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選べなかった命 の商品レビュー

4.3

46件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2021/09/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ずっと前から気になってた本。 内容は重く、とても考えさせられる本でした。 実際に、裁判をすることになったご両親に対し批判的な意見が多いとの内容もありましたが、わたしはこのご両親、特に母親の方には敬服しました。 我が子を泣くし、苦しすぎる状況の中、 今までお世話になった先生、病院に対し裁判をしなければならない決意。 世間からの批判的な風を感じながら、それでも尚、亡くなった天聖くんの為や日本の法律の矛盾に立ち向かうのはそうとうなエネルギーが必要なことだと思うし、自分がその悲しみや苦しみの中にいたら同じく立ち向かうことはできないと思います。 誰もができることではない。 優生保護法、母体保護法、知らなかった日本の法律の事や胎児条項の事など、考える良いきっかけになりました。 時代の進化のスピードにこれらの大切な内容も きちんと見直され、良い方向に進んで欲しいと思います。

Posted byブクログ

2021/08/23

『ウスケボーイズ』の著者による出生前診断の誤診裁判を扱ったノンフィクション。 出生前診断、ダウン症、中絶、優生思想、wrongful life(birth)。 判決自体は至極妥当だと思うし、些細な言動をいちいち取り上げるのは冗長だが、それでも事件とその周辺を追った意味、読者に何か...

『ウスケボーイズ』の著者による出生前診断の誤診裁判を扱ったノンフィクション。 出生前診断、ダウン症、中絶、優生思想、wrongful life(birth)。 判決自体は至極妥当だと思うし、些細な言動をいちいち取り上げるのは冗長だが、それでも事件とその周辺を追った意味、読者に何かしら考えさせる意味は非常にある。

Posted byブクログ

2021/07/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

以前から、生まれてくるべきでなかった命(Wrongful life)という考え方に強い違和感を抱きつつ、フランスではかなり前にそれが判例で認められたことを知っていた。 日本でも同様の裁判が起こされたが、結論から言えばこれは認められなかった。科学の発達に伴い既に起きている「生命の選択」。誰もが当事者となったら迷う難しいテーマなだけに、議論すら避けられている。そんな中でこのドキュメンタリーは、当事者たちのカットや正直な気持ちを丁寧に聞き取っていく。ダウン症の子を幸せいっぱいで育てているお母さんが「わかったのが中絶できる期間だったら、していたと思う」と答えたり、無脳症の子を産んだ女性が「すぐ死ぬことが分かっていたから出産できた」述懐するなど、そんなにきれいでも簡単でもないのだということがよくわかる。 自分に子どもがいる、いないにかかわらず、これはどういう社会を作っていくかの話。誰しも部外者ではいられないと思う。個人的には、障害者がハンデを持たずに生きられる社会(受け皿)を準備できれば、出生前診断があろうがなかろうが、命が選別される事はないと思うけれど、それには膨大な時間がかかる。

Posted byブクログ

2021/07/18

【感想】 出生前診断と中絶という問題は倫理的で非常に複雑な上に、あまりに個人の考え方も様々なので読み進めながらも自分の考えも定まらないままだった。 あとがきに筆者が書いているのと正に同じく、正直に言うと、私は本書を読み始めた時は光のことを批判的に捉えていた。 医師の誤診によっ...

