罪の轍 の商品レビュー
戦後東京オリンピック直前に起きた、悲しき青年の犯罪録。 礼文島に生まれた宇野寛治は、雇われ昆布漁師から逃げ出し、東京を目指す。 学生時代から手癖の悪かった寛治は、東京でも窃盗を重ねつつ、ストリップ嬢の里子と情事を重ね、犯罪の深みにはまっていく。 寛治を追いかける捜査一課の若...
戦後東京オリンピック直前に起きた、悲しき青年の犯罪録。 礼文島に生まれた宇野寛治は、雇われ昆布漁師から逃げ出し、東京を目指す。 学生時代から手癖の悪かった寛治は、東京でも窃盗を重ねつつ、ストリップ嬢の里子と情事を重ね、犯罪の深みにはまっていく。 寛治を追いかける捜査一課の若手刑事・落合は、寛治が起こしたとされる吉夫ちゃん誘拐事件と殺人事件の捜査に当たり、やがて寛治の闇に魅了されていく。 悪いのは寛治なのか、育った境遇なのか、繰り返される悲劇の幕が上がる。 連載の為か間延び感が。 もう少しドラマティックを期待してしまった。
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既読感があったので、著者の同じ時期を扱った「オリンピックの身代金」をチェックしてみると警視庁刑事部捜査一課第五係のメンツが揃っているではないか、著者はこのオリンピック前後をシリーズとしているのだろうか、全ての作を読んでいる作家ではないので分からないが、これならオリンピック後の作が...
既読感があったので、著者の同じ時期を扱った「オリンピックの身代金」をチェックしてみると警視庁刑事部捜査一課第五係のメンツが揃っているではないか、著者はこのオリンピック前後をシリーズとしているのだろうか、全ての作を読んでいる作家ではないので分からないが、これならオリンピック後の作があっても良さそうだ。物語の流れから犯人宇野寛治がまさか殺しをやるとは予想しなかったが、多重人格の話に持っていくのかと思ったらそこまでには至らなかった。しかし悪質なマスコミ、左曲がりの弁護士、親による児童虐待、警察の縄張主義は現在も変わってない。
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奥田英朗さんの作品は、軽やかなタッチのものと重厚なタイプとしっかり分かれるけれど、これは完全に後者。昭和の東京オリンピック前年を舞台にした犯罪小説で、時代的には「オリンピックの身代金」と同じ。礼文島から東京にやって来た20才の宇野は、昔からやや発達に遅れがあるのか記憶に問題がある...
奥田英朗さんの作品は、軽やかなタッチのものと重厚なタイプとしっかり分かれるけれど、これは完全に後者。昭和の東京オリンピック前年を舞台にした犯罪小説で、時代的には「オリンピックの身代金」と同じ。礼文島から東京にやって来た20才の宇野は、昔からやや発達に遅れがあるのか記憶に問題があるのか、少々足りない大人として馬鹿にされながら生きてきた。彼が起こす事件と、必死で追う警察の様子が心情豊かに描かれていく。 宇野やその回りの人物、刑事たち一人一人のキャラクター、どれもくっきりと頭のなかにイメージが作れるような描写は映像化できそう。取り調べを受けながら、「こんなに人が話を聞いてくれるなんて」と浮き足立つ宇野の様子は、犯罪者でありながらもどこか哀しい。 今の捜査だったらあり得ないようなこととか、高度経済成長に浮かれる東京とか、反体制の人々など、この小説はこの時代あってこそ。読みごたえありました。
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オリンピックを翌年に控えた昭和38年の東京・浅草で6歳の男児が誘拐された。捜査本部の若手刑事・落合昌夫は子供たちから聞いた北国訛りのある若い男に引っ掛かりを覚えその男を追い続ける。昌夫の執念と逃げる男の哀しい生い立ち。 オリンピックに沸く東京の時代を映す物語は、当時の犯罪事情や山...
