戦う操縦士 の商品レビュー
1940年ドイツに侵略され敗北しつつあるフランス軍の偵察機に乗り、もたらした情報を有効に使う友軍がいない中を、帰還がほぼ絶望的な命令に従って出撃して生還した飛行を振り返るサン・テグジュベリの小説。この物語がフランスが降伏した後、亡命したアメリカで執筆されたことを差し引いたとしても...
1940年ドイツに侵略され敗北しつつあるフランス軍の偵察機に乗り、もたらした情報を有効に使う友軍がいない中を、帰還がほぼ絶望的な命令に従って出撃して生還した飛行を振り返るサン・テグジュベリの小説。この物語がフランスが降伏した後、亡命したアメリカで執筆されたことを差し引いたとしても、自由や平等について記された言葉は重い。「私は信じる。<人間>の優越こそが唯一意味ある<平等>を、唯一意味ある<自由>を築き上げるものだと。…<平等>とは<同一性>ではない。<自由>とは個人を<人間>よりも賞揚することではない。したがって私が戦うのは、それが誰であれ、<人間>の自由をある個人にーあるいは個人からなる群れにー隷従させようとする者だ」
Posted by
“どんな人間であろうと、責任を感じながら絶望することなどできるわけがない” P. 251 悲観しながらも、なぜ前に進もうとするのか。現実から目を背けているわけではない。そう、責任があるからだ。覚悟とまで胸をはって言えなくても、それを投げ出したりはしない。僕らは最後の砦なのだから...
“どんな人間であろうと、責任を感じながら絶望することなどできるわけがない” P. 251 悲観しながらも、なぜ前に進もうとするのか。現実から目を背けているわけではない。そう、責任があるからだ。覚悟とまで胸をはって言えなくても、それを投げ出したりはしない。僕らは最後の砦なのだから。 “なにをするべきか? 答えは無数にある。これを。あれを。あるいは別のことを。未来はあらかじめ決められてなどいないのだ。いかにあるべきか? これこそが重要な問題なのだ。精神があってはじめて、知性は豊かに生み出す力を持つのだから” P. 254‐5 いかにあるべきか? あるべき姿、ビジョンなんでもいい。これを思い浮かべることができなければ、現状とのギャップを見出すことなどできやしない。そして、それこそが、僕らが取り組むべきプロブレム。それさえはっきりすればあとは行動しかない。そういった行動が僕を築きあげていく。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「人間の土地」や「夜間飛行」と同じスタンスで 読み進めていましたが、本作は負けると分かっている 戦争での不可能であろうと思われる任務である 偵察飛行を遂行し、帰還するまでが描かれており その中で著者が思い巡らしたことが 書かれてるのか?と思っていたものの途中から 違和感を覚え… 「結局のところ、なぜ我々はいまだに戦って いるのだろうか?《民主主義》のため?(中略) ならば《民主主義陣営》のほかの連中も一緒に 戦ってくれればいいじゃないか!」(P179)と 他国を攻める姿勢になり、名指しはしないものの アメリカを非難します。 すでにアメリカではベストセラー作家であった 著者のこの作品の目的は「祖国の立場を弁明し、 民主主義という大義を共有するアメリカがヨーロッパの 戦争に参戦するよう促すことである。」(P312) でしたが、本作の発売前にアメリカは参戦し、 その後、「アメリカの読者はこの作品を、今や 戦友となったフランスの勇気ある戦いの記録として 熱狂的に受け入れた。」(P312)ということでした。 とても素晴らしい作品ですが、今後こういった 目的で書籍が作り出されることがないことを 願うばかりです。。
Posted by
人は何のために生きて、何に命を賭けるのか。 人間とは?個人とは? 戦争体験から生まれた思考はとても哲学的で、はっとさせられる記述もあり、すぅっと読めます。 やはりサンテグジュペリは面白い。 ぜひ。
Posted by
1940年5月-6月のドイツによるフランス侵攻のさなか、 3人乗りの偵察機の機長としてフランス軍に従軍している人物 (ほぼサン=テグジュペリと同一人物)の一人称による 思索的小説。 敗色濃厚のフランスで、主人公は前線付近の偵察のために 飛び立っていきます。 高高度による影響によ...
1940年5月-6月のドイツによるフランス侵攻のさなか、 3人乗りの偵察機の機長としてフランス軍に従軍している人物 (ほぼサン=テグジュペリと同一人物)の一人称による 思索的小説。 敗色濃厚のフランスで、主人公は前線付近の偵察のために 飛び立っていきます。 高高度による影響により機械あるいは身体に不調が現れ、 ドイツ軍の戦闘機隊の襲撃をかわしながらも、 なんとか偵察を終え主人公は帰還します。 死が日常のこととして眼前にある状況で、 自分が行う偵察は大勢にはなんら影響を 及ぼさないことを知りつつ飛行する主人公。 自分は何のために戦うのかを自問するなか、 「人間」のために戦うのであるという 回答を見出します。 ただ、ドイツの側も別の立場から「人間」のために 戦っていたのであり、そして、この考え方はえてして 「相手は人間ではない」などといった考えに なりがちなのは注意しなければなりません。 そして結局、戦争とは 勝利したほうが「人道的な存在」であり 敗北したほうは「非人道的な存在」となる という現代の現実が存在します。
Posted by
原書名:PILOTE DE GUERRE 著者:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Saint-Exupéry, Antoine de, 1900-1944、フランス、作家) 訳者:鈴木雅生(1971-、フランス文学)
Posted by
解説にあるように、これはまさにイニシエーションの、通過儀礼の本だ。 こんなあからさまに素直な言葉を重ねていけるものかと驚いた。 人は肉体でもなく精神でもなく、行為だ、というあたりは感動した。プラトンよりもアリストテレスよりもデカルトよりも《人間》なのだ。 出撃というイニシエー...
解説にあるように、これはまさにイニシエーションの、通過儀礼の本だ。 こんなあからさまに素直な言葉を重ねていけるものかと驚いた。 人は肉体でもなく精神でもなく、行為だ、というあたりは感動した。プラトンよりもアリストテレスよりもデカルトよりも《人間》なのだ。 出撃というイニシエーションを通して全く世界が別のようにみえるその前とその後を描いている。 後半は正直言って、ちょっと長い。これは時代の、状況のズレによるものなのか、前提とするものが少し違うし、重ねるべき言葉の量も違うのだろう。 人は行為のなかにある。
Posted by
- 1
- 2