何様 の商品レビュー
『何者』のいわゆるスピンオフ小説。前作の登場人物では幸太郎しか覚えていなかった。 都合よく自分に憧れてくれるクラスの女子は男子高校生らしい妄想といえるが、社会人新人らしい葛藤や兄弟間の相克、自分の仕事の必要性などをふりかえってみたくなる短編集。何気ない日常描写から、いきなり差し込...
『何者』のいわゆるスピンオフ小説。前作の登場人物では幸太郎しか覚えていなかった。 都合よく自分に憧れてくれるクラスの女子は男子高校生らしい妄想といえるが、社会人新人らしい葛藤や兄弟間の相克、自分の仕事の必要性などをふりかえってみたくなる短編集。何気ない日常描写から、いきなり差し込まれた内面の叫びが鋭い。
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短編集なので、刺さる話があったりなかったり。以下刺さった話の感想。 社会人になって思うけど、確かに自分含め、社会人として働いているお前ら何様だって思うときがある。 一丁前に大人になったのに、大人になった気分がしない。でも外面は大人でなくてはならない。そんな葛藤を抱えた人たち...
短編集なので、刺さる話があったりなかったり。以下刺さった話の感想。 社会人になって思うけど、確かに自分含め、社会人として働いているお前ら何様だって思うときがある。 一丁前に大人になったのに、大人になった気分がしない。でも外面は大人でなくてはならない。そんな葛藤を抱えた人たちの物語。だからこそ、「何様」という言葉が突き刺さる。就活のとき見た面接官たちは、あるいは今働いている先輩は、同じ年頃の両親は、それらしい言葉を使い、大人らしく振る舞っている(ように見える)。でも自分はそうなりきれていない。そんな風に世界を見てしまうと、大人らしく振る舞っているように見える人達も、あるいは自分も、一体「何様」のつもりなんだと思う。そしてその葛藤に悩み苦しむ。 でも実際は、「きっかけとか覚悟とかって、多分あとからついてくる」し、「当事者のふり」をして「本気の一秒」を感じて、適応する。あるいはアクセルとブレーキが下手な人は、「むしゃくしゃしてやっ」てしまうこともある。そんな不器用なことをしながら、「何様」になっていくことが、社会に出て必要、というか避けられないことなのではないか。(それが若林の言う「適応」なのだろう) 「何者」かにならざるを得なかった我々は、今度は「何様」にならなくてはならないのだろう。
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読書感想文、最後に書いたのが2018年の1月というのに少々驚いた。もちろんそれから一冊も本を読んでいなかった訳ではないが、わざわざ感想文を書くことをしていなかった。己の怠惰が滲み出ている。 いま同時並行で読んでいる『インプット大全』に、インプットを定着させるにはアウトプットが大事と書いてあったので、久しぶりに読書感想文を書いてみようと思い立った訳である。誰に見せる訳でもないが、インプットのため、そして後から自分で振り返ると面白いのではないかと思っている。 さて、主題の『何様』だが、『何者』の登場人物たちのスピンオフ的な作品かと思いきや、『何者』には登場していなかった人物の視点からの物語が殆どだった上、『何者』の主人公は出てこなかった。『何者』と比べてどちらが面白かったかと聞かれたら『何者』の方が面白かったという回答になってしまう。それは、『何者』が一人の主人公の視点で全てのストーリーが進んでいくのに対し、『何様』は複数人の主人公による短編集の体裁なので、「全体の流れ」のような部分でどうしても劣る部分があるからかと思う。 また、『何者』の主人公が自分と似たところがあるなあと感情移入しやすかったのに対し、『何様』の方では主人公に感情移入するのではなく物語を俯瞰する第三者的な視点に立っていたことも大きいだろう。 心に残ったストーリーと言われると、最初の光太郎のやつと不倫のやつの二つになる。光太郎の方は『何者』の方で明かされていなかった背景部分のまさにスピンオフ的な物語で、単純に光太郎という人物像が予め自分の中にあったことが大きい。不倫の方は主人公の名前も忘れたが、解説で若林が書いていたから心に残っている。自分はあそこまで完璧であろうとしていた訳ではないが、「よき兄」として振る舞おうとしていたのは確かであり、今でも喫煙を母親に言っていないのはまさにそれが動機の一つであろう。むしゃくしゃしてやった、と言ってみたいが、大抵そのあとに後悔することがわかっているので何もできない、という小さな人間である。後先考えずにやってみる、ということをしてみたいものだ。
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「何者」に対する「何様」。表紙も、「何者」がスーツを着た学生なのに対し、こちらは面接官。 光太郎の初恋の相手、なんて芯が強くてかっこいいんだろう! 理香と隆良、理香は自分が二人組をつくれないことを自覚していて、そこから抜け出そうとしていて、でも相手を下に見ないとやっていけなくて…。「かっこいいでしょ!キリッ」と心から思ってやっていたんだと思っていたから意外だった。隆良は、今でも本気でかっこいいと思っていそう。(いや、スエットで出かけるようになったから変わったか?) そうして始まった二人だけど、理香は今は隆良が大切になっていそう。ただそばにいてくれるというだけではなく。 仕事に必要な能力は、仕事をしてみないと分からない。単純に合う・合わないを超えて、お互いのよさに目を向けてうまく力を発揮できるようにしていかないといけない。適材適所とはよく言ったもの。 ほんの一秒でも、誠実のうちに入れてあげてよ〜。
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コロラド州の大学と姉妹校で 会おうと思えばいつでも会える距離に散らばることを嘆き合った友の姿が 「紅白にもコメンタリーが取り入れられたときには、ついにメタとか俯瞰の視点の流行がここまできたかと思ったけどね」 人間の生活に全く根差していない部分にばかり気を使っているインテリアを 十...
