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ひみつのしつもん の商品レビュー

4.3

66件のお客様レビュー

  1. 5つ

    25

  2. 4つ

    19

  3. 3つ

    9

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2020/01/14

この人のエッセイは面白いに決まっている。「シュレディンガーのポスト」「ぬの力」など好きなのが何本もある。特に嫌いなのはない。 以前はついオチの面白さを求めて読んでいた気がするけれど、意外やオチがあまりない話も面白いと思った。そのぬるぬる感みたいなのが。

Posted byブクログ

2020/01/14

新聞の書評で見かけたので、読んでみた本。 妄想の世界に、引き摺り込んでくれる著者の感性は独特だけど、思い当たる点もいくつもあった。 とにかく、文章のリズム感も良くて、思わず吹き出してしまわずにいられない。 ものに気持ちがあると妄想したら、何気ないありきたりの毎日も飽きないだろ...

新聞の書評で見かけたので、読んでみた本。 妄想の世界に、引き摺り込んでくれる著者の感性は独特だけど、思い当たる点もいくつもあった。 とにかく、文章のリズム感も良くて、思わず吹き出してしまわずにいられない。 ものに気持ちがあると妄想したら、何気ないありきたりの毎日も飽きないだろうなと思う。 早速、「ねにもつタイプ」も読もうと借りて来た。

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2020/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 ここは宇宙だったのだ。自分はあの暗く冷たい何もない宇宙空間のただなかにぽつんと浮かんでいるのだ。夜、外を歩いているときにふとそのことを思い出すと、そのことをありありと感じて、首筋や背中のあたりがすうすうする。その首筋や背中のすぐ後ろから、もう暗黒の宇宙は広がっている。自分と宇宙が、いまじかに肌を接している。(p.52)  いつか『グズな人には理由がある、ただしグズは魂と直結しているのでグズを矯正すれば魂も死ぬ』と言うタイトルの本を書くのが夢だ。私の見るところ私のような人は日本にざっと500万人くらいはいるはずだから、もしかしたら100万部超えのベストセラーになるのではあるまいか。(p.88)  しかし成長は、いったんしてしまうとその後が存外つまらない。確実に人間として一歩一歩完成に近づいているはずなのに、なぜかその実感がわかない。そこで他の人をつかまえて「知ってた?台風ってだんだん大きくなるわけじゃないんだよ?」とか「完璧の“璧”のこと“壁”だと思ってない?」などと得意げにいって、人々の蒙を啓きつつ先に成長した者の優越感に浸ろうと試みる者の、驚くことにたいていの人は私より先にその事実を知っており、優越感どころか逆に見下されたりする。つまらない。(p.114)  誰にも、それを発した本人にすら見られることなく自己完結した呪詛は、言ってみれば純粋呪詛、観念としての呪詛だ。そして私が裏垢の存在を忘れることによって、それはアートとして完結したことになる。  ときどき、ネット空間のどこかに今も存在しているはずのあの裏垢のことを考える。誰にも聞かれることなく小部屋にいつまでも反響しつづける自分の言葉は、さぞや孤独だろうなと思う。(p.187)

Posted byブクログ

2020/01/02

岸本さんのエッセイはずっと読んできたが、だんだん「小説」になってきているように感じる。というか、もう小説なんじゃないか。以前の「あるある」「笑える」から(そういう部分も残っているけれど)、カフカや内田百閒の短編みたいな「連れていかれる」感じが強くする。「おばあさんのパン」「落ち葉...

岸本さんのエッセイはずっと読んできたが、だんだん「小説」になってきているように感じる。というか、もう小説なんじゃないか。以前の「あるある」「笑える」から(そういう部分も残っているけれど)、カフカや内田百閒の短編みたいな「連れていかれる」感じが強くする。「おばあさんのパン」「落ち葉掃き」「河童」「花火大会」「フィナーレ」と巻末に近づくにつれ、ほとんど「小説」になっている。 本文に何度も出てくるが、たぶん本当に岸本さんは外出の頻度が低い。普通エッセイって自分が行ったり見たりしたことや、出会った人のことをきっかけに感じることを書くのだけど、外出せず人にも会わないと、過去の記憶や想像したものが頭の中でミックスされ、ここに特異な才能が加わると小説になってしまうのではないか。たいていの人は「特異な才能」はないので、出かけたり人に会ったりしてネタを探すが、岸本さんは脳内が小宇宙なのでその必要はないわけ。 すごいな。 岸本さんが翻訳する小説もかなり風変わりな作品が多いけど、岸本さんにもそんな小説が書けるのではないかと思う。 ぜひ読んでみたい。 今回の名言 「ダークマター。 いったいどんなものなのだろう。何か、羊羹みたいなものが星と星とのあいだをみっしりと埋め尽くしているようなイメージだ。  夜の一人歩きは危険だ。ダークマター、と思ってしまった瞬間、私と肌を接している宇宙空間が真っ黒な羊羹に変わり、口から鼻から目から私の中になだれこんでくる。」(p52) 確かに「ダークマター」って「真っ黒な羊羹」という感じがする。しかも美味しくない。 「いつか『グズな人には理由がある、ただしグズは魂と直結しているのでグズを矯正すれば魂も死ぬ」というタイトルの本を書くのが夢だ。」(p88) 「何時間かの座談会の中でその者が唯一まともにしゃべったのは「いかに嫌いな人間をひとまとめにして頭の中で巨大な臼に放り込み、杵で何度も何度もついて真っ赤な血の餅に変えるか」についてだ。」(p121) 「そもそも聖人と凡人の境目はどこにあるのだろう。なんで聖人はえらくて凡人はだめなのか。聖人には聖人の受難や奇跡があるように、凡人にだって受難や奇跡がある。終電に乗り遅れるとか、ハイヒールが歩道の穴にはまるとか、コンビニのおつりがちょうど七七七円だったとか、結婚相手と誕生日が同じだったとか。そういう凡人たちをみんな列聖ではなく列凡して、凡人カレンダーに名前を載せるのじゃなぜいけないんだろうか。そしてもちろんみんな何らかの守護凡人になる。私は、そう、「たまに混じってるうんと辛いシシトウに当たらないようにする凡人」あたりを希望。」(p126) 「たまに混じってるうんと辛いシシトウに当たらない」凡人という発想が凡人じゃないな。

