車軸 の商品レビュー
気鋭の歌人で台湾在住の実業家が林真理子に勧められて書いたという小説第一作目。何かで勧められていたのを頼りに大して期待せず読んでみたんだけど、期待をだいぶ超えていい小説だった。 そこそこ金もある地方議員の娘・真奈美、金がある家で生まれ育ったゲイの潤、二人が出会ってその後も通うホスト...
気鋭の歌人で台湾在住の実業家が林真理子に勧められて書いたという小説第一作目。何かで勧められていたのを頼りに大して期待せず読んでみたんだけど、期待をだいぶ超えていい小説だった。 そこそこ金もある地方議員の娘・真奈美、金がある家で生まれ育ったゲイの潤、二人が出会ってその後も通うホストクラブのホスト・聖也。かけ離れているようで似ている潤に対して真奈美は両輪のそれぞれのような気持ちをもつようになる。そして二人を結ぶ車軸が聖也だとして3人でつながり合おうとしたりするのだけど、それはなかなかうまくいかない。 つながり合おうとウェスティンやパーク・ハイアットに行ったりする中盤以降の疾走するような感じがこの小説の骨頂であり、美しさといってもいいと思う。真奈美と潤のそれぞれ別個の焦れるような気持ち。それを知ってか知らずかのように描かれる聖也の言動。すべてわかっているようでいながら、岩手の実家へ帰って以降みずから堕ちていく(本人にとっては昇華なのだろうけど)真奈美の振る舞い。事が次々と起きるし、タフそうな潤が耐えられなくなっているのに、真奈美のふてぶてしさが何とも立派。 描かれているのは、表向き恵まれている人たちがもつ寂寥感や空虚感といったものに取り巻かれた生きがいの貧困のようなものだろうか。そう、美しさといってもそれは退廃的な美しさ。 冒頭の失禁してしまう真奈美とか、台湾から来ていたセレブのアイリーンのこととか、育ちのよさそうな聖也の背景とか、におわせたことが収拾しきれないまま終わってしまう感じはあるけれど、そのまとまりのなさがまた退廃と通じるといっていえなくもないような。
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穂村弘さんの対談集で、そのお名前を初めて知った歌人の方の初めての小説。 どうしてもプロフィールが先行してしまう… "不可逆的な本物の堕落へ至ること"たぶんこれが作者の描きたかったことなのかな、と。 田舎の資産家の実家をニセモノとして嫌悪する大学生の真奈美と、...
穂村弘さんの対談集で、そのお名前を初めて知った歌人の方の初めての小説。 どうしてもプロフィールが先行してしまう… "不可逆的な本物の堕落へ至ること"たぶんこれが作者の描きたかったことなのかな、と。 田舎の資産家の実家をニセモノとして嫌悪する大学生の真奈美と、ゲイで資産家の潤。そして潤とも"マクラ"するホストの聖也。 登場人物3人のことを理解したいと思うけど、共感する部分が少なく、それもわざと省いて書かれているのかな、と。真奈美の衝動は破壊的に感じた。 私の浅はかな読み方ではすくいとれない感じが、とてももどかしい。 歌集を読んでみたいです。
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主人公の生き方に共感できなくて、読むのが苦痛になってくる。何故こんな生き方しか出来ないのだと考えてしまう。やはり、年齢とも関係してしまうのかと寂しくもなる。で、結局途中で放り投げてしまった。作者は歌人として有名で、短歌で共感する作品もあるだけに残念だ。 家々を追われ抱きあう赤鬼...
主人公の生き方に共感できなくて、読むのが苦痛になってくる。何故こんな生き方しか出来ないのだと考えてしまう。やはり、年齢とも関係してしまうのかと寂しくもなる。で、結局途中で放り投げてしまった。作者は歌人として有名で、短歌で共感する作品もあるだけに残念だ。 家々を追われ抱きあう赤鬼と青鬼だったわれらふたりは 作者『メタリック』の巻頭を飾る短歌だが、『車軸』の主人公は赤鬼・青鬼なのかも知れない。そう考えると少しは共感できる様な気もするが、理解はできない。
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作中のとある重要人物は、著者自身がモデルなんだと思う。魅力的な方なのはわかるが、自己紹介が中心の小説で、テーマ性が薄いと感じた。「車軸」という題名を説明した箇所があるが、全く腹落ちしなかったのもテーマ性の薄さのせいだと思う。
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