オリンピックを翌年に控えた昭和38年の東京・浅草で6歳の男児が誘拐された。捜査本部の若手刑事・落合昌夫は子供たちから聞いた北国訛りのある若い男に引っ掛かりを覚えその男を追い続ける。昌夫の執念と逃げる男の哀しい生い立ち。 オリンピックに沸く東京の時代を映す物語は、当時の犯罪事情や山谷の労働者問題、在日朝鮮人の苦労などを丁寧に描きながら、刑事たちの生々しいやり取りがスピード感を失わず、読み手をグイグイ引っ張っていく。 残念なのは、最初に出てきた時計商殺人事件はいらなかったんじゃないかな~ということと、この物語が同年に実際に起こった「吉展ちゃん誘拐殺人事件」をトレースし過ぎていること。 小説が実際にあった事件を下敷きにすることは多々あるけど、男児が吉夫という名であること、犯人に身代金を奪われたこと、男児の靴がオート三輪に置かれたこと、警察が身代金の紙幣番号を控え忘れたこと、テレビによる警視総監の呼びかけと脅迫の音声テープの公開、初の逆探知と報道協定・・・などなど、一致するところが多すぎて、何故ここまで似せる必要があるのか、何故今、また吉展事件なのかと気になって仕方がない。 塩田さんの「罪の声」のように未解決事件に自分なりの解釈を加えるというのなら理解できるんだけどね~。 各方面で絶賛のこの作品だけど、事実をここまで盛り込んだらそりゃあリアリティも出るよな~という思うのはひねくれすぎ?
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幼少の頃、継父から虐待。当たりや。脳の記憶障害。 空巣で捕まり。少年院。出所後、母の故郷礼文島で漁師 空巣を始めた。悪い男に、ばらすと脅された。 男が放火に見せかけその間に網元に家の金庫から金品を盗めとそそのかされる。船で逃げる。燃料がない。盗品と金も入れ替えされていた、騙されたのがわかった。泳いで本土に到着。空巣をしながら東京へ。 事件にまきこまれながら、逃げる。 子供の誘拐を思いつく。殺してしまった。ストリッパーの彼女も殺してしない逃げる。逮捕されるが自白しない。 ストリッパー殺しを自白。他の場所に移動中、トイレの窓から逃げた。継父が札幌で生きているのを弁護士が教えた 殺しに行く。青函連絡船で刑事に逮捕。
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漁師としては半人前の宇野寛治、窃盗を繰り返し、礼文島にいられなくて東京に出てきても窃盗を繰り返す。宇野が絡んでいるのか、起きるのは元時計商業の殺害事件と、そして誘拐事件・・・ 長い。読んでも読んでも終わらない。 そして、587頁もある本の半分くらい読み進むと起きる誘拐事件。な...
漁師としては半人前の宇野寛治、窃盗を繰り返し、礼文島にいられなくて東京に出てきても窃盗を繰り返す。宇野が絡んでいるのか、起きるのは元時計商業の殺害事件と、そして誘拐事件・・・ 長い。読んでも読んでも終わらない。 そして、587頁もある本の半分くらい読み進むと起きる誘拐事件。なんか聞いたことのある話だな、吉展ちゃん事件のことじゃないかと思い至る。 完全なるオリジナルの物語でこれだけ重厚長大な話を描けるのなら凄いのだけれど、現実に起こった事件を翻案しているとなると、話は別。読んでいてもどうせ結末はああなるんでしょ?と予想してしまうわけで。 知ってる話なのに何度聴いても楽しめる落語のようなエンターテイメントもあるのだから、元ネタが分かっても純粋に楽しめることもあるのだろうけれど、ひたすら長くて面白くないわけじゃないのだけれど、正直疲れてしまった。
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実際に発生した男児誘拐事件を題材とした犯罪ミステリーであるが、単に事件をなぞるだけでなく深みのあるドラマが展開されている。事件を追う刑事達のドラマと孤独な容疑者のドラマが錯綜して展開していく。長編にも関わらず、飽きることなく一気に読了することが出来た。
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面白かった。なかなかのページ数だけど一気読み。同作者のオリンピックの身代金を思い出した。ほんと帯の通りにサスペンスであり、警察小説でもある。この2020年目前のこの時季にちょうどいい本。 山谷 礼文島 当たり屋 悪さっていうのは繋がってるんだ
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鬼才・奥田英朗が、一世一代のチャレンジをやってのけた。凄みのある一冊を世に出した。 戦後最大の誘拐報道で知られる吉展ちゃん事件をモデルに、東京オリンピック前年の昭和38年の世相を背景とした重量級の社会派ミステリを仕上げたのだ。この作家独自の語り口の巧さは読者を物語の世界へぐ...
