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国体論 の商品レビュー

4.1

28件のお客様レビュー

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2024/05/26

 1945年敗戦と共に消滅するはずであった国体は維持されたものの、内容は激変している。戦前と戦後の国体、これらを分析し、現在の国体について、2016年8月8日の天皇の「おことば」の意味するものを明らかにしようとする。  本書のテーゼとして、著者は、「戦後の天皇制の働きをとらえる...

 1945年敗戦と共に消滅するはずであった国体は維持されたものの、内容は激変している。戦前と戦後の国体、これらを分析し、現在の国体について、2016年8月8日の天皇の「おことば」の意味するものを明らかにしようとする。  本書のテーゼとして、著者は、「戦後の天皇制の働きをとらえるためには、菊と星条旗の結合を、「戦後の国体」の本質として、つまり、戦後日本の特異な対米従属が構造化される必然性の核心に位置するものと見なければならない」と述べる。(序文5頁) 象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(2016年8月8日) https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/12  アメリカを事実上の天皇と仰ぐ国体において、日本人は霊的一体性を本当に保つことができるのか。  もし仮に、日本人の答が「それでいいのだ」というものであるのなら、それは天皇の祈りは無用であるとの宣告にほかならない。われわれがそう答えるならば、天皇はその地位と職務を全うする義務を自らに課し続けるであろうか、それは甚だ疑問である。(終章 338~339頁)

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2023/05/21

2018年4月。同年6月に朝日新聞で評されている。 天皇制を国体とした日本は敗戦後、アメリカ(に従うこと)が国体となった。憲法よりも日米安保が上位に位置付けられている実態。 本書の冒頭と最後に繰り返される平成天皇のお言葉、それへの敬意と、お言葉の中に、闘っている烈しさを感じるとい...

2018年4月。同年6月に朝日新聞で評されている。 天皇制を国体とした日本は敗戦後、アメリカ(に従うこと)が国体となった。憲法よりも日米安保が上位に位置付けられている実態。 本書の冒頭と最後に繰り返される平成天皇のお言葉、それへの敬意と、お言葉の中に、闘っている烈しさを感じるという姿勢。大胆で明快な見方、頭がすっきりする。

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2023/05/03

第二次世界大戦の終結とともに崩壊したとみなされている日本の「国体」という概念を、「戦前の国体」と「戦後の国体」という二つの概念に再編することで、過去から現在までをつらぬく日本の問題と、その変容の過程をえがいた本です。 「戦前の国体」が、「天皇の国民」「天皇なき国民」「国民の天皇...

第二次世界大戦の終結とともに崩壊したとみなされている日本の「国体」という概念を、「戦前の国体」と「戦後の国体」という二つの概念に再編することで、過去から現在までをつらぬく日本の問題と、その変容の過程をえがいた本です。 「戦前の国体」が、「天皇の国民」「天皇なき国民」「国民の天皇」という枠組みの変化をたどっていったのと同様に、「戦後の国体」はかつて天皇が占めていた位置にアメリカが置かれることになり、「戦前の国体」とパラレルな変化をたどったと著者は考えます。そして、日本のナショナリストたちがもはやアメリカへの追随をかくすこともなく全面的に主張するにいたっている現在の日本の状況が生まれた経緯を解き明かしています。 戦後のアメリカ追従という問題について深い考察をおこなった人物としてただちに思い浮かぶのは、批評家の江藤淳です。むろん江藤は、本書のキーワードである「国体」という概念を中軸にして考察をおこなったわけではありませんが、小島信夫の『抱擁家族』を参照しつつ、近代日本の家父長制が敗戦によって決定的な変容をこうむったことに目を向けており、文学の領域における「アメリカの影」について鋭い考察をおこないました。本書では、文学にかかわる人物としては三島由紀夫がとりあげられていますが、もっぱら三島が直接的な行動に出た理由について検討するにとどまっており、あえて著者は文学の問題に立ち入ることを避けたのかもしれませんが、著者とは政治的立場の異なる江藤の議論について、著者がどのように評価しているのかということが、個人的には気になっています。

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2023/01/30

文字通り戦後の日本とアメリカの関係について。 文章のせいか、著者の言いたいことがわかりにくかった。

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2022/02/02

非常に刺激的な論説。 今を生きる我々日本人の国体とは何か、そんな考え方をしたことはなかった。しかし「史劇は2度繰り返される」のならば、そして、戦前の国体の最終段階が二・二六事件を引き起こしたのならば、戦後の国体は今、何に向かっているのか。考えないわけにはいかない。 僕にとっては少...

非常に刺激的な論説。 今を生きる我々日本人の国体とは何か、そんな考え方をしたことはなかった。しかし「史劇は2度繰り返される」のならば、そして、戦前の国体の最終段階が二・二六事件を引き起こしたのならば、戦後の国体は今、何に向かっているのか。考えないわけにはいかない。 僕にとっては少し難しいと感じたので、星4つ。

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2021/04/06

(天皇による退位希望の「お言葉」は)「国民の統合」の危機により、象徴天皇制について国民が考えるよう天皇自らが訴える、という異例の行動だった33 世界史上でも稀な、途轍もなく奇妙な敗戦、すなわち、どのような敗北を喫しているのか敗者自身が自覚できないことによってそこから脱出できなく...