【感想】 出生前診断と中絶という問題は倫理的で非常に複雑な上に、あまりに個人の考え方も様々なので読み進めながらも自分の考えも定まらないままだった。 あとがきに筆者が書いているのと正に同じく、正直に言うと、私は本書を読み始めた時は光のことを批判的に捉えていた。 医師の誤診によって子どもを出産するか中絶するかの自己決定する権利を奪われたと訴えるとはどんな人物だろうか、一体どういう経緯でそうなったのかと。 読んでみると、医師の誤診に対する謝罪にあまり誠意を感じられず、生まれてきた子どもに謝ってほしいという光の気持ちはとても理解できた。天聖くんは苦しかっただろうに、辛かっただろうにと涙が出て、光の心のぶつけどころのなさに可哀想な気持ちにはなったが、当事者でなければ心の傷は到底分かることはできないのだろう。 愛する我が子が同じ立場になったらどうするだろうかと想像を巡らせることはできても、実体験として自分がその状況に置かれなければ本当の意味での苦悩は理解できていないのではないだろうか。 日本では法律のなかに「胎児の異常による中絶」という文言がないため、「経済的理由」を援用して実質的な選択的中絶がなされているという事実を初めて知った。 また様々な立場の人々の話を読む中で「重視されるべきは女性の自己決定権なのか、障害者の尊厳なのか、公共政策なのか、医療なのか。それを決めるのは誰なのだろうか」という問いに揺さぶられた。 そして「命の選択をする人は差別的なのか。障害があると中絶をする人は障害に理解がないのか。そんな簡単なものではない。」と筆者が述べるように、みんな悩みに悩み抜いて葛藤してギリギリのところで決断を迫られ、決断してからも後悔や苦悩があるのだろう。だから、そんな簡単な問題ではないのだ。 先端技術と倫理の狭間で苦しむことの矛盾、家族に決定権が委ねられている現状。 本書を読んでも自分なりの結論は出ないままだが、こういった事実を知ることで「文化という知恵」を持って、他者を理解しようと努めることからはじまるのではないかと感じた。 【心に残ったフレーズ】 96 先端技術と倫理で苦しむことの矛盾 98 医療技術の進歩とともに、法律も共についていかなければいけない 母体保護法の矛盾、医療が抱える問題点を社会へなげかけようと決心 116 裁判所は羊水検査は染色体異常の子どもを中絶することを前提とした検査だと位置づけている 121 もしも戻してもらえるなら元気な子にしてほしい。この子に障害があるのはドクターが悪い訳ではないから、神様にそう言いたい。 127 結果が悪いと感謝の気持ちは憎しみとなってこちらにぶつかってくる。 医療の質という点でも、定時できっちり仕事を切り上げて帰宅する方がいいと考えるようになった。 146 苦しむだけの生であれば、生そのものが損害なのかを光の裁判は問いかけた。 153 人間は愚かだと思います。実体験として自分が痛みを受けないと理解することができない。 163 日本では法律のなかに「胎児の異常による中絶」という文言がないため、「経済的理由」を援用して実質的な選択的中絶がなされている 198 重視されるべきは女性の自己決定権なのか、障害者の尊厳なのか、公共政策なのか、医療なのか。それを決めるのは誰なのだろうかーー。 208 命の選択をする人は差別的なのか。障害があると中絶をする人は障害に理解がないのか。そんな簡単なものではない。 215 知ることの恩恵もある。選択する選択しないを含めて、本当の意味で選択できる環境を整えることが大切なのだろう。 216 生きてくれるだけで大丈夫 笑っていてくれればもうそれで嬉しい という視線で娘を見ていた。 223 文化という知恵ーーー議論していく。 239 命に直面した人間の苦悩であり、愛する子どもを亡くした親の絶望であり、それでも前を向こうともがく生命の剛健な姿である。

Posted byブクログ

2021/05/27

出生前診断で”異常あり”との診断が出ていたにもかかわらず、担当医が誤って”異常なし”と伝えた結果、産まれてきた赤ちゃんはダウン症と他の合併症から3か月で亡くなったという事例がありました。この子のご両親は、自ら産む・産まないの選択の機会を奪われただけではなく、もしも正確に出生前診断...

