雨の中の涙のように の商品レビュー
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初めて読む遠田潤子さんの本。面白かった。 俳優の堀尾葉介に関わりのあった人たちの、それぞれの物語。切ない展開もあったが、最後には皆が一歩前進してるように思えた。 第七章が中でも良かった!転校生の葉介がいじめられてるのをかばえなかった順ニが、稽古に付き合ってくれないかと頼んで、謝るシーンがジーンときた。こういう再会もあるのだなぁと感動した。 葉介自身の話で最後がしめられる。ずっと「堀尾は介」を演じていた葉介。事故で足は不自由になったが、一皮むけて生きるのに希望持った最後で良かった!
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人気俳優、堀尾葉介に絡む人々の悲喜を描いた連作短編集。この形式の遠田潤子作品は初めて読んだ。 形式だけじゃなく、いつもの遠田潤子小説のようなゴツゴツの悲劇的状況描写は薄まり、どの作品もラストはほんわか幸せに終わって、短編ごとの読後感が良いのだ。 へぇ、こんな小説も描けるんや。と感心しながら読んでいると、最後に直球が胸元にズドン! ここまで関わる人を救ってきたキーマン堀尾葉介の心の内を吐露した最終話の展開。 いやー参りました。改めてすごいわ遠田潤子。 ここんとこ新作に悲劇インフレが見受けられて、過剰が過ぎると醒めるかもなぁ…と思ってたところだったんで、余計にこのエエ意味での薄め感が効いた。 全ての短編に映画が関わり、タイトルもブレードランナーリスペクト。ブレードランナーなんですべての作品に雨のシーンがあって、それら共通の演出に無理がない。 ワンパターンは嫌いじゃないが、緩急をうまくつけて来られたら、バカ読者の俺はキリキリマイで大喜びです!
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ここのところ続けざまに本を読んでる。 仕事と用事が終わるや、合間に、本を手に取る。 ひとつの物語の海を渡り切り、 またすぐに次の物語に乗り出す。 心地良い波、激しい波、静かな波に身を任せる。 椅子の職人を目指す若者はどうしてるだろう。 ラーメン屋・マンプク食堂・キッチンカーは、...
ここのところ続けざまに本を読んでる。 仕事と用事が終わるや、合間に、本を手に取る。 ひとつの物語の海を渡り切り、 またすぐに次の物語に乗り出す。 心地良い波、激しい波、静かな波に身を任せる。 椅子の職人を目指す若者はどうしてるだろう。 ラーメン屋・マンプク食堂・キッチンカーは、 元気に営業してるだろうか。 読みながら気になる。 その度、ああそれはこの物語じゃないと思い直す。 最近読んだ物語が全部つながってしまってる。 この物語の構造が影響しているのかもしれない。 堀尾葉介をめぐる物語だ。 でも彼は主役でない。 七つの物語のそれぞれの主人公は、 何らかの形で彼と関わる。 彼を遠景とし、それぞれの人生が語られる。 そして、ふと堀尾葉介のことを思い出す。 彼は今どうしてるんだろう。元気なのかな。 そうしたストーリが、 心の柔らかい部分をを刺激するのだろう。 劇中劇のように各章で名作映画が登場する。 そのことも影響しているのかもしれない。 主人公の物語、堀尾葉介の物語、映画の物語。 そして僕の心のある物語。 ケーキではミルクレープが一番好きだ。
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* 遠田潤子さんの小説を初めて読みました。 かつてのアイドル、かつ演技派の俳優であり、 役者の堀田葉介の幼少期に関わった人たち それぞれの物語。 どの話でも、それぞれの人に表と裏があり、 どう生きるのか向き合っている人生が ありました。 誰もが主人公なんだと思えた一話一話で...
* 遠田潤子さんの小説を初めて読みました。 かつてのアイドル、かつ演技派の俳優であり、 役者の堀田葉介の幼少期に関わった人たち それぞれの物語。 どの話でも、それぞれの人に表と裏があり、 どう生きるのか向き合っている人生が ありました。 誰もが主人公なんだと思えた一話一話です。
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遠田潤子さんを読んで、初めて心から良かった!と思えた作品。 『冬の鉄樹』をはじめ、絶望の先に見えるものを深く掘り下げ、探りだすように、厳しい視点と筆致で描く作品は、熱量も完成度も高く、読み応えがあるのだが、同時に「どん底」と言えるほど暗く、気力・体力を削られる。 何度も書くが、ロ...