コロラド州の大学と姉妹校で 会おうと思えばいつでも会える距離に散らばることを嘆き合った友の姿が 「紅白にもコメンタリーが取り入れられたときには、ついにメタとか俯瞰の視点の流行がここまできたかと思ったけどね」 人間の生活に全く根差していない部分にばかり気を使っているインテリアを 十一月四日生まれってつまりさ、親が十二月二十四日とかにやってんだよな。十月十日、という言葉は、当時の私でも勿論知っていた。けれど、逆算、という行為とその言葉が結びついたのは、その時が初めてだった。 二つのパスワードの間を行き来する往復運動の中に たぶんその年の二月十一日くらいだと思うよ 亮博あきひろ ピボット グリーンカレーのオムライス ゆい結唯 いぬい乾 つねり抓り 若林正恭 然し、若い頃の自意識過剰や葛藤やもがきを思い出すぐらいなら、ジムに行って筋トレをするか、ゴルフの打ちっ放しに行って心地よい肉体の疲れと共に眠りにつきたいというのが正直な気持ちだ。それぐらい、若い時のあれらは厄介なのだ。 頂いた"仕事"を全うするのは最高だ。なぜなら、所属欲求が満たされて気持ち良いからだ。 そう''社会の、会社の、利潤追求の激しい回転''で削られた末に、成長ではなく適者生存の法則に沿って変えただけなのである。何故、成長とは呼びたくないのかというと、適応して擬態を変えていく中で「青いもの」を失った痛みと恨みが今もまだ心の中に沈殿しているからなのだ。近頃色々な事を「そういうもんだ」という言葉で済ます事が増えた。誤解や陰口、不条理や裏切り。そういったものを「そういうもんだ」という言葉で済ます。勿論省エネの為でもあるが、もう一つ理由がある。それは、「本気の一秒」を守る為である。
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「何者」に出てきたキャラ達の過去や未来のストーリー。 私は「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」が一番心に響きました。共感、と言うかなんだかショックで。 正直この話を読み終わった後辛かったです。自分の心情とぴったりきたのかもしれません。 自分は正美ほど優等生ではないのです...
「何者」に出てきたキャラ達の過去や未来のストーリー。 私は「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」が一番心に響きました。共感、と言うかなんだかショックで。 正直この話を読み終わった後辛かったです。自分の心情とぴったりきたのかもしれません。 自分は正美ほど優等生ではないのですが、それでもいつもきちんと、道徳を守って生きてきた自分より、ちょっと悪かったり、思うままに反抗してきた人の方が評価されると、自分のしてきた事の意味が心底分からなくなって。 「むしゃくしゃしてやった」と言いたいです。 朝井リョウの物語にはいつも心をえぐられ、どこかが引っかかり、涙が出ます。 答えを出してくれている訳ではないと分かっているので、そのままやはりモヤモヤするのです。 そこにハマってしまいます。
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最後の方にかけて1週間くらいかかっちゃって前半あんまり覚えてないけど、若者の葛藤が事細かに書かれているものだった。 それぞれのストーリーで共感する部分やこの人の人格が構成されたものが反映する所、思い悩む所、リアルで面白かった。
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短編集でサクサク読みやすくて落ちのある話も多かった。 言葉の紡ぎ方がとても綺麗だった。 作者の性はどちらなんだろうか、と思った。
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人って、頭の中で考えてることって基本こんな感じなのかなーって思った 毎日、楽しい楽しい、楽しみ楽しみ、なんて生きている人って少ないんじゃないかなあ でもわたしは本やドラマがきっかけで明るい気持ちや楽しい気持ちになるのが好きだな これはなんか、現実突きつけられる感じだった
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「何者」が好きだったので、番外編として読んでみた。 人がそれぞれ絡みあっていて世界を模っている。個人的にはもうちょっと意外性が欲しかったです。楽しく読めて良かったです。
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