神戸・続神戸 の商品レビュー
劇団太陽族「神戸世界ホテル」の原作だということで読んだ。俳人西東三鬼が書いたノンフィクション自伝小説だ。彼自身も治安維持法で京都で収監されていたそうだが、そんな暗さや怯えはなく、脳天気でありながらもその密度は濃く、戦中戦後を生きている。とっても不思議な人だ。
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古い写真を見ながら読むと当時の風景が浮かび上がります。 戦時中でも人はたくましくそれぞれの人生を生きていたんだと。
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高野秀行さん絶賛の本書。 なるほど高野さんと同じ匂いのするユーモアが感じられて読んでいて楽しい。 そのユーモアはよりお洒落な感じで、考え方も変わっていて面白い。 くすっと笑える軽快な文体ながら、第二次大戦真っ只中のノンフィクションで、戦時中の日本人の日常と国際都市だった神戸の不思...
高野秀行さん絶賛の本書。 なるほど高野さんと同じ匂いのするユーモアが感じられて読んでいて楽しい。 そのユーモアはよりお洒落な感じで、考え方も変わっていて面白い。 くすっと笑える軽快な文体ながら、第二次大戦真っ只中のノンフィクションで、戦時中の日本人の日常と国際都市だった神戸の不思議さと、いろいろ考えさせられる作品。特に「続神戸」は戦争と戦後のどろりとしたものが急に迫ってきてハッとさせられる箇所が多かった。 この頃のしたたかな日本人といまの日本人、なんだか全く別の国の人間な気がしてしまうな。
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これはよかった。生きるというのは参ってしまうようなことの連続で、戦時下にあってはそれも如何許りならんやという感じですが、登場人物たちは眉根を寄せながらもじつに自由に人間らしく生きてみせるのですね、その日々を。 ユーモアとかペーソスとかジャジーとか、そういう分かるようで分からないカ...
これはよかった。生きるというのは参ってしまうようなことの連続で、戦時下にあってはそれも如何許りならんやという感じですが、登場人物たちは眉根を寄せながらもじつに自由に人間らしく生きてみせるのですね、その日々を。 ユーモアとかペーソスとかジャジーとか、そういう分かるようで分からないカタカナ語が、カタカナのまましっくりとはまる本です。そして、人間って哀しくて可笑しくて阿呆みたいで他愛ない、つまり、愛すべきものなんだと思えます。
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戦時下の神戸を描いたエッセイのような私小説のような一冊です。 空襲や物資の不足があり悲惨な状況ではあるのでしょうが、登場人物はみなどこかしたたかで自分が大切にするものに従って生きており、哀れみを以て接するのも何か違うなと思います。当時の人々には当時の人々の人生があったのでしょう。...
戦時下の神戸を描いたエッセイのような私小説のような一冊です。 空襲や物資の不足があり悲惨な状況ではあるのでしょうが、登場人物はみなどこかしたたかで自分が大切にするものに従って生きており、哀れみを以て接するのも何か違うなと思います。当時の人々には当時の人々の人生があったのでしょう。ユーモアを持って飄々と暮らす西東三鬼や周囲の人々の人間らしさからか、遠い昔のことであるのが嘘のように思え、背表紙に「魔術のような二篇」と書かれているのもわかる気がしました。
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戦中戦後の神戸の猥雑な空気や人間模様が、淡々とした距離感と味わいで描かれ素晴らしい。私にとってこんな文章が書きたいと思うお手本のよう。場所柄時代柄の各国の人の交錯が梨木香歩の「村田エフェンデイ滞土録」を思わせる。一人一人の無名の人の持つ大きなドラマをさらりと書くセンスと腕前に感嘆...
戦中戦後の神戸の猥雑な空気や人間模様が、淡々とした距離感と味わいで描かれ素晴らしい。私にとってこんな文章が書きたいと思うお手本のよう。場所柄時代柄の各国の人の交錯が梨木香歩の「村田エフェンデイ滞土録」を思わせる。一人一人の無名の人の持つ大きなドラマをさらりと書くセンスと腕前に感嘆。神戸の民衆史としても興味深い。
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戦中、戦後を強かに生きた人々の喜怒哀楽が描かれているが、ちょっと不思議な読後感がある。コスモポリタンや自由を愛した人々というと何かが違う。国家の庇護を受けないが、その代わり国家の命令にも従わない。望むと望まざるとに関わらずそういう境涯へと至った人々が力強く生きていく様を、ほとんど...
