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海の地政学 の商品レビュー

4.4

17件のお客様レビュー

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2020/03/18

国際政治の専門家による、海洋における覇権争いの話。スペイン・ポルトガルの大航海時代から、大英帝国、米国へと海洋覇権が移っていくことを詳細に説明している。一部、電信など情報優位のことや石油利権など、海洋とは関係ないことも細かく書かれているが、海の覇権争いについては、わかりやすく納得...

国際政治の専門家による、海洋における覇権争いの話。スペイン・ポルトガルの大航海時代から、大英帝国、米国へと海洋覇権が移っていくことを詳細に説明している。一部、電信など情報優位のことや石油利権など、海洋とは関係ないことも細かく書かれているが、海の覇権争いについては、わかりやすく納得できる内容であった。 「中国は、国連海洋法条約が作り上げた海洋秩序に挑戦した初めての国家となる」iv 「(米国の捕鯨)鯨油は時計、ミシン、タイプライター、各種機械の潤滑油としても重宝がられ、それ以前に普及していた蜜蝋、植物性油脂、動物の獣脂を原料としていた蝋燭(キャンドル)の灯火は、瞬く間に姿を消した。今から見れば考えられなしことだが、クジラは照明用のオイルのほか、その骨は女性用のコルセットに、そしてヒゲは歯ブラシなどにも利用でき、それ以外としては汚れを落とす洗濯用石鹸として活用されたため、クジラを解体しても廃棄する部分がないほど、クジラ一頭の有用性は極めて高いものであった。鯨製品、鯨油なしの生活が考えられないほど、クジラは生活の必需品になっていた」p55 「動物愛護や海洋環境の観点から、現在のアメリカは捕鯨反対の立場を取り、日本の捕鯨をいたく批判しているが、歴史を振り返るとアメリカこそが捕鯨の先駆者であり、クジラを乱獲して頭数を激減させたいわば当事者なのであった」p56 「ブルックス・ブラザーズの紳士服を、ルーズベルトを筆頭に歴代大統領はこぞって愛用した」p84 「(ルーズベルト)日露戦争の講和会議をポーツマスで開催し、この功績が認められて1906年に、アメリカ人として初のノーベル平和賞を受賞した」p88 「いまだにアメリカは、国連海洋法条約に調印していない。最大の理由は「深海底」とよばれる深い海底における資源開発のあり方をめぐって、反対の立場を示しているからだ」p172 「(米国)国連海洋法条約に加盟していないという事実は重く、アメリカが中国の海洋進出に対して「法の支配」を唱えても、アメリカ自身が国連海洋法条約による「法の支配」を受け入れていないため、中国から逆に批判される立場に追い込まれてしまった」p187 「「法の支配」としての国連海洋法条約を実効性のある海洋秩序として機能させてきたのは、なんといってもアメリカや西側同盟国の軍事力によって担保されているからである。アメリカの軍事力が世界中に展開されていることで、国連海洋法条約も尊重されてきたという現実を忘れてはならない」p183 「(戦後)覇権国家アメリカは、政治的な枠組みとしてトルーマン・ドクトリンを打ち出し、経済的な枠組みとしてマーシャル・プランを実施した」p188 「(2019年)海保の定員は、約1万4000人で、予算は約2500億円」p233

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2020/03/05

海には公海と領海という区別があったり、領海や接続水域、排他的経済水域など様々な概念で区分されています。 本書はそのような海の秩序がどのような経緯で形成されてきたのかを分かりやすく解説しています。本書によれば海の秩序はその時代で最も大きな発言力を持った国の意向に沿って築かれてきたと...

海には公海と領海という区別があったり、領海や接続水域、排他的経済水域など様々な概念で区分されています。 本書はそのような海の秩序がどのような経緯で形成されてきたのかを分かりやすく解説しています。本書によれば海の秩序はその時代で最も大きな発言力を持った国の意向に沿って築かれてきたと言ってよく、その担い手は大航海時代のポルトガル・スペインに始まり、オランダ、イギリス、アメリカと引き継がれ、そして現在はアメリカによる秩序(パックス・アメリカーナ)に中国が挑んでいるという構図になっています。 これらの海洋覇権国家の栄枯盛衰の歴史を本書前半部で、後半は現在の海洋の区分がどのように形成されてきたのか、そしてそれに挑んでいる中国の動向、それに対峙する日本の現状という筋立てで構成されています。 オランダ、イギリス、アメリカが順にそれまでの覇権国家にとって代わって覇権を確立してゆく有様の記述は世界史を海洋を舞台に再構成するような切り口で、大変興味深く読めました。 日本の鎖国を打破したペリー提督はアメリカ西海岸から太平洋を横断したのではなく、大西洋からアフリカ喜望峰を経由してインド洋を過ぎるという西廻りで訪日したという事、第一次世界大戦でドイツが戦局打開を狙ってメキシコに参戦を促した電報がイギリス経由の海底ケーブルを経ていたので、その電報をイギリスが解読していたためにイギリスはアメリカへの参戦を促す決断ができた等々の事実が前半部では紹介されています。 後半部では中国の法律戦(自国に有利になる法解釈を押し付ける)の現状、日本の海上保安庁が海洋の法秩序を守るための組織として世界的にいかにレベルの高い組織であるかといった日本人でも以外と知らない事実なども紹介されています。海上保安庁は海難救助、航路の安全確保、密輸等の犯罪対応、など海に関わる本当に多くの役割を担っているのですね。 中公新書で、書名からちょっと硬い目の印象を受けますが、新聞やニュースに普通に接している程度の常識があれば、かなりの情報を売ることができる1冊だと思います。