出生前診断で”異常あり”との診断が出ていたにもかかわらず、担当医が誤って”異常なし”と伝えた結果、産まれてきた赤ちゃんはダウン症と他の合併症から3か月で亡くなったという事例がありました。この子のご両親は、自ら産む・産まないの選択の機会を奪われただけではなく、もしも正確に出生前診断の結果を伝えられていたなら中絶を選択していた可能性もあり、そうすればこの子は苦痛だけの3か月を経験しなくても良かったはずだ、との主張で担当医を訴えました。 本書前半の合併症との壮絶な闘病の様子からは、確かに生後間もない赤ちゃんの境遇としては「産まれてこなければ、こんな苦しい思いをしなくても良かったはず…」とのご両親の思いが十分に伝わります。しかし、ダウン症の子供さんを育てておられる方のお話からは、「ダウン症の子供は生まれてこない方が良いと言われているようで辛い」と捉えておられるのも理解できます。子供を持っておられる方なら、出生前検査を受けるかどうか、もしも結果が良くなければどうするのか、という問題に直面した経験がある方も多いのではないでしょうか。”五体満足なら”と願ったことは誰もがあると思います。そうではない可能性を突き付けられたとき、直面する様々な問題や局面が多くの方への取材で描かれています。 この問題は、どの人の考えが正しいと安易に判断できない難しさがあり、本書にもあるように「誰を殺すべきか。誰を生かすべきか。もしくは誰も殺すべきではないのか」という命の選択に直面せざるを得ない現実を浮き彫りにしています。 中絶に臨場する医療関係者は、本来”命”を助けることを生業としているのに、その真逆に近い事を強いられることから、非常にストレスを感じながら処置に臨んでいるという事実は、本書を読んで初めて気づかされました。 安易に綺麗ごとを並べるのではなく、この裁判の当事者や、医療関係者、ダウン症の支援団体、もっと重い障害を持つ子供さんを出産した方、ダウン症ながら大学まで進学した人、など多くの立場の方への取材で、本当にいろいろな視点、考え方があることが分かります。今後、医療技術の発達で、さらにこのような問題は顕在化する可能性もあり、誰もが真剣に考えるべき問題だと感じます。

Posted byブクログ

2022/01/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

良かったのか悪かったのかわからないけど、出生前診断において、どんな子だったとしても産むべきって思っていたけど、これを読んで気持ちが変わったかもしれない。出生前診断をするか否か、中絶という選択にに対して肯定も否定もすることはできない。今の私には具体的な答えや意見はない。 医師が謝らなかったのはアメリカの法的観念からなのかな、とかも思った。 思ったことは、医療の発展のおかげ?せい?で様々な選択ができることによって、残酷な選択もしなければならないということ。最初は知らなければよかったとも思ったし、この本を読んで存在して欲しくなかったな、とも思った。 ただ、歴史は繰り返されてて、医療の発展と共に、新たな歴史がつくられている。 差別のない世界は理想。でもどんな選択でも不安を持たない社会になったら、みんなで幸せになれるはず。 差別がうまれた世界で私が何をすれば良いのかを考えていく。

Posted byブクログ

2020/12/11

1番気になってたコレ、一言では言い表せないのですが…「障害児は生まれるべきではない」と端的に捉えられて非難を浴びるとしたら すごく悲しいことだな…と思いました。安直な調和をしたらいけないな…。自戒もこめて、オススメします。

Posted byブクログ

2020/12/03

私がこの本を知ったのは、第二子を出産した直後。自分にとってタイムリーであったことと、もともと関心を持っている内容であったことから、手に取ってみた。 そもそも私は、日本では胎児の障害を理由とした中絶が認められていないということさえ知らなかった。関心があるなんて言っておきながら。 ...

私がこの本を知ったのは、第二子を出産した直後。自分にとってタイムリーであったことと、もともと関心を持っている内容であったことから、手に取ってみた。 そもそも私は、日本では胎児の障害を理由とした中絶が認められていないということさえ知らなかった。関心があるなんて言っておきながら。 出生前診断は、結局のところ、その結果次第で中絶するかどうか決断するためのものと思っていた。 事実、胎児に何らかの障害があるとわかれば、ほとんどの女性が中絶していると聞く。 それに、私が第二子妊娠中には、担当医から出生前診断について、「中絶できるリミットまでに受けるように」と説明を受けた。 この本を読んだら、「命の選択」について自分なりの考えや答えが出るだろうと思っていた。 でも、正直なところ、読んだらもっとよくわからなくなってしまった。 それはこの本の内容が良い悪いということではなく、この問題はどうしたって当事者でなければ、実際にそのような境遇に立たされなければ、わからないから。 2人の子供を育てる親として胸が苦しくなる内容ではあったけれど、ますますメジャーになりつつある出生前診断について、一度立ち止まって考える機会を与えてくれた一冊であった。

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2020/09/23

出生前診断、人工中絶、障害など、答えのない問いが次々と投げかけられる。 人工中絶は優生保護法の観点でのみ認められていることを初めて知った。命に関する倫理観と自由な選択を支える科学技術とのせめぎ合いが、歪んだかたちで体現されてしまっていると感じた。 お腹に宿った命は、いつから命...