戦中、戦後を強かに生きた人々の喜怒哀楽が描かれているが、ちょっと不思議な読後感がある。コスモポリタンや自由を愛した人々というと何かが違う。国家の庇護を受けないが、その代わり国家の命令にも従わない。望むと望まざるとに関わらずそういう境涯へと至った人々が力強く生きていく様を、ほとんど心理描写を交えずに断片的に投げ出すように描いていく。この愛すべき人々との交わりに何かしらの感興や心の動きがあって俳人はこの散文を書いたのだか、生涯を損耗させるほど打ち込んだ俳句ではどうだったのか。俳句という器では任が重かったのか。虚子の花鳥風月では描けなかった経験だと思う。ただこれに催された感情の動きを何とか俳句という形式で表現したいという想いにも駆られて三鬼は新たな道の模索を始めたのではないか。単に戦後の解放ということだけではないと思う。また新興俳句の単なる復活ではない道を模索するのは本書で描かれた経験があったからではないか。桑原武夫の第二芸術論に対する反発もあったのだろうか。俳句を断念した静塔を説得する件は、静塔が軍隊において味わったその人生経験を基として新たな俳句の創造を共にしたいとの想いに沿ったものだったのだはないか。三鬼の戦後の句を読んでみたくなる書き物である。
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小説かと思ったらエッセイ!これ全部事実なのか。 なんと情緒溢れる作品だろう。 舞台が神戸ということもあり、あのあたりでのエピソードかと思うと感慨深くなります。 確かに古い文体なんですが決して古臭さは感じないキレのある文章。 軽い口当たりで書いてるけど決して軟弱ではない文章。 これ...
小説かと思ったらエッセイ!これ全部事実なのか。 なんと情緒溢れる作品だろう。 舞台が神戸ということもあり、あのあたりでのエピソードかと思うと感慨深くなります。 確かに古い文体なんですが決して古臭さは感じないキレのある文章。 軽い口当たりで書いてるけど決して軟弱ではない文章。 これは隠れた名作ではないでしょうか。
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太平洋戦時下の神戸を舞台にした奇書。 太平洋戦争さ中、神戸トーアロードにある朱色に塗られたホテル。そこには様々な国籍の人々と、娼婦でもあるバーのマダムたちが下宿人として住んでいた。東京を逃れこのホテルに移り住んだ俳人・西東三鬼が描く、ちょっと不思議な人間模様。 西東三鬼は新興...
太平洋戦時下の神戸を舞台にした奇書。 太平洋戦争さ中、神戸トーアロードにある朱色に塗られたホテル。そこには様々な国籍の人々と、娼婦でもあるバーのマダムたちが下宿人として住んでいた。東京を逃れこのホテルに移り住んだ俳人・西東三鬼が描く、ちょっと不思議な人間模様。 西東三鬼は新興俳句運動の中心人物の一人として、戦意高揚の俳句作成や使う季語すら国から推奨される時代に、厭戦や反戦の俳句を次々と掲載したことから、治安維持法に基づく言論弾圧事件(京大俳句事件)に連座、検挙された人。 そんな人物が描く戦中の神戸のホテルの住民は「エジプトのホラ男爵・マジット・エルバ氏」「通俗小説のヒロインの様な娼婦・波子」「比類なき掃除好きの台湾人・基隆」「悲運の美人看護婦・葉子」「お大師様を信仰する広東人・王」など多彩で、どこか”魔都”と呼ばれた頃の上海の様で、ひたすらに妖しく、どこか奇妙な明るさがあり、また自由でコスモポリタンな雰囲気があります。 解説は森見登美彦さんで『千一夜物語』を引き合いに出していますが、確かにそんな感じもあります。 この本の中で三鬼は「頑強に事実だけを羅列していた」と書いています。あの戦争のさなかにこのような異世界があった事も一つの驚きです。古めかしいと言って良い文体だと思いますが、佳い意味で味があります。 「続神戸」は名の如く「神戸」の続編。 戦後まもなく、アメリカ統治下の神戸と俳句の世界に戻ろうとする自身の姿が描かれます。 ”妖しさ”が薄れた分、魅力は減ったかな。
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すごい本、とても60年以上前に書かれたとは思えない。楽しめます。編集部の断り書きは無用。史実って何だろう?史実と異なる記述 - 問題ない。トアロードMAXIMの斜向かいに知り合いのショップがあり、よく手伝いに行きました。懐かしい大人の休日。『冬の桃』のDVD借りてしまいました。
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