1,800円以上の注文で送料無料

反穀物の人類史 の商品レビュー

4.3

25件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    11

  3. 3つ

    2

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/02/03

知的刺激に満ちた本だった。「銃・病原菌・鉄」を読んで以来、農耕・牧畜民族が文明・国家を築き、狩猟・採集民族を駆逐したのが人類の歴史だと思い込んでいたが、全く違っていたことを認識させられた。動植物の家畜化・作物化(農耕・牧畜)→定住・人口増加→文明・国家出現と直線的に発展したと思っ...

知的刺激に満ちた本だった。「銃・病原菌・鉄」を読んで以来、農耕・牧畜民族が文明・国家を築き、狩猟・採集民族を駆逐したのが人類の歴史だと思い込んでいたが、全く違っていたことを認識させられた。動植物の家畜化・作物化(農耕・牧畜)→定住・人口増加→文明・国家出現と直線的に発展したと思っていたが、定住が家畜化・作物化に4千年も先んじていたこと、農耕・牧畜から初期国家出現まで6千年かかっていることに驚愕した。また、農耕民族>>>狩猟・採集民族で優越しているのではなく、農耕民族の被支配層(農民)は奴隷等の弱者で農耕民族の支配層と狩猟・採集民族の間で搾取・略奪という形態で結果的に農民の産み出した生産余剰とシェアしていたという事実には目から鱗が落ちる思いであった。

Posted byブクログ

2023/07/09

本書の内容はこれまで一般的な歴史教育で教わった、農耕が始まることで出来た余裕で神官や貴族が生まれ国家が形成されたという常識を否定するものである。「サピエンス全史」でユヴァル・ノア・ハラリも似たようなことを言っているが、小麦や稲などの穀物を土台とする国家は、実は穀物に飼いならされて...

本書の内容はこれまで一般的な歴史教育で教わった、農耕が始まることで出来た余裕で神官や貴族が生まれ国家が形成されたという常識を否定するものである。「サピエンス全史」でユヴァル・ノア・ハラリも似たようなことを言っているが、小麦や稲などの穀物を土台とする国家は、実は穀物に飼いならされているという主張。 家畜やヒトが農耕社会が原因で得た進化の適性や国家と蛮族の関係性などの視点も面白かった。 難を言えば話題があっちこっち行って結論がしっくりこない。というか結論がない。 同じ作者の「ゾミア」は非定住民は未開ゆえに国家の支配を逃れる目的で穀物生産を行わないという選択をしているという筋が一本ある。まだ「ゾミア」読んでないけど。

Posted byブクログ

2022/10/26

国家の起源についての驚くべき本。 石器時代の狩猟社会は人間にとって結構幸せな時代で、新石器時代で農耕が始まって人間は不幸になったという感じの話はときどき聞くわけだけど、この本はさらに議論を先に進めている。 これまでの通説では、国家の起源は、農耕が進むにつれ、灌漑を行う必要がで...