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2019/12/15

+++ 奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド、みたび開幕!ちくま好評連載エッセイ、いよいよ快調な第三弾! +++ こんな視点で物事を見ていたら、日々飽きないだろうなぁ、と思う。うらやましいくらいである。そしてときどき、うんうん、と同意したくなる。ここに引っかかるか、という些細...

+++ 奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド、みたび開幕!ちくま好評連載エッセイ、いよいよ快調な第三弾! +++ こんな視点で物事を見ていたら、日々飽きないだろうなぁ、と思う。うらやましいくらいである。そしてときどき、うんうん、と同意したくなる。ここに引っかかるか、という些細なところに立ち止まり、観察し、掘り下げてしまう著者の可笑しみがじわりじわりと伝わってきて、身体の外側からじわじわと内側へと浸透していくような気がする。少しずつ岸本化していきそうである。クラフト・エヴィング商會の装丁とイラストが、これまた絶妙で、つい見惚れてしまうのである。文句なく面白い一冊だった。

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2019/12/10

お久しぶりの岸本さんのエッセイ。今回も岸本ワールドは炸裂!どこまでがほんとうでどこからが妄想なのか…そのぐるぐるの合間を漂う独特の心地がなんとも言えない読後感を生む。しかもなんだかやっぱりというか、上品なのね。品格というのはこういうものに表れるのかもしれない。岸本さんエッセイは何...

お久しぶりの岸本さんのエッセイ。今回も岸本ワールドは炸裂!どこまでがほんとうでどこからが妄想なのか…そのぐるぐるの合間を漂う独特の心地がなんとも言えない読後感を生む。しかもなんだかやっぱりというか、上品なのね。品格というのはこういうものに表れるのかもしれない。岸本さんエッセイは何度でも読み返したくなるのだが、本作も同様。決して一気読みできる類のものでは無いけれど、ジワジワ来るのでぜひオススメしたいシリーズである。

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2019/12/05

翻訳家による、不思議+爆笑エッセイ。 運動不足の話、脳内の旅など、相変わらずの切れ味。ニヤリとしたり、呆れたり。 「分岐点」「カバディ性」「裏」「河童」が特に面白かった。 ソムリエが語るワイン蘊蓄。実は無色透明のワインが説明することでその味になるという妄想。もうこの人には敵...

翻訳家による、不思議+爆笑エッセイ。 運動不足の話、脳内の旅など、相変わらずの切れ味。ニヤリとしたり、呆れたり。 「分岐点」「カバディ性」「裏」「河童」が特に面白かった。 ソムリエが語るワイン蘊蓄。実は無色透明のワインが説明することでその味になるという妄想。もうこの人には敵わない。

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2019/12/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まあ全然関係ないんですけれどね、わたくしこの本を、アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』の直後に読み始めたのですが、岸本さんもなんだか正体のわからない敵とたびたび戦っていて、やっぱり生きていくというのはなんらかの敵とたたかうということなのだなと、おもったりおもわなかったりしました。不穏に愉快。

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2019/11/15

脳内変換と妄想への移行。 目の端に写っているまたは写っていないものを捉えている。 「クスクス」ではなく「ニヒっ」。 そして驚くばかりの共感。

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2019/11/13

前作、前々作と比べると、爆発力は低いように感じたが、本作はエピソードそれぞれの粒が揃っている印象。 何ともない日常でこれだけ突拍子もないことをつらうら考えられるのは、やはり稀有な才能なんだろうな。子供時代の話もいい。そういえば自分も子供の頃は、こんなヘンな感覚を持ったことがあっ...

前作、前々作と比べると、爆発力は低いように感じたが、本作はエピソードそれぞれの粒が揃っている印象。 何ともない日常でこれだけ突拍子もないことをつらうら考えられるのは、やはり稀有な才能なんだろうな。子供時代の話もいい。そういえば自分も子供の頃は、こんなヘンな感覚を持ったことがあったような…と思わせてくれる。 著者が年を経た分、世界はさらにさらに濃く、混沌としてきているようだ。次回作も楽しみに待ちたい。

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