮かび上がる。そんな感じの作品だった。おすすめの1冊。
Posted by
あまりに身勝手、短絡的な男の思い込み、行動にイラつく。もう少し普通の人たちで良かったのに。「ペットはある意味、究極の人間関係。妻であり子であり家族」「動物は自分を必要としている人間がわかる」「思い出も時と共に消える。雨の中の涙のように」
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「上手いんだけど、あまり印象に残らないな」と読んでいてずっと思っていたが、最終章でやられた。全ての章に、堀尾葉介という有名俳優が関わってくる連作短編。どの章もなかなか読み応えがあるし、しっとりした雰囲気や情感の機微が良い。でもなんかインパクトがないんだよな~..と思っていたが最終章、堀尾葉介が主人公の回でガツンときた。これまでの章との落差で結構ショッキングだったけど、俳優という職業の彼が本当の自分を取り戻せたのかな?と思えるようなラストが光っていた。堀尾葉介は本当にいい人だ。雨の日に読めてよかった。
Posted by
堀尾葉介という俳優と関わりのある人を巡る連作短篇集。ネタバレになるので詳しいことは語りたくない。騙されたと思って「小説好き」なら是非読んで欲しい。 と言ってもまだ欲しがる人には少し説明。 大部屋役者が堀尾の努力に感心、嫉妬する。堀尾がテレビ番組で美味しいと言った卵焼き屋さんの...
堀尾葉介という俳優と関わりのある人を巡る連作短篇集。ネタバレになるので詳しいことは語りたくない。騙されたと思って「小説好き」なら是非読んで欲しい。 と言ってもまだ欲しがる人には少し説明。 大部屋役者が堀尾の努力に感心、嫉妬する。堀尾がテレビ番組で美味しいと言った卵焼き屋さんの悲喜こもごも。幼い時の堀尾。などなど、深い人間ドラマが繰り広げられる。 最終章は、何だよこういう終わらせかたかよとがっかりしていたら、どんでん返しがあり、やっぱり遠田潤子はええなと呟いてしまった。
Posted by
俳優である堀尾葉介を中心にオムニバス形式で物語が展開される。 オブリヴィオンの時も感じたけれど、遠田さんの描く作品は圧倒的な絶望の中に必ず救いの手を差し伸べてくれる温かさがある。 表紙の装丁も読んでいた時の気候とマッチしてとても心地良かった。
Posted by
しっとりと静かな夜に読みたい本。 短編集かと思いきや、巡り巡って繋がっている。 特に最終章は今この時期に読むといろいろ考えるところがあった。 遠田潤子さんのファンになった。 他の作品も読みたい。
Posted by
アイドルグループ出身の人気俳優の堀尾葉介を巡る8作の連作短編集で、全体でもひとつの話を織りなしています。 主人公の葉介は芸能人ですが、浮ついた芸能界の話ではありません。 最近、作者の遠田潤子さんのお話を何作か続けて拝読したのですが、遠田さんの作品はイメージとして「寒風吹き荒れる...
アイドルグループ出身の人気俳優の堀尾葉介を巡る8作の連作短編集で、全体でもひとつの話を織りなしています。 主人公の葉介は芸能人ですが、浮ついた芸能界の話ではありません。 最近、作者の遠田潤子さんのお話を何作か続けて拝読したのですが、遠田さんの作品はイメージとして「寒風吹き荒れる日本海の海」のようなお話が多かったように思いますが、この連作短編集は短編として読むと、葉介と市井の人たちとの交流を描いた「明るいぽかぽかとした春の日差し」みたいなお話もありました。 でも、全体のストーリーとしては音楽で言えば「短調」だと思いました。 最新作なので、何の前知識もなく読みましたが、今までの作品より現代的で映画に関連した話も多くお洒落なかんじがしました。 葉介は子供の頃は、女の子のような顔をした、いじめられっ子でしたがデビュー後は、最後まで明るい好青年で、どのストーリーも引き立てていたように思います。 葉介の父と母も主要な登場人物ですが、二人共存在感があり、特に母親のはかなげな姿が印象的でした。 映画のタイトルを意識された各章のタイトルが素敵なので載せておきます。 第一章 垣見五郎兵衛の握手会 第二章 だし巻きとマックィーンのアランセーター 第三章 ひょうたん池のレッド・オクトーバー 第四章 レプリカントとよもぎのお守り 第五章 真空管と女王陛下のカーボーイ 第六章 炭焼き男とシャワーカーテンリング 第七章 ジャック ダニエルと春の船 最終章 美しい人生
Posted by
今回は短編なのかぁ、と読み始めて少しガッカリ。 が、やはり面白い。 連作短編だと分かり読むペースが上がる。 堀尾葉介という元アイドルの俳優と何かしら関わりのあった人たちの話。 葉介はスパイス的な要素のみでの登場かと思いきや、 最後にガツンとやられる。 油断しまくっていた分、衝...
今回は短編なのかぁ、と読み始めて少しガッカリ。 が、やはり面白い。 連作短編だと分かり読むペースが上がる。 堀尾葉介という元アイドルの俳優と何かしら関わりのあった人たちの話。 葉介はスパイス的な要素のみでの登場かと思いきや、 最後にガツンとやられる。 油断しまくっていた分、衝撃が大きかった。 いくら輝いて見える有名人でも、心の中までは分からないな。当たり前の事だが。 本書を読みながら、ここ最近の著名人が亡くなられたニュースを思う。 かの人達の心の雨は止まなかったのだろうか。
Posted by
堀尾葉介というスターの人生を、彼と関わった人々の人生を交錯させながら、7編の短編で綴る。 彼と関わった人は、過去に向き合い前へと進もうとするが、葉介自身はどうなのだろう?彼の中に一環とした「孤独」が感じられる。堀尾葉介が「堀尾葉介」を演じているようにも感じた。 「僕は君を必要とし...
堀尾葉介というスターの人生を、彼と関わった人々の人生を交錯させながら、7編の短編で綴る。 彼と関わった人は、過去に向き合い前へと進もうとするが、葉介自身はどうなのだろう?彼の中に一環とした「孤独」が感じられる。堀尾葉介が「堀尾葉介」を演じているようにも感じた。 「僕は君を必要としている。そして君に必要とされたい」(p154)とあります。一方通行ではなく、相互に混じり合い、補い合いながら、人は生きていくのかもしれない。 葉介にもそのような存在が現れるのか・・・?
Posted by