国家の起源についての驚くべき本。 石器時代の狩猟社会は人間にとって結構幸せな時代で、新石器時代で農耕が始まって人間は不幸になったという感じの話はときどき聞くわけだけど、この本はさらに議論を先に進めている。 これまでの通説では、国家の起源は、農耕が進むにつれ、灌漑を行う必要がでてきて、自然発生的に国家が生まれてきたという感じであったと思うが、スコットは、最近のさまざまな研究を組み合わせながら、その理解を覆していく。 国家をなんと定義するかによって、なにを起源とするのかは、いろいろな議論がありうると思うが、スコットは税(穀物や使役など)を徴収するということに国家の基本条件を求める。 そうすると、国家が成立する以前に灌漑などは自然発生的に作られていたいうことになる。 では、どこから国家はやってきたのか? 著者は、まず農耕や牧畜にともなって、植物や動物の家畜化(domestication)がなされるというところに着目する。つまり、人間の都合のよい個体を選択していくことで、より人間の扱いやすいものに種が変異、進化していく。 その家畜化の主体は、「人間」であるように見えるが、実は、人間自体も、家畜化された種との相互依存のプロセスで、自己家畜化が生じるという。 自己家畜化がすすんだ人間のコミュニティに対して、内部から、あるいは外部から、これを支配しようとするエリート層がでてきて、徴税を行うようになるのが、国家の起源ということになる。つまり、ある種の寄生的な存在ということだ。 なぜ、それが可能かというと、穀物という形である程度の期間保存できるかたちで富が生み出されて、かつ一斉の収穫時期がきまっているため、税を徴収してまわることができるから。 この国家は、外部の敵から、コミュニティを守るという役割も担う。あるいは、外部の敵に対して、襲ってこないように貢物をする。つまり、国家も外部の敵も、みかじめ料を要求するヤクザみたいな存在なのだ。 こうして、農耕の発達によって、人間は家畜化がすすんだり、ヤクザ的な存在によって、支配されたり、搾取されたりすることで幸福度は下がっていくのだ。 だが、著者は、この狩猟社会から農耕社会への変化が、国家的なものに不可逆的に「進化」していくわけでないことを強調する。 むしろ、「国家」は、安定したものではなく、しばしば短期間で崩壊する。が、「国家の崩壊」は、今日、わたしたちが想像するような悲劇的なことではなく、そこにいた人たちは解放されて、幸福度があがったりする。 そして、「国家」が機能しているときも、「国家」の支配から抜け出す人々も常にいた。「国家」を囲む壁は、外部からの侵入者から守るためであるとともに、「国民」が外部に逃げないようにするためのものでもあったのだ。 この分野の本はあまり読んでいないのだが、この議論はかなり説得力があるように思う。 ある意味、フーコーが「監獄の誕生」などで行った議論とも類似したものを感じた。ただ、フーコーは、そうした「監視社会」は近代のものとしたのだが、スコットの議論にのると数千年前からの流れであるということになる。 もう少しこの分野の本を読んでみようと思う。

Posted byブクログ

2022/04/17

レビューはブログにて https://ameblo.jp/w92-3/entry-12737861063.html

Posted byブクログ

2022/04/03

人類がアントロポセンを引き起こす所以、国民国家が当たり前に語られる現代で、国家がいかに歴史的に暴虐だったかを提示してくれる、知的好奇心がそそられる本。ジェームズ・C・スコットは何読んでも面白いです。

Posted byブクログ

2022/02/09

初期国家発生の要因とその目的に加え、AD1600年代までのメジャーな存在だった「不在のリヴァイアサン」(=遊牧国家含めた無国家民)と国家の並行進化について紹介した書籍。

Posted byブクログ

2022/01/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルの「反穀物」と副題の「国家誕生のディープストーリー」のつながりが、ん?という感じであったものの、いわゆる4大文明でも有名なメソポタミアで、定住してから国家ができるまでと、初期国家ができたとしてもすぐに崩壊してしまった理由など、歴史の教科書等で一般的なイメージとは異なる分析・考察がなされている本。 個人的に興味深かったのは、家畜動物から由来する病気のリストで、麻疹はヒツジやヤギの罹る牛疫ウイルスから、天然痘はラクダの家畜化と牛痘を持ったネズミから、インフルエンザは水鳥の家畜化から、およそ4500年前に生じたと考えられているというもの。現在でも、ホモ・サピエンスと、ブタ、ニワトリ、ガチョウが高い密度で共存している某地域が、とあるウイルスの起源であることもうなづける。 また、定住している人は狩猟民族に比べて全般的に不健康で、幼児と母親の死亡率が高かったにも関わらず、定住農民は繁殖率が高く、死亡率の高さを補ってあまりあるほどであるという点も、狩猟採取民と農民の人口統計学的な差が、5000年という文脈で考えると、今の世界につながっていることがよく分かった。 本書は、医学、疫学の話はメインではなく、定住してから国家として成立するまでの社会システムの重要なポイントは奴隷制にあったことや、徴税と穀物の関係など、新しい視点も多々あり、かつ、ウル第三王朝、ウルク、キシュ、ニップル、ラガシュ・・・という響きも何とも言えずワクワクし、興味深い本だったなーという感想です。

