房思琪の初恋の楽園 の商品レビュー
三浦瑠璃が本作について語った。本人も似たような体験があったと聞いた事がある。確かに、どこまでいっても女性は浸食される性だ。行為は常に男性のエレクトが条件だから。充満した欲望が作用する。小説が実話に近いかは定かではない。しかし、作者は本作を発表した後に自殺した。 暴力と逢瀬、狡猾...
三浦瑠璃が本作について語った。本人も似たような体験があったと聞いた事がある。確かに、どこまでいっても女性は浸食される性だ。行為は常に男性のエレクトが条件だから。充満した欲望が作用する。小説が実話に近いかは定かではない。しかし、作者は本作を発表した後に自殺した。 暴力と逢瀬、狡猾と年齢差が交差すれば、そこに生まれるのは浸透圧のような搾取。シーンは加害と被害、善悪の視点で射抜かれるが、しかし、男女の関係は単純化できない。何故なら女性側には男性に惹かれる引力が作用しているから。そして何より、この引力を理解した上で、利用するのが男性側の戦略。この泥濘にはまり、楽園は次第に破滅へと向かう。物語は、傷付き立ち直れぬ人生と、立ち直ろうとする人生と、二人のパターン包括し、まるで作者が心を整理するための心理療法、ナラティブアプローチのようだ。 性の利己的な戦略が創作する刹那的な美しきアート。第一印象は、ヒンヤリしながらも、そんな読後感だった。作者の絶筆と知るまでは。前者が作者本人に繋がり、悲しい完全作となったか。
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多彩な比喩や古典の引用が散りばめられていて、作者がいかに聡明で文学を愛しているかが伝わる美しい文章だった。きっと、世界中同じように苦しむ房思琪が大勢いるんだろう。無力で怠慢に生きている自分が情けなくなるけれど、この本で房思琪の苦痛の一片を共感することで、せめて自分の周りの人の心の...
多彩な比喩や古典の引用が散りばめられていて、作者がいかに聡明で文学を愛しているかが伝わる美しい文章だった。きっと、世界中同じように苦しむ房思琪が大勢いるんだろう。無力で怠慢に生きている自分が情けなくなるけれど、この本で房思琪の苦痛の一片を共感することで、せめて自分の周りの人の心の痛みには敏感でいようと思う。
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「初恋の楽園」というタイトルに惹かれて購入したけれど、読み始めて直ぐに期待を裏切られる。生々しく、痛々しく、読み進めるのが辛くなる。更に「実話を元にした小説である」と語った作者が出版の2ヶ月後に自殺するという悲劇に心が砕かれる。作者が「強姦犯を愛した女の子」の物語だと語るこの作品...
「初恋の楽園」というタイトルに惹かれて購入したけれど、読み始めて直ぐに期待を裏切られる。生々しく、痛々しく、読み進めるのが辛くなる。更に「実話を元にした小説である」と語った作者が出版の2ヶ月後に自殺するという悲劇に心が砕かれる。作者が「強姦犯を愛した女の子」の物語だと語るこの作品だけど普遍的な「愛」と呼べる描写を見い出すこともできない。正義や救済が行われることもなく物語は終わる。作者は追い討ちをかけるように「もし読み終わって、あなたがかすかな希望を感じられたら、それは読み違いだと思うので、もう一度読み返したほうがいいでしょう」と語っている。それより、生きて次の作品を読ませて欲しかった。
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ものすごく評価が高かったのと(書評での書かれ方が良かったというか)、実話で作者がその後自殺してしまったという本書を巡る情報にも触れて興味を持ち、読んでみた。 みずみずしい感性を持ち、頭脳明晰で美しい主人公の書く文章もまた、とてもみずみずしくて美しい。自分が俗物的で、教養がない粗...
ものすごく評価が高かったのと(書評での書かれ方が良かったというか)、実話で作者がその後自殺してしまったという本書を巡る情報にも触れて興味を持ち、読んでみた。 みずみずしい感性を持ち、頭脳明晰で美しい主人公の書く文章もまた、とてもみずみずしくて美しい。自分が俗物的で、教養がない粗野な人間であると感じてしまうほど、清廉で知的な空気が本書から流れて来る。それだけに、先生によって体と心を壊されてしまい、自殺に至ってしまったのならば・・言葉がない。 俄かには信じがたいのだけど、本当なのだろうか。どうも、良くある事というような描かれ方もしているが、そうなのだろうか。併せて描かれている姉のような存在の女性の話も、悲劇的だった。 書評がなければ読んでいなかっただろうが、若くしてとても才能のある作家の感性溢れる文章を読めたのはとても良かった。翻訳でなければきっともっと堪能できただろう。ただ、私の知らない世界でこういう事が起きているのか、と考えると目の前が暗くなり苦しくもなったが、やはり分からない世界の話を読んでいる、という感覚はずっとついてまわってしまった。
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読んでいると、だんだん気が沈んできて読めなくなってしまった。彼女が亡くなったのが本当に残念。本当に頭のいい人で、物書きの才能があるように思う。彼女をこうした男は絶対許せない。
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胸が張り裂けるような実話だが、何のすることもできない。 辛い出会いは分かちがたいものだし、この世界にはまだ文学があってよかったと思う。 アニメーション学科2年
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読んでて気分が悪くなった。「これは実話をもとにした小説である」と冒頭にあり、また作者が自死していることもあり、やるせない想いで押しつぶされそうになるから。とても苦しくなる。それぐらい読みごたえがある。 訳者あとがきもぜひ。 文学を愛している人の文章は難解。たくさん本を読んでつい...
