階戸瑠李写真集 BUTTER の商品レビュー

階戸瑠李,笠井爾示

2020/09/02

「色気とは 恩讐の先に 残るもの」

2020年8月28日に逝去されました芸能事務所G-STAR.PRO所属の女優、階戸瑠李さんの通算2作目となる写真集です。出版元は玄光社、撮影は笠井爾示さんです。

著名人のショッキングな訃報が相次ぐ本年。いやしかし、まさか彼女が逝ってしまうだなんて…。雑草も雑草、けもの道を懸命に往き遂に手に掛かったサクセスをこんな形で手放す事になろうとは。「無念」、まさに一語に尽きます。

本作はまことに不本意ながら彼女の生涯最後となってしまった写真集です。グラビア野郎の習性として私含めバストトップの露出ばかりを語ってしまうのですが、それ以外の点でも俗っぽいグラビア写真集とは少々様相が異なった作品となっています。
図鑑と見紛うハードカバーにランドスケープ型の製本は本屋さんが棚での扱いに頭を悩ましそうなものですが、異質なのは冊子の佇まいだけにあらず。生活感の漂うロケーションに瞳の反射すら論われる時代にワザワザ鏡に写り込むカメラマン、そしてボブ・ミディアム・ロングと作品内で移ろうヘアスタイル。
風光明媚な観光地へパッと行ってパッと撮ったのでは無い、長い時間を掛けて、ずっと一緒にいて、何千何万何十万とカットを重ねて。相当な回数カメラと顔を突き合わせている事が言葉無くとも伝わってくる。
自然と自分を良く見せる為に演じる部分は少なくなって。…否、「削ぎ落とされて」と表した方が適切か。目線もくれているしポーズも取っているので間違い無くカメラは意識しているにも関わらずシャッターを身構える事無く迎え入れ、感情表現がぼんやりだからこそこれが奥深くに潜めていた彼女自身の姿なのだ、と感じ取れる。

装飾を全て外した彼女。その姿をどう書き表すべきかを考えた時、やはり私はオタクなものでして、どうしてもかつての彼女に思いを馳せて物差しにせずにはいられませんでした。

私は彼女がデビューした当時は今ほど熱心にグラビアを追ってはいなかったのですが、にも関わらず彼女の事は強く印象に残っていて、それは時折心細い表情を漏らしていたのが一番の理由で、「これは長くは続かないだろうな」と直感で思ったものです。
現にしばらくして一度グラビアから離れているのですが、程なくして女優への道を模索する際に復帰。以後の吹っ切れた様子には短期間での変化がありありと浮かんでいました。
何が彼女を変えたのか、今となっては確かめる術も残されていないのですが、少なくともか弱き女性がフェロモンむんむんお姉さんと称されるまでになった間にはグラビア表現が間違いなくあって、そこで清濁併せ呑み・求められる肖像と正面から向き合った結果が彼女の目を力強く変え、女優へと花開かせたのでは無いか…と。

生まれ変わった彼女を表する為に…。タワマンの一室で窓開け放ち、小洒落たソファに片肘突いたこれ以上無い一枚を。ラフに前髪かき分けて、陽光でトップレスが明暗色濃く描かれて、ふっと目を外した蠱惑の仕草。恥を忍んで書かせて頂ければ、いつ何度観たって「熱く」なってしまいます。

階戸瑠李さんのご冥福を、心よりお祈り致します。