Posted byブクログ

2021/12/05

文明人とは生成途上の家畜である! と喝破した書。 国家に穀物生産を強要され都市の城壁という畜舎で家畜化される人類と穀物生産を拒否し都市を脱走して辺境の野蛮人たるを選ぶ人々の抗争を活写。 家畜化された穀物生産複合体の所有権を奪い合う初期国家のエリートと最強の野蛮人たる遊牧騎馬民族と...

文明人とは生成途上の家畜である! と喝破した書。 国家に穀物生産を強要され都市の城壁という畜舎で家畜化される人類と穀物生産を拒否し都市を脱走して辺境の野蛮人たるを選ぶ人々の抗争を活写。 家畜化された穀物生産複合体の所有権を奪い合う初期国家のエリートと最強の野蛮人たる遊牧騎馬民族という闇の双生児の激烈な闘争と隠微な共謀の世界史を描く。 最新の考古学と生物学と歴史学を総動員しヤンガードリアス期後の定住化から最初期国家の成立にいたる歴史の謎に挑んだ意欲作です。 炭水化物抜きダイエットの副読本と違うからご注意を

Posted byブクログ

2021/11/03

『実践 日々のアナキズム』がとても良かったので、こちらも追読。視点がとても興味深い。学際的とはこういうことかと思う。

Posted byブクログ

2022/02/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 人類学の本。この本では、いままでとは異なる知見がいくつか含まれていた。  一つ目は、農耕に関するのも。農耕は定住と結びつけて考えられがちだが、そうではない。定住は農耕しなくても行われていたし、狩猟採取民が農業に関与することもあったということ。第一に、農耕が始まってから定住するまでに、タイムラグがあること。また、狩猟採取民は、多くの知見を持っていて、選択的に農耕に従事した。例えば、焼畑をしたり、氾濫したシルトにタネを撒いたり。いくつもの研究が示しているように、農耕の方が狩猟採取よりも、大変。そんなものに、喜んで手を出す賢い狩猟採取民はいない。  二つ目は、なぜ米や小麦が好まれ、レンズ豆や芋類が好まれなかったのか。これは、納税に関わる問題だ。もし国家が税を集めるならば、同じ時期に一斉に回収するのが好ましい。それを満たしていたのが、米や小麦などだ。豆類は転々バラバラに生るため、回収するのが難儀であるし、芋類は地中に隠せる。だから、穀物が選ばれた。  三つ目は、国家の崩壊に関する考え方。しばしば、国家の崩壊は暗黒時代と称されるが、果たしてそうだったのかということである。農耕は栄養バランスに欠け、労働も多く求められる。国家の発展を支えていたのは、数多くの奴隷だ。あなたは、一部の支配者や国家の発展のために、身を粉にして働きたいだろうか?国家の崩壊は、それを嫌った人々の逃走が主な原因だ。つまり、大部分の人にとっては「崩壊」ではなく「エデン」への脱出だった。多くの人は勘違いしているが、万里の長城は外部の敵から身を守るだけでなく、奴隷を逃がさないためのものでもあった。  他にも多々あるが、私の知識は充分では無いので、気になった方は直接読むことをオススメする。  少し根拠が欠けているように思える部分もあったが、著者もここは「私の考えである」と明記しており、私見と客観的意見を区別しやすくなっている。  内容も、通説だけでなく新しい考えも含まれており、非常におもしろ本であった。ただ、難易度は高いので、人類学の本を初めて読む人にはお勧めしない。

Posted byブクログ