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隠居すごろく の商品レビュー

4.3

46件のお客様レビュー

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2024/07/16

還暦を迎えたことを機に、隠居することにした徳兵衛。 巣鴨での商いということで大店ではないけれども、六代も続いたそれなりの規模の糸問屋、嶋屋。 気弱な長男に後を託し、店にほど近い場所に隠居家を設けます。 若いころから商売一筋で、金にならないものなど価値がないとばかりに切り捨ててき...

還暦を迎えたことを機に、隠居することにした徳兵衛。 巣鴨での商いということで大店ではないけれども、六代も続いたそれなりの規模の糸問屋、嶋屋。 気弱な長男に後を託し、店にほど近い場所に隠居家を設けます。 若いころから商売一筋で、金にならないものなど価値がないとばかりに切り捨ててきた徳兵衛。 隠居生活を楽しみにしていたのは、持つことのできなかった自分のための自由な時間。 ところが、実際には何もすることがない。 釣りも、俳句も、今更やってみても面白くもない。性に合わない。 悶々と暮らしていた時に、孫の千代太(8歳)が訪ねてくる。 千代太は父に似て心優しく泣き虫で、家族のだれもが顧みなかった徳兵衛の、寂しい気持ちを察して顔を出したのだ。 本当は、手習いの先生が怖くて逃げてきたのだけれど、徳兵衛を思いやる気持ちにも嘘はない。 そしてこの千代太が、同じ作者の『善人長屋』に出てくる嘉助のように、厄介ごとを拾ってくる。 最初は犬。 次は猫。 そして今度は…。 人生のすごろくを概ね成功して上がり終えた後の2枚目のすごろくは、千代太のおかげでどんどん思わぬほうへ進んでいく。 けれど、人との付き合いなど軽んじてきた徳兵衛は、人の喜ぶ顔を見てうれしくなったり、困ったときは助けを求めたりしながら、人の世で生きることの意味をいまさらながら知ることができた。 ”人の思いは目に見えず、触れもしない。齟齬や行き違いが生じるたびに、慮りを深めていくより他に学びようがない。” 隠居生活3か月。 自分のために書かれた本であるかのように、沁みました。 孫はいないので、穏やかな隠居生活を送りますけどね。

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2024/01/25

堅物店主が自ら宣言し隠居したものの、仕事一筋で生きてきたため、すぐに暇をもて余してしまう。 そこに無邪気な孫が訪れたことから、賽の目が思いがけない方向に転がっていく。 爽快痛快。ワクワクしながら読み進めた。

Posted byブクログ

2023/08/24

面白かった!最後まで読み尽くすまでやめられなかった。隠居になった徳兵衛が孫の千代太とのかかわりから人間関係が変わっていき、静かだった隠居所が人が溢れて賑やかになっていく様子が楽しかった。

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2023/08/15

人の暮らしには、多くの犠牲がつきまとう徳兵衛が店を離れて、隠居暮らしが12年経つ。その間に恵まれない人困っている人を助けつつ、暮らしてきた孫の千代太も祖父の徳兵衛と一緒になり頑張ってきた甲斐があり続経の中子供達も立派に成長した姿が見える

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2023/07/24

カドブン夏推し2023で選ばれた本のハードカバー。 悠々自適な毎日を期待して一人隠居を決めた糸問屋の主、徳兵衛。しかし隠居生活をいざ始めるとすることもない。強がりながらも虚しさを感じていると、孫の千代太がやってきた。千代太はやがて犬を連れてきて、次は町人の子供達を連れてきて、ド...

カドブン夏推し2023で選ばれた本のハードカバー。 悠々自適な毎日を期待して一人隠居を決めた糸問屋の主、徳兵衛。しかし隠居生活をいざ始めるとすることもない。強がりながらも虚しさを感じていると、孫の千代太がやってきた。千代太はやがて犬を連れてきて、次は町人の子供達を連れてきて、ドタバタ劇が始まる。 描写が細かすぎず、すぐにストーリーが展開されていくので、読み始めのイライラ感が少ないのは嬉しいところです。 糸問屋の6代目として自分に厳しく人にも厳しく、完璧な仕事ぶりの徳兵衛が、隠居をすると人生の楽しみ方もわからず強がっているところが面白い。いつの時代もこういう人、いっぱいいるんでしょうね。 徳兵衛のような性格に多少難がある人が主人公だと人間らしく感じられ、その考え方や葛藤ぶりに自分を重ねて本の世界に入り込んでしまいます。 徳兵衛が純真無垢な千代太に巻き込まれ、ジレンマに陥りながらもお節介をやいていき、徳兵衛だけでなく他の登場人物達も成長していく姿が生き生きと描かれています。 結局は女中のおわさや妻のお登勢の掌で徳兵衛が転がされているところがおもしろくもあります。 ただ、王子権現の劇の内容は私には難しく、私自身の力不足を感じました。 この王子権現に、和歌山県の熊野速玉大社の近くにある王子神社の分霊を移したと言われているそうです。この夏に王子神社へ行けたらいいな、と思っています。

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2022/11/15

巣鴨の糸問屋「嶋屋」の六代目店主・徳兵衛は、還暦を機に、隠居すると、店の物に宣言する。 跡取り息子と、嫁は、不安だからと、反対したが、 徳兵衛の決心は、変わらなかった。 妻のお登勢は、そのまま残り、徳兵衛は、女中とその息子と3人で、隠居家に移り住んだ。 ひたすら仕事一途に邁進し...