鬼才・奥田英朗が、一世一代のチャレンジをやってのけた。凄みのある一冊を世に出した。 戦後最大の誘拐報道で知られる吉展ちゃん事件をモデルに、東京オリンピック前年の昭和38年の世相を背景とした重量級の社会派ミステリを仕上げたのだ。この作家独自の語り口の巧さは読者を物語の世界へぐいぐいと引きずり込む。 作家によって練り上げられた動機と現実の犯人の動機は似て異なるように思われる。現実以上に、緻密に組み立てられたのであろう追跡と逃走のシナリオ。新たに想像され、かつ創造された犯人像の重厚さ。 関係する者たちの環境を敢えて史実とは変えつつ、創作ならではの明快さで時代背景や群像の生活を活写しつつ、その頃の街や地方の匂い、人間たちの猥雑な汗と体液の匂いまで感じさせる緻密な描写を積み上げ、ここまで徹底的に完成させた決着までの隘路。 挑んだ事件も素晴らしいが、出来も素晴らしい。誘拐事件という限られた枠をコアにしながら、犯人の生まれや過去を重視しつつ、それを取り調べの奇妙な時間と絡ませながら、事件以上に犯人や刑事の個性への好奇心が刺激される。脅威的な個性のぶつかり合い。真相に至るヒントの数々。捜査上でぶつかる困難と知恵による解決、と些末なところではミステリ要素も多く、刑事たちと犯人側の距離が徐々に狭まってゆく過程は、非常に味わい深い。 ぼくは昭和31年の早生まれだったから、誘拐された被害児童の相似形である。両親が新聞片手に大騒ぎしていたのも今ならわかる気がする。当時の悲酸な結末や暗い世相の記憶も失ってはいない。なのでネットで事件の情報を集めつつ、小説と比較してみたりもしたのだが、小説はきっと事実とは似て非なるもののようだ。少なくともストーリーは作者の脳内から生まれたものだ。 しかし犯人の生地は脳内とばかりは言えまい。作中に出てくる「当たり屋」の事件も当時子どもであったぼくを震撼させたものである。鰊が来なくなった北の海や、入植した礼文島船泊地区の錆びれ具合。未だ観光で訪れるにはおよそ遠すぎる感のある北海道などなど、今より国民がずっと質素で貧しくそれでいて働き、遊び、活気に溢れる東京を形成していた時代。 主人公の育つ礼文島はもちろん、誘拐事件に関連する東京・荒川区や台東区、戦後の新宿や熱海、稚内など、舞台となる土地土地とその時代の描写への興味も尽きず、オリンピックを迎える現在とあの五輪時代との間に、なんとなく人間という愚かな生物次元での周期性を感じつつ、巻を閉じた。間違いなく、今年のミステリ界を席巻する一作になるだろう。奥田英朗生涯の代表作になることはもう間違いあるまい。
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最高。内容もさることながら、奥田英朗の本は文章の読みやすさでぐんぐん読まされてしまう。最悪・邪魔・無理等読んだ後の「むり~」「さいあく~」感はなんで最後まで読んじゃったんだろう…レベルなのに読まされてしまう。そこに加えこの本は読んで良かったと思える満足感があります。罪の声と同様、実際の事件がモチーフなのかな?
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