10万個の子宮 の商品レビュー
医師でありジャーナリストでもある著者が、子宮頸がんワクチンの接種停止を批判する書。よく取材しているし、科学的かつ学術的に主張を展開しており、説得力がある。久々に出合った感動的な本である。著者は、海外への発信力もあり、すばらしい人物だと思う。 本書を批判する人たちは、ジョン・マド...
医師でありジャーナリストでもある著者が、子宮頸がんワクチンの接種停止を批判する書。よく取材しているし、科学的かつ学術的に主張を展開しており、説得力がある。久々に出合った感動的な本である。著者は、海外への発信力もあり、すばらしい人物だと思う。 本書を批判する人たちは、ジョン・マドックス賞を授与した「ネイチャー」誌などの権威ある組織を批判するのだろうか。 「日本では毎年、子宮頸がんによって3000の命と1万の子宮が失われている」p1 「世界どの国でも、新しいワクチンが導入されればそれに反対する人は必ず出てくる。日本には、他の国にはない厄介なことが二つあった。ひとつは、政府がサイエンスよりも感情を優先したこと。もう一つは、2014年初頭、わざわざ病名まで作って「薬害」を唱える医者たちが登場したことだ」p2 「昨今、科学的根拠に乏しいオルタナティブファクトやフェイクニュースが、専門的な知識を持たない人たちの「不安」に寄り添うように広がっている」p3 「(子宮頸がんワクチンの接種勧奨停止措置)安全性が確認されたワクチンを事実上、接種停止状態にし、挙句の果てに訴えられてしまったという国は世界でも日本しかない。日本の政策判断はWHOからも過去3回、名指しの批判を受けている」p21 「子宮頸がんワクチンは、わが国において「思春期の少女だけ」に接種することになった初めてのワクチンだ。「ワクチンによって患者が生まれた」のではなく、「ワクチンによって思春期の少女にもともと多い病気が顕在化した」のである」p32 「HANS(子宮頸がんワクチン障害)で中枢神経の障害に由来する症状として挙げられているものと(DSM-IVは)よく重なる。DSM-IVが出されたのは1994年。子宮頸がんワクチンが2006年に登場する10年以上前から、このような症状の患者がいたことがわかる」p45 「言うまでもなく医療訴訟は弁護士にとっては大きなビジネスチャンスだ。中でも薬害訴訟は国や製薬メーカーを相手に巨額のリターンが見込まれるため、アメリカでは薬害訴訟に特化した弁護士事務所があるほどである」p50 「左翼系反ワクチン論者は、大きな製薬会社に象徴される資本主義、政府や医師、科学者といった専門家に対する反知性主義的な立場から、標準治療に疑念を抱き、代替医療やオーガニック食品を好む傾向にある人たちである。政府や専門家の背後には製薬会社との利益相反がある、との陰謀論を唱えるのもこのグループだ。日本の反ワクチン論者もこのグループに入る。反安倍政権、反原発、反安保などとセットになっているのが特徴だ」p212 「(名誉棄損訴訟)いわば「訴えた者勝ち」の法制度は、科学不正を指摘する声を委縮させ、科学不正をごまかすための温床ともなる。「科学と司法の分立」は、今後、日本でもっとも真剣に議論されるべきだろう」p221
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科学技術と、社会の受け止めの問題を描いた一冊。 不安寄り添い村の発生は止めることができないのだろうか。 科学技術による不幸の軽減を目指す人と、それを善意からとはいえ阻害する人。 素直にこの本を読むと、そういう構造だが、本当にそう受け止めていいのだろうか。 迷いも残る。 娘にワ...
科学技術と、社会の受け止めの問題を描いた一冊。 不安寄り添い村の発生は止めることができないのだろうか。 科学技術による不幸の軽減を目指す人と、それを善意からとはいえ阻害する人。 素直にこの本を読むと、そういう構造だが、本当にそう受け止めていいのだろうか。 迷いも残る。 娘にワクチンを接種させるかどうか。 結局、こうした争い事に巻き込むことになることを思えば、ちょっと躊躇してしまう。 そうなれば、不安寄り添い村の皆さんの「勝利」となってしまう。 不作為の罪をどう捉えるか。 判断の時間は限られているとこを思うと…
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子宮頸がんワクチンとその「副作用」に関する騒動はなんとなく知っていて、ワクチン接種と副作用とされる症状の間に因果関係を示す科学的な証拠が見つかっていないことも理解はしていた。 モヤモヤしていたのは、証拠がないのになんでワクチンが原因という話になっているのかよくわからない上に、ワク...
