月のぶどう の商品レビュー
タイトルがいいなぁと、読み終えてしみじみ思う。話中のおとぎ話のモチーフなんだけど、遠く高い理想とか、夢ごこちの味わいとか、なつかしさや隔たりとか・・・この物語に含まれるエッセンスがいくつも感じられることばだ。 春夏秋冬、と自然のテンポは人とは相容れない。急がないし、ゆっくりもしな...
タイトルがいいなぁと、読み終えてしみじみ思う。話中のおとぎ話のモチーフなんだけど、遠く高い理想とか、夢ごこちの味わいとか、なつかしさや隔たりとか・・・この物語に含まれるエッセンスがいくつも感じられることばだ。 春夏秋冬、と自然のテンポは人とは相容れない。急がないし、ゆっくりもしない。ぶどう作り、ワイン作りを通じて描き出されるこのテンポが人間を戸惑わせも、喜ばせもする。季節が進んで仕事が分かってくる。無情の風雨がぶどうをだめにする。それぞれの人生の中で、そういう経験をどんなふうに糧にし、乗り越えていくのかが問われているようだ。
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ワイン農園で働く双子の姉弟。母の意思を守ろうとする姉と特にワインに興味があるわけでもない弟。この2人の違いがいい。自然を相手にし、うまくいくこと。いかないこと。どうしようもできない出来事。そういうことを繰り返しながらワインを作り、自分の立ち位置を見つめる2人。1人で背負いこむ姉と1人ではまだまだな弟。でも近くに誰かがいるという救い。苦しくなる時、逃げ出したくなる時にそういう存在がいることの心強さ。たくさんの工程を経て熟成して作られるワインのように、たくさんの人と出逢い、感情を知ってその人の味が作られ年々深くなっていく。新しいことを始めるワクワクと恐怖。でもその先にあると信じるもの。さまざまな想いが溢れ作られるワインはとても魅力的に思える一冊。2人のおじいちゃんが仕掛けるしょうもないイタズラとそのときのおじいちゃんの嬉しそうな顔が好き。
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初めての著者。葡萄作りを通して、双子の姉弟が、自分の生き方見つめ直す話。 姉に父が語る言葉に、「大切やない、必要のない仕事はない。必要でなかったらその仕事は存在していません。」とある。仕事だけでなく、生き方もそうなのかもしれない。目標や夢を持って生きるということは、素晴らしいことだけど、多くの人が必ずしもそうかというと、そうではないし、生き方に良いとか悪いとかない、本人が思う事でしかない。 この作品のもう一つのテーマには、血のつながりみたいなものがあると思う。繋がりも良い面もあれば、悪い面もある。血のつながりがない方が幸せな事もある。光実と歩は、双子だけど全く違う性格、出来の良い光実と、悪い歩と周囲も本人もそう思っていたけれど、本の中で、二人はお互いが補完し合う、無くてはならない存在であることに気づく。 読後、異性の双子は惹かれ合ったりしないのかなぁと思った。
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寺地はるなさん、好きだなー。 ビオレタのときから好き。 光実と歩のゆっくりと成長して互いを補填して生きていくところが丁寧に(時にじれったいなと思いながら)描かれていて、なんだか安堵してしまう。 欲をいえば、和葉さんの葛藤も詳しく知りたかったなぁ。 月のぶどうで作ったワインはい...
寺地はるなさん、好きだなー。 ビオレタのときから好き。 光実と歩のゆっくりと成長して互いを補填して生きていくところが丁寧に(時にじれったいなと思いながら)描かれていて、なんだか安堵してしまう。 欲をいえば、和葉さんの葛藤も詳しく知りたかったなぁ。 月のぶどうで作ったワインはいったいどんな味なんだろう。 二人が作り上げたものを、飲んでみたいなぁと思わせるラストでした。
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