歴史家と少女殺人事件 の商品レビュー
だんだん読むのがつらくなってきて、一部読み飛ばして読了とした。 これは歴史家である著者がとある三面記事に掲載された記事を読み、徹底的に殺された18歳の少女レティシアの事件について記したものだ。というかこれはレティシアの物語だ。そして、レティシアを通して危険に晒される少女・女性たち...
だんだん読むのがつらくなってきて、一部読み飛ばして読了とした。 これは歴史家である著者がとある三面記事に掲載された記事を読み、徹底的に殺された18歳の少女レティシアの事件について記したものだ。というかこれはレティシアの物語だ。そして、レティシアを通して危険に晒される少女・女性たちの物語をも描いているとも感じた。 いつかまたちゃんと全編読めるようになったら、読み返したい。とても大事なことが書かれた本だから。
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レティシアという少女殺害事件という3面記事のような事件がフランス中を席巻したことについて,加害者の側ではなく被害者の側に寄り添い彼女の生きていた真実に迫る記録.その背景の男性社会,強姦や暴力,政治の介入にも厳しい目を向けて,問題を投げかけている.読み応えもあり考えさせられることも...
レティシアという少女殺害事件という3面記事のような事件がフランス中を席巻したことについて,加害者の側ではなく被害者の側に寄り添い彼女の生きていた真実に迫る記録.その背景の男性社会,強姦や暴力,政治の介入にも厳しい目を向けて,問題を投げかけている.読み応えもあり考えさせられることも多かった.
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「三面記事事件は公衆の意識の中に生まれ出る。なぜならそれは、歴史と、メディアと、感性と、政治的状況の交差点にあるからだ。」 本書は作家であり歴史家でもあるという著者が、2011年にフランス西部の海辺の田舎町で起こった凄惨な殺人事件をテーマに描いたノンフィクションである。 物語...
「三面記事事件は公衆の意識の中に生まれ出る。なぜならそれは、歴史と、メディアと、感性と、政治的状況の交差点にあるからだ。」 本書は作家であり歴史家でもあるという著者が、2011年にフランス西部の海辺の田舎町で起こった凄惨な殺人事件をテーマに描いたノンフィクションである。 物語は、レティシアとジェシカという双子の姉妹を軸に、誕生からレティシアが殺害されるまでの歴史、そして殺害された時点からの捜査や裁判が交互に描かれる。捜査や裁判において、丹念に証拠が収集され、分析され、一つのあり得た「真実」として構築されていく過程と同じように、著者は歴史学の手法を用いて新聞記事、裁判記録、関係者へのインタビュー、SNSといった資料を基に三面記事を彩ったであろうこの事件を、被害者であるレティシアとその双子のジェシカに焦点を当てながら描いていく。 センセーショナルに報道されたであろう事件であるが、著者はその優れて個別的な事件の中に、男性優位社会の暴力性や社会的貧困、国家権力による法的統治への圧力といった社会的構造の歪みを浮かび上がらせていく。当時のサルコジ大統領が、本事件を政治的に利用して厳罰化に向けて司法制度への圧力を掛けたという点についての批判は取り分け厳しい。歴史学・社会学的手法を用いながらも、レティシアやジェシカに寄り添った描写は叙情的な部分もあり、娘を持つ父親として、作家としての心情が吐露されているように感じられ、共感した。
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『私にはいなかった祖父母の歴史』は、アウシュビッツで亡くなった祖父母の人生を現代から辿るというとてつもない試みだった。本書の対象は現代の猟奇殺人で、あえて歴史家が取り組む意義はなんだろう。この作品の企図は、悲惨な死によって有名になったレティシアという少女に、ジャーナリズムではなく...
『私にはいなかった祖父母の歴史』は、アウシュビッツで亡くなった祖父母の人生を現代から辿るというとてつもない試みだった。本書の対象は現代の猟奇殺人で、あえて歴史家が取り組む意義はなんだろう。この作品の企図は、悲惨な死によって有名になったレティシアという少女に、ジャーナリズムではなく歴史の手法を通じて対面することだ。資料を比較検討して、事実を確定させ、不明点には妥当な仮説を提出する。優れた歴史書を読む知的興奮と、暴力の犠牲になる少女への共感が一体となった読書体験。決定的な瞬間に向き合う章の叙述には心が震えた。
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