星月夜 の商品レビュー
中国の厳しい統制とウィグル自治区の差別。様々な問題を抱えて、日本に来て気軽に帰ることもできないなかで勉強やバイトをしながら生活をするのを知り世界全てが行き来できるようにと思わずにはいられなかった。 無知だったのでもっと世界を知らないといけないと改めて思う。
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最初、美しいタイトルだなと思って手に取ったが、内容はとても苦しくて、でも現実に起こっている国家による暴力と差別に苦しむ女性の物語だった。 ウイグル人に対する強制労働などの弾圧について、ニュースで多少聞き及んでいることもあるが、実際は何も知らない、何も知ろうとしてこなかったことを...
最初、美しいタイトルだなと思って手に取ったが、内容はとても苦しくて、でも現実に起こっている国家による暴力と差別に苦しむ女性の物語だった。 ウイグル人に対する強制労働などの弾圧について、ニュースで多少聞き及んでいることもあるが、実際は何も知らない、何も知ろうとしてこなかったことを本作を読んで突きつけられた気がした。自由に出国もできない、電話も盗聴され常に監視される生活…それがどんなに辛いことなのか想像することしか出来ないが、作者の李琴峰さんは新疆ウイグル自治区のことを多くの人に知ってほしくて書いているのだろう。 タイトルの『星月夜』は、本来「ほしづきよ」と読み、星が月のように明るい夜を意味する。しかし今作にはわざわざ『ほしつきよる』とルビが振られている意味が最後まで読むと理解できる。「星」を意味する名前のウイグル人の玉麗吐孜(ユルトゥズ)と「月」が名前に入っている台湾出身の柳凝月。二人は日本で出会い付き合うことになり、今いっしょにいる。しかし、ウイグルの現実がユルトゥズに帰国の選択を迫る。いつか別れの日が来ることが示唆されるように物語は終わる。これは物語だが、現実にも同じようなことが起こっている。二人がいっしょにいられる未来を守るためにもウイグルへの弾圧に世界の人々が声を上げていくことが大事なのだと思う。 また、日本語の母語話者としては考えもしなかった日本語学習者の苦労が書かれていて、そこもとても面白く読んだ。漢字を使う文化だと、同じ漢字でも漢語の意味と日本語の意味が違っていることに混乱したり、漢語の熟語を日本語にもあると勘違いしたり、漢字文化があることの弊害もあるのだな…と思った。そして、冒頭に出てくる「本が大きくてかばんに(入りません)」が正しくて、なぜ(入れません)では間違っているのか…果たして、これを説明できる日本人がどれだけいるのだろう…??実際、日本語母語話者の5%もいないのでは…?恥ずかしながら私は分かりませんでした。意思性の有無にある、という記述を読んでとても勉強になりました。
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星月夜「ほしづきよ」は星が月のように輝いている夜のこと。 でも星も月も両方出ている夜は何というのか、「ほしつきよる」という言葉があればいいのに。 星と月、あなたとわたしが共にいられる瞬間は当たり前のものじゃない。 中国の中でもウイグル出身者を取り巻く状況は厳しく、「やってみ...
星月夜「ほしづきよ」は星が月のように輝いている夜のこと。 でも星も月も両方出ている夜は何というのか、「ほしつきよる」という言葉があればいいのに。 星と月、あなたとわたしが共にいられる瞬間は当たり前のものじゃない。 中国の中でもウイグル出身者を取り巻く状況は厳しく、「やってみてだめなら戻ってくればいい」という生易しい気持ちで留学をしたわけではない。 一度戻れば再び日本に来ることは困難で、 学費は自分で稼がなければいけない。 大学院進学に合格しなければ日本にいる意味はなくなると恐れながら、日々の会話に出てくる知らない単語に困惑する日々。 他国で基盤を作ることは厳しく、 それでもおいそれと引き返すことはできない。
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日本に住む外国籍の学生の思いに触れる。あぁ、そういうこともあるんだ、と素朴に思う。日本社会の中で起きていることでも本当に知らないことが多い。そう思わされるだけでも収穫だが、作品としてもとてもよくできている。人が共に生きるとはどういうことか。ラストが沁みる。
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タイトルは「ほしつきよる」であって「ほしづきよ」ではない。恥ずかしながら「ほしづきよ」の意味を初めて知った。 台湾出身の日本語教師と中国ウイグルの大学生を主人公とする本作は、多様性の意義を考えさせてくれる。なかで「在留カード不所持」に際しての日本警察のあまりに非人間的な対応には背...