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2020/02/24

【世界的な規模で長期の複雑な交渉や利害調整、そして最終的には各国の妥協の末に、現在の海洋秩序が誕生してきたと考えてよい】(文中より引用) 主にイギリスやアメリカといった大国に主導されながら、いかにして近現代の海洋秩序が成立してきたかを概観した作品。著者は、『世界を動かす海賊』な...

【世界的な規模で長期の複雑な交渉や利害調整、そして最終的には各国の妥協の末に、現在の海洋秩序が誕生してきたと考えてよい】(文中より引用) 主にイギリスやアメリカといった大国に主導されながら、いかにして近現代の海洋秩序が成立してきたかを概観した作品。著者は、『世界を動かす海賊』などの著作で知られる竹田いさみ。 描き方によっては茫漠としてしまいそうな広大なテーマを、見事に約250ページに収めこんだ力作。時にコラム的な話題で読者を巧みに海の世界に誘いながら、海洋から見た世界史を丁寧に著述してくれています。 新書のお手本のような一冊☆5つ

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2020/01/30

地政学を学ぶ上で海を避けては通れない。この本では大航海時代から現在に至るまでのシーパワーを説明している。シーパワーとは元々、自国の船が安全に貿易できるために必要な軍事力・海運力・外交力を指す。近代までは主に貿易メインについてであったが、エネルギー革命が起き、さらに海底資源の発掘と...

地政学を学ぶ上で海を避けては通れない。この本では大航海時代から現在に至るまでのシーパワーを説明している。シーパワーとは元々、自国の船が安全に貿易できるために必要な軍事力・海運力・外交力を指す。近代までは主に貿易メインについてであったが、エネルギー革命が起き、さらに海底資源の発掘とそれを掘削する技術が開発されると、貿易だけでなく、海底資源などもシーパワーと深く関わる要因となった。

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2020/01/26

500年に及ぶ海洋の政治史をよくまとめていて、どのように海洋に関する国際法が発展してきたのか、接続水域などの概念がなぜ生み出されたのかなど、なんとなく分からずもやもやしていたことが結構すっきりした。 トルデシリャス条約、スペインとポルトガルによる海洋支配を否定したグロティウス、イ...

500年に及ぶ海洋の政治史をよくまとめていて、どのように海洋に関する国際法が発展してきたのか、接続水域などの概念がなぜ生み出されたのかなど、なんとなく分からずもやもやしていたことが結構すっきりした。 トルデシリャス条約、スペインとポルトガルによる海洋支配を否定したグロティウス、イギリスの航海法、海底ケーブルによる情報網、レセップスによるスエズ運河の開削、燃料としての鯨と捕鯨のためのアメリカの海洋進出、パナマの確保、ワシントン会議、トルーマン宣言、石油の開発、国際海洋条約、中国の海洋秩序への挑戦。

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2020/01/15

四百年の歴史を通して、海の覇権の変遷や海洋秩序のための取り組みを描く。その軌跡は海洋国家・日本へのヒントにもなるだろう。

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2019/12/11

15世紀大航海時代のスペイン、ポルトガルの海洋進出に始まる海の覇権の歴史。欧州の覇権争いから抜きん出た大英帝国、19世紀の捕鯨の時代にはアメリカが海の覇権を狙い、開国前後の日本への影響に触れている。瞠目すべきは、1982年に制定された「国連海洋法条約」に挑戦する中国の海洋戦略であ...

15世紀大航海時代のスペイン、ポルトガルの海洋進出に始まる海の覇権の歴史。欧州の覇権争いから抜きん出た大英帝国、19世紀の捕鯨の時代にはアメリカが海の覇権を狙い、開国前後の日本への影響に触れている。瞠目すべきは、1982年に制定された「国連海洋法条約」に挑戦する中国の海洋戦略である。独自の国内法「領海法」掲げて、周辺海域の島々を領有すると宣言していることにある。海洋ルール(秩序)を無視し、国際関係に不協和音を奏でる中国の三つの戦略(①世論戦➁心理戦③法律戦)を目の当たりに見せつけられた。(N図書館蔵書)

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