反穀物の人類史 の商品レビュー
移動性狩猟採集民を野蛮人と定義し、国家を作ることになる定住農耕民との歴史的な対照と兼ね合いを綴った専門書です。 獲得経済と生産経済について、初期段階では前者のほうが確実にお得であることを著者は提唱しています。 国民として生きるよりも野蛮人として生きるほうが楽である“野蛮人の黄金時...
移動性狩猟採集民を野蛮人と定義し、国家を作ることになる定住農耕民との歴史的な対照と兼ね合いを綴った専門書です。 獲得経済と生産経済について、初期段階では前者のほうが確実にお得であることを著者は提唱しています。 国民として生きるよりも野蛮人として生きるほうが楽である“野蛮人の黄金時代”、人間らしさはどちらにあったのでしょうか。 奴隷制という手段によって国家と人口を巨大化することで生産経済が伸びるわけですが、この時には既に人間自身の飼い慣らしが完了して自然な存在を逸脱しています。 家畜と化した農耕民は数と道具(それと伝染病)によって野蛮人を同化・駆逐し増え続け、今に至ります。 農作物や家畜とは人間の手入れがないと死ぬものですが、我々はそれらを食べずに自然へ帰れと言われたら戻れるでしょうか。 副題のディープヒストリーは今後も続きそうですね。 とても難い内容ですが、著者の軽快な筆致で読了できました。
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少し読みにくかったけれど、人が定住して集まって住むようになり、家畜や穀物含め、伝染病が発生・増加する話など、コロナ禍の今読むと興味深い。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
農耕を行って国家ができたわけではない、という所から、国家の要件・定住の意味などを考え直すという意味では非常に面白かった。この本でいう「野蛮人」は中世くらいまで続いているような雰囲気を醸し出していたが、その辺りまで考えを膨らませると色々と面白い。旧約聖書や中世の文学などを読み返すとまた違う視点が見えるような気がした。
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課税作物としての穀物の優位性に、収穫時期が決まってるってのが大きいのに膝ポン。いつでも収穫できる豆類とかに比べて、たしかに「脱税」もしにくいわな。 初期国家というか文明の台頭期に焦点が当たってて、もちょっと現代寄りを期待してたので、残念。 「ゾミア」から読んだほうが良かった…っ...
課税作物としての穀物の優位性に、収穫時期が決まってるってのが大きいのに膝ポン。いつでも収穫できる豆類とかに比べて、たしかに「脱税」もしにくいわな。 初期国家というか文明の台頭期に焦点が当たってて、もちょっと現代寄りを期待してたので、残念。 「ゾミア」から読んだほうが良かった…って問題でもなさそうだなあ。
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人類文明の歴史をこういう角度から見通すとは、面白い。国家や文明に馴化、適応させられたのが現代人というのは正しい指摘かも。文明側から恣意的に「野蛮」に分類されてきた人々の多くが、実は文明側から自由になった人達だったりとか、刺激的で示唆的。
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