センスメイキング 本当に重要なものを見極める力 の商品レビュー
STEM教育への系統と人文科学の軽視、 データドリブンへの信奉とコンテクストへの無知。 こうした近年の趨勢に警鐘を鳴らし、人文科学をベースとした「センスメイキング」の重要性を説いている。 大量のデータから表層をなぞるのではなく 現象学的に本質を抉ろう、という主張にはなるほどと思...
STEM教育への系統と人文科学の軽視、 データドリブンへの信奉とコンテクストへの無知。 こうした近年の趨勢に警鐘を鳴らし、人文科学をベースとした「センスメイキング」の重要性を説いている。 大量のデータから表層をなぞるのではなく 現象学的に本質を抉ろう、という主張にはなるほどと思わされる。 つまみ食い程度でわかった気になることはできても 本質を捉えることは対象の内側に没入することでしか達成しえない。 しかし、STEMの欠点を徹底的に晒しつつも、結局なぜセンスメイキングが望ましいのかがいまいち伝わらない。 そもそも言語化・論理化が難しいものであるので性質上難しいというのはあるだろうが、 変に「本当の高給取りは人文科学を専攻している」「あなたの上司も人文科学出身だったりするだろう」と給与や地位から人文科学を持ち上げているがために心に響いてこない。 人文科学とそうでないものとに壁を作り二元論に陥っている点が残念ではあるが、人文科学とSTEMを比較した稀有な本として一読の価値はある。 ちなみに筆者はどうやら大のデザイン思考嫌いらしく、敵意剥き出しでコキおろしている。 一種清々しさすら感じるが、そういった壁を作らずに多様性を認め、異なる意見を重ね合わせアウフヘーベンしていくことが重要なのではなかろうか。
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人間科学を基盤とした戦略コンサルタントである著者が、STEMやビッグデータといった自然科学に基づく「理系の知識」全盛の時代へのアンチテーゼとして、人文科学や社会科学の重要性を説き、より人間的な文化や感性への回帰を提唱した一冊。 センスメイキングとは、人間本来の知を生かして「意味...
人間科学を基盤とした戦略コンサルタントである著者が、STEMやビッグデータといった自然科学に基づく「理系の知識」全盛の時代へのアンチテーゼとして、人文科学や社会科学の重要性を説き、より人間的な文化や感性への回帰を提唱した一冊。 センスメイキングとは、人間本来の知を生かして「意味のある違い」に対する感受性を高めることであり、物事に対する深い洞察は、数値化・抽象化された「薄いデータ」の分析だけでなく、人々の相互の関係によって生まれる「社会的文脈」のようなAIでは認識できない「厚いデータ」を把握することが必要になる。そのためには新たな技術に盲目的に頼るのではなく、自らの経験や感性を主体的に活用して「本当に重要なものを見極める」ことが重要と説く。 ハイデガーやフッサールといった哲学者の思想を巧みに引用し、「独創性あふれる洞察やアイディアは、『我々の中から』ではなく、我々が暮らす社会の中から、『我々を通じて』出てくる」という著者の主張は一定の説得力がある一方で、著者が「AIには不可能」と断じているハイタッチな能力がこの先も人間の専売特許であり続けるのかは疑問が残る。むしろ本書のいう「センスメイキング」をこれまで以上に高めなければ人間としての将来は危ういのではないかと思う。
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【237冊目】AIが人間の知性を凌駕し、人間を「疎外」するという警句を受けて、「テクノロジー至上主義時代を生き抜く審美眼を磨け」という帯の言葉に惹かれて買いました。はっきり言って、期待はずれ。 センスメイキングの五原則というのが書いてあるのだが、そもそもセンスメイキングが何なの...
【237冊目】AIが人間の知性を凌駕し、人間を「疎外」するという警句を受けて、「テクノロジー至上主義時代を生き抜く審美眼を磨け」という帯の言葉に惹かれて買いました。はっきり言って、期待はずれ。 センスメイキングの五原則というのが書いてあるのだが、そもそもセンスメイキングが何なのか、定義が曖昧。AIには出来ない技術らしいけど、内容は???である。 まだ、五原則も、順不同ながら、個人ではなく文化を、薄いデータより厚いデータを、動物園よりサバンナを、生産性より創造性を、GPSより北極星を、というもの。しかし、筆者の説明は往々にして後者を肯定するものであり、前者を劣後させるべき理由はほとんど説明されていないか、説明不足。 知の技法としてのアブダクションや、定性的分析の技法たる文化・社会の観察と探索、個々のデータのみ見るのではなく文脈への位置付けと解釈が大事などなど、言いたいことは分かるんだけど、どうにも説得力がない。筆者の言いたいことは僕も同感するところがあるから本書を購入したのに、それを上手く言語化・理論化・根拠付け出来てない。 すなわち、新しい視点を提供・提唱することを主眼とし過ぎていて、その視点の内容や理由をうまく説明できていない。そのため、すでにその視点を持っていた僕が求めるところには応えていない。
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