読んでて気分が悪くなった。「これは実話をもとにした小説である」と冒頭にあり、また作者が自死していることもあり、やるせない想いで押しつぶされそうになるから。とても苦しくなる。それぐらい読みごたえがある。 訳者あとがきもぜひ。 文学を愛している人の文章は難解。たくさん本を読んでついていけるようになりたい。また違うタイミングで再読したら印象が変わりそうだ。
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どこまでも苦しく、苦しいと自覚することすら苦しい。 油の膜に覆われて息継ぎできない真っ暗な海の底のような世界、きらきら輝いていたものすべてが暗転するなんてことがこの世にあるなんてことを、これ以上だれにも見せたくない。娘たちにどう伝えればいいのだろう。伝えずに、甘いお菓子と輸入文...
どこまでも苦しく、苦しいと自覚することすら苦しい。 油の膜に覆われて息継ぎできない真っ暗な海の底のような世界、きらきら輝いていたものすべてが暗転するなんてことがこの世にあるなんてことを、これ以上だれにも見せたくない。娘たちにどう伝えればいいのだろう。伝えずに、甘いお菓子と輸入文房具だけの世界を見させてあげられればどんなにいいか。 しかし、今この瞬間にもそして過去には夥しいほどのスーチーがこの世界にはいる。声をあげられずに死んでしまった、あるいはどこかの時点で死んだまま今もどこかで生きているスーチーが。 搾取。レイプは魂の殺人と言われているように、性と尊厳を奪うのはいとも簡単であり、奪う側にとっては快楽だ。 奪う側である李国華や一維の内面にも踏み込んでいる。吐き気がするような内面を。著者は書いていてどれだけ苦痛だっただろうか。 作品中でスーチーは何度も「愛」について言及している。「わたしを愛している?」と李国華にたずねる。これは愛なんだと思い込むことで倒れずにいる。愛だと断定することもある。だけどわたしはそれを否定できない。絶対に「愛」なんて言わないでほしい。そう思うけど、スーチーがあまりに脆くて危うくて傷だらけで周りのすべてが彼女を締め出すから、だから、わたしは「愛」だというスーチーを否定できない。 性被害にあってあちら側に突き落とされたとき、社会はあまりに冷たい。声をあげれば「お前がわるい」「誘惑したんだろ?」「証拠は?」と石を投げられる。それよりもまず声をあげるまでもなく、被害者は自分が悪いと思おうとする。たとえそれが少女でも、社会の檻はすでに心の中にあって、大切な自分を消してしまう。スーチーを勇気づけるものも、後押しするものも、肯定するものも何もない。揺れ動く「愛」についての定義や文学への憧憬もそのような不安定な足元からきているのだと思う。 著者の文学的知識や教養が深すぎて読み落としてる含意や意図がかなりあったと思う。 あと語り手がまだらに移ってゆくので、今どの視点?ってなって慌てて読み返す部分もあった。欠点というわけではなくて、混沌とした意識とか、文学的個性として受け取った。 著者はその学歴からも分かるように、知能も高くて文学的教養も深い。相反するようだけど、だが成熟はしていないような気がした。映画の一場面のように光がいっぱいの風景の中で、学生時代の同級生への恋をそれを純真な愛としてあとがきへ書き残しているのを読んでそう感じた。少女のまま翼を折られてしまったのだと。
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塾の教師たちが集まって話してるところ嫌の濃縮還元ジュースって感じですごいな…クソオヤジが自分の年齢も美醜も棚に上げて女性を不細工だのオバサンだの呼ばわるの万国共通か?て最悪な気持ちになるな。。。
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台湾でベストセラーになったショッキングな長編。『実話を元にした』と著者が述べで、本国ではかなりの話題を浚ったようだ。 但し、そういう話題性を除いても、読み応えのある内容だった。
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