水を縫う の商品レビュー
主人公から、姉、母、祖母へと語手を変えて綴られる不器用な家族の物語り。寺地はるなさんがそんな家族を優しく描いてます。ほんとに家族の描き方が上手い。第5章がいちばん感動的でした。
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ブクログの皆さんの本棚で良く見かける寺地さんを初読みです。 高校に入学した刺繍好きの男子である清澄と、ある事情で可愛いものがダメになった姉の水青が中心だが、祖母も母親もそれなりに個性が強い。それにお金の管理が出来ずに離婚された父親と、その父親を見守る親友の6人が、それぞれの章で主...
ブクログの皆さんの本棚で良く見かける寺地さんを初読みです。 高校に入学した刺繍好きの男子である清澄と、ある事情で可愛いものがダメになった姉の水青が中心だが、祖母も母親もそれなりに個性が強い。それにお金の管理が出来ずに離婚された父親と、その父親を見守る親友の6人が、それぞれの章で主役となる構成。各自の個性が良く分かる。 他人と一定の距離を保とうとする水青が結婚するのも不思議だが、結婚式も開きたく無いほどの水青のウェディングドレスを作ろうとする清澄。 可愛いさを嫌う水青のドレスに可愛さを足してしまう清澄。困った時に頼るのが父親の親友である黒田さん。そして父親の登場。 文章は淡々としているのだが、内容が非常に濃く、あっという間に最後まで読んでしまった。6人の関係と結末に感動してしまった。
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すごく、ものすごく良かった。 これはもうおそらく、今年1番好きな本決定です。 「男らしく」とか「女らしく」とか「いい母親」とか「普通の家族」とか、そういったある種の呪いのような固定観念に人生を縛られてきた家族が、娘の結婚を機に自分の人生を考え、他人の優しさに気づき、気持ちに正直...
すごく、ものすごく良かった。 これはもうおそらく、今年1番好きな本決定です。 「男らしく」とか「女らしく」とか「いい母親」とか「普通の家族」とか、そういったある種の呪いのような固定観念に人生を縛られてきた家族が、娘の結婚を機に自分の人生を考え、他人の優しさに気づき、気持ちに正直になっていく。 6章ある全ての物語が感涙ものでしたが、自分が父親であるせいか第5章の「しずかな湖畔の」が笑えるくらいに泣けました。40頁ほどを読むなかで何度も泣いて何度も熱くなって。 嫌な人が1人も出てこないこともあり、とても気持ちよく読み切ることができました。 寺地はるなさんの本は初めて読みましたが、とりあえず図書館で他の作品を借りてみたいと思います。あと、「水を縫う」は本屋で買って、本好きな義母にプレゼントしたいと思いました。
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高校に入学した手芸好きな松岡清澄。 清澄を取り巻く家族が主人公となり物語が進む。 手芸が好きで中学までは友達がいなかった主人公清澄に、それが普通でない様で気を揉む母。 過去の出来事が原因で「かわいい」に過剰反応し、受け入れられない姉。 この先の人生を考える中で夫からの『みっとも...
高校に入学した手芸好きな松岡清澄。 清澄を取り巻く家族が主人公となり物語が進む。 手芸が好きで中学までは友達がいなかった主人公清澄に、それが普通でない様で気を揉む母。 過去の出来事が原因で「かわいい」に過剰反応し、受け入れられない姉。 この先の人生を考える中で夫からの『みっともない』や父からの『女だから』という言葉を見つめ直す祖母。 清澄の父、全の面倒を見る黒田縫製の黒田社長。 ものすごく温かい作品だった。 清澄の友達、くるみのキャラも良かったし、血の繋がった家族ではないが、黒田さんの清澄を見守る視線とそれに対して2人目の父の様に感じていた清澄の関係性にジーンとした。 父、全がみるみるドレスを仕上げていく場面も全の才能をよく表していたし、清澄が刺繍を仕上げていく場面も目の前で見ている様で私まで満足感があった。 父からの名前の由来も素敵で、私も流れ続けて清く澄んだ水でありたいと思った。 だからタイトルは『水を縫う』だったんだと納得。 また読みたい。
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『水を縫う』、清らかで淀みのない流れる水のような心で、生地に針を入れる。 まるで水面にうつる水光をあらわすように、ゆらめくドレスに銀糸を縫いつけてゆく描写が美しい。 好きなことをお金や役立つものに結びつけようとしなくて良い。好きなことは好きなこととして、人生に必要なのだと教えてくれてた。誰のためでもなく、自分を満たすために。 ひたむきに良い作品を追い求める清澄の姿勢に感動した。温かい気持ちを残してくれる小説だった。 『さびしさをごまかすために、自分の好きなことを好きではないふりをするのは、好きではないことを好きなふりをするのは、もっともっとさびしい。好きなものを追い求めることは、楽しいと同時にとても苦しい。その苦しさに耐える覚悟が、僕にはあるのか。』
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人とは人知れず悩みを抱え、あるいはそれを隠しながらも生きている生き物だ。 本書の登場人物を見ていてそんな風に思った。 男らしさ、女らしさ。言い方は色々あるが、大切なのは性別ではなく「個性」だ。「その人」が「どうありたいか」である。 それぞれに、それぞれの生き方がある。それは決して...