出生前診断、人工中絶、障害など、答えのない問いが次々と投げかけられる。 人工中絶は優生保護法の観点でのみ認められていることを初めて知った。命に関する倫理観と自由な選択を支える科学技術とのせめぎ合いが、歪んだかたちで体現されてしまっていると感じた。 お腹に宿った命は、いつから命なのか。 子どもを産むということは、すべてを受け入れる覚悟をすべき。それは偽善ではないか。 何もかもを選択できるということは、むしろツラいことなのではないか。 自身が母となってみて、母親としての本能的な感覚に日々驚く。我が子への愛情のあまり、コントロールできない感情が芽生える。それは個々人で異なるであろうし、その感情を良いかたちでアウトプットできるとも限らない。 しかしながら、子どもは例外なく母親を求める。 その関係性が切なく、母親としてどうあるべきかを考えさせられる。 生まれることは死と隣り合わせである。 そのことが昨今の出産においては、忘れがちになっている。 それは幸せなことであるが、大切なことも忘れ去られていないか。 本書を読みながら幾度も涙し、命の重さを改めて考えさせられた。

Posted byブクログ

2020/07/27

母体保護法に胎児条項がないため「経済的理由」を援用したことに対して、国を訴えた弁護士の言葉が心に残った。堕胎は、現在も経済的あるいは身体的理由しか許されておらず(だから、単に産みたくないのが理由であっても、どちらかにこじつけて行っている)、どちらでもないのに堕胎した場合は堕胎罪が...

母体保護法に胎児条項がないため「経済的理由」を援用したことに対して、国を訴えた弁護士の言葉が心に残った。堕胎は、現在も経済的あるいは身体的理由しか許されておらず(だから、単に産みたくないのが理由であっても、どちらかにこじつけて行っている)、どちらでもないのに堕胎した場合は堕胎罪が適用される。胎児の異常が判明した妊娠の大半が中絶していても、法的な根拠は議論すらされない。「堕胎罪はあっていい、全員産むべきだと結論づけられればそのような社会設計をすべきです」(P166)堕胎罪があっていいかはともかく、全ての子どもを受け入れる社会設計になっていないことが問題なのだと思う。そういう社会設計をしようとすら、誰も思ってない。 子どもの障害のある無しに関係なく、全ての子育てのサポート(もちろん就労支援、生活支援とも連携して)を国家レベルで責任持ってやります、となれば、虐待を受けて死ぬ子どももいなくなるだろう。安易に産んだ奴が悪いってのは、なし。だって、子どもには責任ないから。 そもそも完全な子どもなんていないんだから。たとえ出生前にいろいろな障害が分かったって、育ててみて初めてわかるその子の特徴があるし、何が幸せかそうでないかは、本人が感じることで、他人が規定するものではないのだから。障害イコール不幸ではない。 とはいえ、本当のところは当事者になってみないと分からないのが難しいところだとは思う。他人はなんだって言えると言われたら黙るしかない。 中期中絶や重い障害の子を治療しないことで死に至らしめることは、いかに現場の、特に医師の指示を受けて働く看護師や助産師が苦しむか、というところも見過ごせない。新しい命を受け取る仕事をしたいと頑張っているのに、命を奪う片棒を担がされるのだから。本当はそんなことをしないで済む社会にすべき。 「子どもを持つというのは未来に対する希望」(P235)という言葉は、政治家がまず噛み締めて欲しい。日本の出生率が下がっているのは未来に希望が持てないからですよ。どんな子どもも受け入れられる社会を作れば、命の選別で苦しむ人も減るし、子どもを産みたい人も増えると思う。 子どもに対する責任を親から社会に移動させたい。 子どもは親が責任持て、という窮屈な社会を変えることで、この出生前診断に関する問題も変わるのではないか、そうすれば命の選別に苦しむ人も減るのではないかと思う。 立場によって考えも異なる難しい問題に果敢に挑んだ良書。

Posted byブクログ