(天皇による退位希望の「お言葉」は)「国民の統合」の危機により、象徴天皇制について国民が考えるよう天皇自らが訴える、という異例の行動だった33 世界史上でも稀な、途轍もなく奇妙な敗戦、すなわち、どのような敗北を喫しているのか敗者自身が自覚できないことによってそこから脱出できなくなるような異常な敗北を経験している38 「アメリカは我が国を愛してくれているから従属するのだ(だからこれは別に従属ではない)」などという観念を抱きながら従属する国・国民など、ただのひとつもない(日本だけ)。まさにここに、「我が国の万邦無比たる所以」がある。125 ポツダム宣言受諾で、日本の主権は天皇から国民にでなく、マッカーサーに移ったのである154 砂川事件裁判で、日米安保条約に関わる法的紛争については、日本の司法は憲法判断を回避する判例を作った。これにより、日本の法秩序は日本国憲法と日米安保法体系の「二つの法体系」が存在され、後者が前者に優越する構造が確定した158 「マッカーサーはへそだ。朕の上にある」by出口王仁三郎162 日本のアイデンティティーは何がと問われれば、「アメリカの同盟国だということ以外出てこない」。結局アメリカのやることにいかにお手伝いできるが、たくさん手伝えるほうが良い同盟というしかない。by元防衛官僚 柳沢協二312 「大君(アメリカ)の醜の御盾と出で立つわれ」313 私たちの生きている現在はたぶん、天皇制という宗教的かつ儀礼的な構造を支えてきた物質的な基盤が、やがて根こそぎに失われようとしている未曾有の時代である。天皇という制度は避けがたく形骸化してゆくby赤坂憲雄318 天皇制は「人畜無害の骨董品」のごときものになり、国民国家の統合原理として無力化する可能性320 戦前の天皇制については簡にして要を得た特徴づけに成功している議論が、天皇制の現在を扱おうとするや否や甚だしい混乱に陥るのは、なぜだろうか。それは、「戦後の国体」はアメリカという要因を抜きにしては考えられないから321 「お言葉」は、後醍醐天皇の「倒幕の綸旨」、孝明天皇の攘夷決行の命令、明治天皇の五ヶ条の御誓文、昭和天皇の玉音放送、と同様の歴史的事案338

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2021/03/21

戦前と戦後に分けて「国体」の変遷を比較検討しています。日本人にとって天皇制とは何なのか、なぜアメリカの顔色をうかがい続けなくてはならないのか、なぜ鬼畜米英と叫び、多くの国民を死に追いやった勢力がいままさにそのアメリカに盲従するのか・・・ 歴史を勉強するって大事ですね。 ですが、新...

戦前と戦後に分けて「国体」の変遷を比較検討しています。日本人にとって天皇制とは何なのか、なぜアメリカの顔色をうかがい続けなくてはならないのか、なぜ鬼畜米英と叫び、多くの国民を死に追いやった勢力がいままさにそのアメリカに盲従するのか・・・ 歴史を勉強するって大事ですね。 ですが、新自由主義とカジノ資本主義にどっぷりつかった現状で、どう反撃するのか、はやっぱり難しそうです。何しろ最も搾取されているはずの人びとが現体制を支持している訳ですから・・

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2020/11/22

欧米人へのコンプレックスとアジア諸国へのレイシズムを利用すれば、アメリカへの従属を保ちつつアジアで孤立するので対日支配がうまくいくと考えたダレスの話はなるほど...!と感じた。 天皇とアメリカから国体意識の変遷を眺めることは、日本人の精神史でもある。民衆が変わらねばならないのだ...

欧米人へのコンプレックスとアジア諸国へのレイシズムを利用すれば、アメリカへの従属を保ちつつアジアで孤立するので対日支配がうまくいくと考えたダレスの話はなるほど...!と感じた。 天皇とアメリカから国体意識の変遷を眺めることは、日本人の精神史でもある。民衆が変わらねばならないのだとは思うが、その民衆もすぐには変わらない。226事件も学校で習った時には国に逆らったら死刑ということを何の疑問もなく教わったが、大人になった今はそうでもないと分かるようになった。教育も、メディアも、何もかも変わらないと人も変わらないが、そのエントリーポイント、発火点が自分にはよく見えない。

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2020/07/07

「民衆の力」をおそらく信じておられると思うので、読後感は暗くはないはずなのだが、「今」の状況で読むと、無力感をより強く感じてしまう。それがダメなんだと思うのだが… 負けない!

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2020/10/03

社会を見つめる“知性”というものが、どういうものか、この本を読んで初めて感じることができた気がします。 明治から、こんにちまで、日本という国が抱え続けてきた、矛盾を「国体」という形で解きほぐす本。 読後感としては、今後の日本への絶望感が強く残りました。 どうすればいいのだろうか...

社会を見つめる“知性”というものが、どういうものか、この本を読んで初めて感じることができた気がします。 明治から、こんにちまで、日本という国が抱え続けてきた、矛盾を「国体」という形で解きほぐす本。 読後感としては、今後の日本への絶望感が強く残りました。 どうすればいいのだろうか。

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