人とは人知れず悩みを抱え、あるいはそれを隠しながらも生きている生き物だ。 本書の登場人物を見ていてそんな風に思った。 男らしさ、女らしさ。言い方は色々あるが、大切なのは性別ではなく「個性」だ。「その人」が「どうありたいか」である。 それぞれに、それぞれの生き方がある。それは決して誰かに強要されるものではないのだ。
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結末は、読者に任されている物語。 ▶︎読んでほしい人 人とは違うことに苦しんでいる人。 モノづくりが好きな人。 ▶︎きっかけ ?
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手芸好きの清澄、かわいいものが苦手な水青。 若い世代だけではなく、母や祖母も縛られていた「普通」と向き合い、乗り超えるために動き出すのが印象的。 姉の婚約者や黒田さん、宮多など家族を取り巻く人たちの温かさを感じた。
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感想 何気ない家庭にあるそれぞれの心のうちを丁寧に書いており、登場人物それぞれの個性がよく分かって、共感できる。 各章が家族それぞれの視点で語られる。というので父親の章があると思いきや、父親の友人からの目線。読了後は敢えて父親の章がなくて良かったのかも、となんとなく思った。 あらすじ 清澄は手芸が好きな高校一年生。自分のやりたいこよは手芸と明確だが、周囲の奇異な目線と母親のなんでも辞めるように言うことにうんざりしていた。姉が結婚するにあたって一緒に暮らす祖母とウェディングドレスを作りたいと申し出る。 姉の水青は結婚間近。堅実に生きるをモットーにしてきた。小学校の頃に変質者にかわいいと言われてから女の子らしい服装を避け、かわいいと言われることを嫌がった。エネルギッシュな弟を眩しく思っている。 母親のさつ子は市役所に勤めて、離婚後も水青と清澄を母の力を借りて育ててきた。元夫がなり損ねた服飾デザイナーと同じところを目指す清澄を苦々しく思っていた。 祖母の文枝は、女は男より劣る、良いお嫁さんになるべきだという古い考えに疑問を持ちつつも、その考えの中で育ってきたため、自分も知らずのうちにその考えをすることがあった。周囲にやりたいように進める一方で自分はやりたいことがやれずにいた。一歩踏み出し、プールを始める。 黒田は父親の全の面倒を見ている縫製会社の社長。全の家族を自分の家族のように思い接してきた。清澄からの依頼で全にドレス作りを手伝うように説得する。
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「大人は泣かないと思っていた」と似た温かみがある。他人から何気なく掛けられた言葉でも、簡単に呪いとなり自分をがんじがらめにしてしまうことってあると思う。登場人物の一人ひとりが少しずつその呪いを解いていく様子が、希望に溢れていてよかったな。 一番近くにいる家族だからこそ、「分かって...
「大人は泣かないと思っていた」と似た温かみがある。他人から何気なく掛けられた言葉でも、簡単に呪いとなり自分をがんじがらめにしてしまうことってあると思う。登場人物の一人ひとりが少しずつその呪いを解いていく様子が、希望に溢れていてよかったな。 一番近くにいる家族だからこそ、「分かってほしい」とか「どうして分かってくれないの」がぐちゃぐちゃになって傷付けてしまったり。「どうせ分かってもらえない」と伝えることすらしないのも、「分かるはずがない」と相手を軽く見るのもよくないね。 血の繋がりだけが家族でもない。清澄の、黒田への言葉が胸に刺さりました。
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