巣鴨の糸問屋「嶋屋」の六代目店主・徳兵衛は、還暦を機に、隠居すると、店の物に宣言する。 跡取り息子と、嫁は、不安だからと、反対したが、 徳兵衛の決心は、変わらなかった。 妻のお登勢は、そのまま残り、徳兵衛は、女中とその息子と3人で、隠居家に移り住んだ。 ひたすら仕事一途に邁進してきた徳兵衛だった。 その褒美として、人生の第二の双六をやり直すつもりでいた。 しかし、仕事しかしてこなかった徳兵衛は、遊びが一向に、面白くない。 暇を持て余していた時、孫の千代太が、隠居家に現れた。 大喜びする徳兵衛だが、千代太が連れてくる厄介事に、日々振り回される。 残された年月は、決して長くはない。その間できる事をできる限りやらねば、悔いを残す。 二枚目の双六。 最初は何もない真っ白な紙っぺらだったが、孫の千代太に、引きずられる様にして、厄介事を解決してきて、ようやく、二枚目の双六には「上がり」がないと気付かされた。 「上がり」ないからこそ面白く、甲斐があると。 子供達の健気さに、何度も涙ぐみながら読み進めた。 読後感は、すこぶる良かった。

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2022/09/28

 派手な事件もなく地味ながら人と人との関わりあいが麗しくあたたかい。物語の主軸にあるのは実は孫の千代太だ。彼がこの物語の根幹を作りだしてゆく。  組紐だとか帯締めだとか興味のない話題に読むスピードが滞り気味だったけど話の展開、出来事の構成など見事につながって面白かった。文体として...

 派手な事件もなく地味ながら人と人との関わりあいが麗しくあたたかい。物語の主軸にあるのは実は孫の千代太だ。彼がこの物語の根幹を作りだしてゆく。  組紐だとか帯締めだとか興味のない話題に読むスピードが滞り気味だったけど話の展開、出来事の構成など見事につながって面白かった。文体としてはどちらかといえば好きなタイプではないけれど、子供が登場すれば少しコミカルになるのは仕方のないことかもしれない。  商売人のやり取り駆け引きの場面はこの作者も商売の経験があるのかなと思うほど、心地よく妙味があった。そして読み終えた余韻がとてもよかった。

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2022/09/03

何だか時代劇を見ているように物語、いや人情ドラマが浮かんでくる。 糸問屋の店主嶋谷徳兵衛は歳も61となり、息子の吉郎兵衛に代を譲り別家で隠居することにするが、孫の千代太が色々と面倒を持ってくる。 最初は困り顔の徳兵衛だったが、次第に千代太の優しさに感化され手助けしていく。 彼の...

何だか時代劇を見ているように物語、いや人情ドラマが浮かんでくる。 糸問屋の店主嶋谷徳兵衛は歳も61となり、息子の吉郎兵衛に代を譲り別家で隠居することにするが、孫の千代太が色々と面倒を持ってくる。 最初は困り顔の徳兵衛だったが、次第に千代太の優しさに感化され手助けしていく。 彼の元に集まる子どもたちや家族は、それぞれいいキャラクターを持ち、皆で協力しながら厄災を乗り越えて行く。 人は活かし活かされることで、成長し満足を得ることが出来るんだと実感した。

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2022/08/21

初、西條奈加! ビッグコミックの尾瀬あきらの「善人長屋」の原作が西條さんで気になっていた。 糸問屋の主人を隠居した徳兵衛。 双六の「上がり」のつもりでいたのに、孫の千代太が次々に持ち込んでくる「厄介事」に翻弄される事に! 初めはいやいや対処していたのに、どんどん肝が据わってくる徳...

初、西條奈加! ビッグコミックの尾瀬あきらの「善人長屋」の原作が西條さんで気になっていた。 糸問屋の主人を隠居した徳兵衛。 双六の「上がり」のつもりでいたのに、孫の千代太が次々に持ち込んでくる「厄介事」に翻弄される事に! 初めはいやいや対処していたのに、どんどん肝が据わってくる徳兵衛がいい。

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2022/08/09

人との繋がりが人生を豊かにするのだと実感。交流は多くないけれど、閉ざさないようにしようと思えました。江戸人情はなし、沁みました。

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