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豆大福と珈琲 の商品レビュー

3.3

7件のお客様レビュー

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2023/05/25

片岡義男は健在。『彼のオートバイ、彼女の島』と、時代も場所もなにもかも違うけれど、根底に流れる自由な時間の流れはまったく同じものだった。私もこうやって生きていける、と思わせてくれるような余裕が満ち満ちているところが、片岡作品の大好きなところ。 珈琲にまつわる5つの物語が収録されて...

片岡義男は健在。『彼のオートバイ、彼女の島』と、時代も場所もなにもかも違うけれど、根底に流れる自由な時間の流れはまったく同じものだった。私もこうやって生きていける、と思わせてくれるような余裕が満ち満ちているところが、片岡作品の大好きなところ。 珈琲にまつわる5つの物語が収録されているが、「この珈琲は小説になるか」が一番好きだった。作家と編集者の物語。現代という設定の中に、アナログな人間同士の関係性を持ち込むのが本当にうまいな。

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2021/03/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

珈琲にまつわる5つの短編。 豆大福を食べたことで離婚して子連れで戻ってきた高校の同級生と同居することを思いついたこと。 喫茶店とコーヒー豆のお店を開いた友人の女性の家が かつて火事になった夜のこと。 父の喫茶店を手伝い独立させた女性と、それを引き継いだ女性のお店に行き、 さらにたい焼き屋さんを開いた女性のお店を行ったり来たりと出前もしたりの日々。 新人作家としてのデビュー作を2つの喫茶店で書き上げた20年前の記憶をキュウリのサンドイッチを食べながら思い出す人の縁。 喫茶店で同じ空間に居合わせる4つの話に出てきた登場人物たちと、新たな登場人物たちの物語の始まり。 作者はキレイな女性が好きナノネ。 世の中はそんなにスマートにできてるとは思えないけれど それもいいのかな。

Posted byブクログ

2020/11/08

昔のように自由な若者がオートバイでアメリカ的な風景を駆け抜けるのではなく、金銭的にそんなに余裕があるわけでもない齢を重ねた労働者が紛れもない日本の住宅地や電車の駅を移動するという作風にシフトしてるけど、根底の片岡義男ぽさは変わらないという感じ。

Posted byブクログ

2020/06/13

2020.6 何かが起こるわけじゃない。でもなんとなく掘っていったらおもしろそうな感じのする人たち。そう、みんななんか匂う。おかしみがある。過去を経た現在を今の自分で生きる。あ、味だ味。そしてそれぞれにそれぞれの珈琲が少し。

Posted byブクログ

2019/12/30

面白かったです。タイトルで選びました。 乾いた軽やかな雰囲気が好きでした。 日本が舞台なのに日本では無いような空気です。翻訳ものみたい。 珈琲苦手なのですが飲みたくなりますし、豆大福も鯛焼きもとても美味しそうでした。 カフェオレからコーヒーに移り変わるような装丁も好きです。

Posted byブクログ

2019/05/12

大昔の愛読者。 良くも悪くも安定の片岡義男。 やはりもう、この方の作品を楽しむには 私が日常生活に長く浸りすぎたかもしれない。 日常の現実にどこか違和感を感じて どこにもありはしない未来を根拠なく信じていた あの頃が懐かしく寂しい。

Posted byブクログ

2019/05/03

著者の好きな「珈琲」を題材にした5篇からなる短編集。最後の短篇は全体のまとめのような作りになっていて、小さな仕掛けが施されている。 表題作では、珈琲のお供が「豆大福」というミスマッチの中に新しい恋愛関係を描く。片岡義男も齢八十にしてようやく枯れ具合が出てきたのかなと思いつつペー...

著者の好きな「珈琲」を題材にした5篇からなる短編集。最後の短篇は全体のまとめのような作りになっていて、小さな仕掛けが施されている。 表題作では、珈琲のお供が「豆大福」というミスマッチの中に新しい恋愛関係を描く。片岡義男も齢八十にしてようやく枯れ具合が出てきたのかなと思いつつページを繰った。表題作の冒頭から数頁費やして描写する「豆大福」についての観察眼には畏れ入った。 餅の表皮はじつに穏やかに、そしてたおやか に、でこぼこしている。表皮の餅に周囲を囲 まれたでこぼこのなかで、どの豆も自分の分 を心得た諦観のなかにある。その諦観がこれ から豆大福を食べようとする人の気持ちを、 とらえて離さない。」この表現、実に官能的 でさえあり、その描写だけでも、この短篇は 一読に値する。深煎りの珈琲に豆大福の組合 せを是非試しみたいと思う。 何れの話も、天の配剤と思しき邂逅も奇譚もなく穏やかに淡々として話は進んでいく。ただ、登場する女性は、凛としてマニッシュ風でありながら、綺麗にパンプスを履きこなす。この人物設計は片岡ワールドにはなくてはならず、本書も健在で安堵した。 表題作にあるように珈琲のお供に、カフェでの寛ぎタイムに、ピッタリな一冊。

Posted byブクログ