遠田潤子さんを読んで、初めて心から良かった!と思えた作品。 『冬の鉄樹』をはじめ、絶望の先に見えるものを深く掘り下げ、探りだすように、厳しい視点と筆致で描く作品は、熱量も完成度も高く、読み応えがあるのだが、同時に「どん底」と言えるほど暗く、気力・体力を削られる。 何度も書くが、ロシア文学のような暗みと救いのなさが持ち味なのだと思っていた。 ところが、今作は短編連作というかたちで、実に多彩な設定、人物が描かれ、哀しくも温かな作品が連なり、最終章のタイトルそのままのように幕が下りる。その余韻の優しさにずっと浸っていたくなるような、素晴らしい物語だ。 短編が巧い、というのは、作家として優れている証左でもある。 遠田さんの実力はよくよくわかっていたつもりだが、この物語を通して、やはり凄い作家さんだと思ったし、何より、遠田作品に欠かせない美しい描写が、短編だけにより際立って活きたように思う。 こんな時代だからこそ、再び温かな作品で、そっと読者の心を優しく灯してくれることを、切に願います。
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きっと誰もが持っているこころの中の闇。あるひとりのスターに出会うことでその闇に一筋の希望や明るさが灯される。人生つらいことばかりじゃない。 こんなにも老若男女だれからも愛され、だれをも魅了する好青年って。でも誰よりも闇を抱えていたのだと思う。 つらいなかにも希望が見いだせる、...
きっと誰もが持っているこころの中の闇。あるひとりのスターに出会うことでその闇に一筋の希望や明るさが灯される。人生つらいことばかりじゃない。 こんなにも老若男女だれからも愛され、だれをも魅了する好青年って。でも誰よりも闇を抱えていたのだと思う。 つらいなかにも希望が見いだせる、前を向いて歩いていこうと思う良い読後感でした。
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長編でひとの半生を濃くつぶさに描くという作品を多く読んできたので、今回のような連作短編形式は、作者の作品としては新鮮でした。それでもひとつひとつの作品で、人々の人生の苦悩や悲痛をしっかりと描いていて、らしさを感じる作品集です。 行き詰まりや苦悩を抱えている名もなき人々の日常に、...
長編でひとの半生を濃くつぶさに描くという作品を多く読んできたので、今回のような連作短編形式は、作者の作品としては新鮮でした。それでもひとつひとつの作品で、人々の人生の苦悩や悲痛をしっかりと描いていて、らしさを感じる作品集です。 行き詰まりや苦悩を抱えている名もなき人々の日常に、ふとひとりの有名な俳優が現れる。それをひとつのきっかけに、人生の先行きが変わり、希望を見つけていく。 そんな人々にとってはまるで幸せを撒いていくような善性の存在であるかのようなその俳優も、実は誰にも言えないものを抱えて生きつづけています。 その辺りの事情の重苦しさこそ、ある意味真骨頂の描かれ方…と思いました。暗くて、救いが薄い。それでも、生きることを諦めない、泥まみれでも進んでいこうとする力強さが必ず描かれているから、ただしんどい物語には終わっていません。 完全にハッピーエンドとは言い切れなくとも、読後には未来があることを信じさせてくれる小さくとも確かな光が感じられることが多いので、作者の紡ぐ物語はとても好きです。
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短編8話。どの話の主人公も、少し苦い生活を送っている。その時、元アイドルで実力派映画俳優の堀尾葉介とほんの少し、運命を重ねる事で変化していくストーリー。玉子屋店主、ペット探偵、炭焼き男の話が特に良かった。同時に堀尾葉介の半生を辿るストーリーにもなっており、つかみどころのなかった彼...
短編8話。どの話の主人公も、少し苦い生活を送っている。その時、元アイドルで実力派映画俳優の堀尾葉介とほんの少し、運命を重ねる事で変化していくストーリー。玉子屋店主、ペット探偵、炭焼き男の話が特に良かった。同時に堀尾葉介の半生を辿るストーリーにもなっており、つかみどころのなかった彼の人物像が、自身が主役となる最終章を読む事で腑に落ちた。少し意外なラストだったが、なんとなく読後はホッした。遠田潤子さんは、「お葬式」と2作読んだが、好きなタイプの作家さんだと思った。
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奇しくも発売日一ヶ月前の馳星周さんの「少年と犬」のような話ではあるが、こっちの方が断然好み。 アイドルから俳優に転身した堀尾葉介をめぐる人間模様に、本当によく考えられているストーリーと唸らされた。
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堀尾葉介を軸に、関わり合う人々の人生も描かれている。全てがハッピーエンドとはいかず、モヤモヤ感が残った。作中の人物像が薄く、状況説明が多いのがいい話だけに残念。
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