タイトルは「ほしつきよる」であって「ほしづきよ」ではない。恥ずかしながら「ほしづきよ」の意味を初めて知った。 台湾出身の日本語教師と中国ウイグルの大学生を主人公とする本作は、多様性の意義を考えさせてくれる。なかで「在留カード不所持」に際しての日本警察のあまりに非人間的な対応には背筋が寒くなった。作者の実体験だろうか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
台湾出身の日本語教師柳凝月と、その教え子で新疆出身の玉麗吐孜(ユルトゥズ)の交互の視点で語られる。 日本では日本語を綺麗に発音しないと差別にあって生きづらいことから、柳先生は日本語の発音について研究している。新疆の言葉は漢語に圧倒され、中国語訛りの日本語は生きづらさにつながる、カテゴリーの違う他者への風当たり。それは同性愛者の生きづらさにも通じている。 恋する他者を思う苦しさにも共感した。ユルトゥズからルームシェアを持ちかけられて喜んだ小谷絵美は、ユルトゥズと柳先生が会話する様子を見て、自分は言葉の壁でユルトゥズとちゃんと会話できてるか分からないしお互いのことを知らないと悟って身を引く。柳先生はユルトゥズに日本に残ってほしいけれど、そう口に出すことはしない。 月がないのに星が月のように明るい夜を「星月夜(ほしづきよ)」というが、星という意味のユルトゥズと、月という名を持つ柳先生と、両方が空に輝いているのが「星月夜(ほしつきよる)」だ。連濁のルールに縛られるのではない読み方、それぞれが独立してそのままにあるということ。ルールに縛られていると見えなくなるものがある。星月夜とはこういうもの、というのに縛られていた柳先生が、ゴッホの星月夜の絵に月があることを見落としていたように。在留カードを忘れた外国人を執拗に取り締まる警察が口にする「ルールだから」や、子どもは家族を愛するべきという価値観(≒ルール)や、人間は異性を愛するものだという前提(≒ルール)に従うのではなく、その時その状況のその人に応じてそれぞれありのままにあることの美しさ、を「ほしつきよる」という言葉が表しているのだと思う。 個人的には、ユルトゥズが距離感について考えているところが好き。柳先生のことは好きだけど、今の距離感だからよくて同棲するほど距離感を詰めるのはどうか、と考えて絵美にルームシェアを持ちかけるユルトゥズと、ユルトゥズと同棲して結婚することを考える柳先生のすれ違いがもどかしいような切ないような。
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アイデンティティとカテゴライズについて揺れる女性二人を描いています。 澄んだ空気の夜に見上げた星空が眩く明るいように、言葉が明らかになってするすると身の内に入ってきました。 そして、ルビが新鮮。日本語と漢語との越境する瞬間で目が醒めるよう。
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日本語を外国語として学んだ主人公(≒著者)の視点がとても新鮮で面白かった。日本語の言語としての特徴が、中国語を母語とする人にとってはこんな風に捉えられるのだな、確かになぁ…と。アジア系外国人として日本に暮らす人々の日常が現実的に描かれている。文体は所々、日本語を母語とする人ならこ...
日本語を外国語として学んだ主人公(≒著者)の視点がとても新鮮で面白かった。日本語の言語としての特徴が、中国語を母語とする人にとってはこんな風に捉えられるのだな、確かになぁ…と。アジア系外国人として日本に暮らす人々の日常が現実的に描かれている。文体は所々、日本語を母語とする人ならこういう言い回しはしないかもしれない、というところがあるが、それをそのまま使っているのも良かった。
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台湾出身で大学の非常勤講師の柳凝月と新疆ウイグル出身留学生の玉麗吐孜の二人が、自国や日本で直面する、性的、民族的マイノリティへの差別や恋愛が描かれた作品。異性愛の論理で構築されている社会で生きることの困難、徹底的に管理される少数民族の無力感が伝わってくる。レディガガの"...
台湾出身で大学の非常勤講師の柳凝月と新疆ウイグル出身留学生の玉麗吐孜の二人が、自国や日本で直面する、性的、民族的マイノリティへの差別や恋愛が描かれた作品。異性愛の論理で構築されている社会で生きることの困難、徹底的に管理される少数民族の無力感が伝わってくる。レディガガの"Born this way"の歌声も虚しく響くようなストーリーでした。
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長くないけど読み応えのある物語だった。 初めはそれぞれの章がそれぞれ一人称で書かれているためこれはどっちだっけ、と迷いながだった。 外国人が日本で生きていくことの苛酷さ、中国の現実、LGBT 等々、内容は盛り沢山。 しかし、全体的に静かな物語に私は感じた。 その静けさの中に色々な...
長くないけど読み応えのある物語だった。 初めはそれぞれの章がそれぞれ一人称で書かれているためこれはどっちだっけ、と迷いながだった。 外国人が日本で生きていくことの苛酷さ、中国の現実、LGBT 等々、内容は盛り沢山。 しかし、全体的に静かな物語に私は感じた。 その静けさの中に色々な問題が内包されていて本当は怖いのかもしれないが。 コンビニのバイトの絵美はこの物語にとって重要な存在なのかなあ、と思った。 表紙の写真もとっても素敵だ。 二人の姿、かな。 このあと二人はどうなっていくのだろう。
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