子宮頸がんワクチンとその「副作用」に関する騒動はなんとなく知っていて、ワクチン接種と副作用とされる症状の間に因果関係を示す科学的な証拠が見つかっていないことも理解はしていた。 モヤモヤしていたのは、証拠がないのになんでワクチンが原因という話になっているのかよくわからない上に、ワクチンの定期接種が止まっていると聞いたからだ。 もちろん、因果関係を証明できない=因果関係がない、ではないから、ワクチン接種をためらう気持ちはわかる。であればなおさら、ワクチン有罪説の根拠が重要だし、根拠があるならその根拠が科学的に肯定/否定できない理由がわからない。 というわけで、この件で知りたかったことが2つ。 その1。そもそもいろいろな症状がワクチン接種の副作用だ、という話がいったいどこから出てきたのか。その根拠はなんなのか。 その2。なぜ統計解析を行わないのだろうか? ワクチン接種群と非接種群で「副作用」の発現頻度を確認したら、ワクチンのせいかどうかすぐわかるだろうに。 読んでびっくりしたのだが、「その2」についてはすでに名古屋市の調査結果が出ているという。結果はシロ。つまり「副作用」の発現頻度にワクチン接種との相関関係が認められない。 「その1」については残念ながら本書ではよくわからない。ワクチンは無関係という立場で書かれている本だから当然なのかもしれないが、そこを知りたかったのだけれどな。ちょっと検索してみたらワクチン有罪説の本が相当あるみたいなので、そっちを読んでみよう。 ちなみに、ワクチン有罪説を唱える池田教授の論文には問題があると著者が指摘したので、両者の間で訴訟に発展しているそうだ。当事者には面倒なことだと思うが、白黒つけるのは良いことだ。ただ、ちょっと気になる点がなくもない。法廷というのは論文の科学的な評価にまで踏み込むんだろうか? 論文は正しいか間違っているかちょっとわかんないけど、悪口言ったのは確かだからアウト、みたいなことにならないだろうか? ワクチン有罪説の根拠がわからないので結論は保留するが、本書を読んだ限りではワクチン有罪説は分が悪そうだな。 というわけで、科学と理屈で決着がつけばすっきりするわけだが、そうはいかないのがこの件の気持ち悪いところだ。 名古屋市の統計調査の結果は一度公開されたあと、うやむやのうちに非表示になってしまったそうだし、本書の出版もかなりもめたらしい。理屈はともあれ、ワクチン怖いという人が多いなら定期接種の停止はやむを得ないとは思うが、客観的な調査結果や、科学的な裏付けのある主張を隠蔽する動きというのはアホかいとしか思えない。 なお子宮頸がんワクチンは当事者が望めば打てるらしい。ちょっとホッとした。
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子宮頸がんワクチンについては、時系列を完全に追えず、断片的な知識しかないことが前から非常に気になっていた。ワクチンを専門とする医師の講演を聞いても、ただでさえワクチンについては世界に遅れをとっていた日本だが、子宮頸がんワクチン薬害騒動がワクチン普及をさらに何年も遅らせたと悔しげに...
子宮頸がんワクチンについては、時系列を完全に追えず、断片的な知識しかないことが前から非常に気になっていた。ワクチンを専門とする医師の講演を聞いても、ただでさえワクチンについては世界に遅れをとっていた日本だが、子宮頸がんワクチン薬害騒動がワクチン普及をさらに何年も遅らせたと悔しげに話す。その経緯がきちんと理解できていないことはずっと気がかりだった。 医師の話で、もちろんいくつかのワクチン接種が普及しない理由は公費補助がなくて高額であることとか、接種するものがいろいろあって煩雑で接種を忘れること、混合接種が進んでいないことなどいろいろあるとは聞いていたが、そもそもワクチンに対する理由なき恐怖が根底にあることも否定できない。ステロイド剤はできるだけ使わない方がいいという迷信的なものと同じ。薬を飲んでいても、ちょっと良くなってきたので勝手に服薬をやめてしまうなんていうのも同じ流れかもしれない。抗生物質でそんなことをすると、運が悪いと耐性が生じるなどというしっぺ返しが待っていることもあるのだ。 全ての薬にはリスクがある。効果もあれば、副作用もある。メリットとデメリットのバランスで効能の本質は語られなければならないということなのだ。 この本では、子宮頸がんワクチン薬害騒動の流れが極めてジャーナリスティックに、そしてサイエンティフィックで偏見なくフラットに描かれている。 前に「子供ができて考えた、ワクチンと命のこと」という本を読んで感銘を受けたが、この作品はそれに匹敵する素晴らしい仕上がりの本となっている。 とかくいろいろな見方のされる本ではあろうが、個人的には非常に優れた一冊と感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ガンの一部はウイルスによることが今や周知の事実になっており、ワクチンによるガンの予防は現代公衆衛生による大きな勝利であろう。 残念ながら、子宮頸がんワクチンの普及は極めて困難な現状となっているが、かつては海外でもMMRワクチンが自閉症を増やしている、などのデマが世間を賑わせた(たしかLancetにも論文が出て、その後取り下げになった)。基本的な医学、統計リテラシーを欠く人達によるこうした批判というのはどの国も通る道なのかもしれない。幸いなのは、接種が禁止となったわけではなく、希望すれば受けられる道は残っているということだろう。親としては正しい選択をしてやりたいと思う。 しかし、このタイトルはどうにかならなかったのだろうか。なんだかすごく生々しい。 ・HPVには100以上の型があるが、がん化しやすいものは決まっており、現在のワクチンはこのうち2つに対する予防効果がある。このワクチンで国内の全子宮頸がんの約65%をふせぐことが期待されている。さらに最近のワクチンである7つの型に予防効果のある「9値ワクチン(子宮頸がん以外の肛門がん、咽頭がんなど男性に多いがんの原因も含む)」を用いれば90%以上の予防効果が期待される。 ・2013.4に定期接種化されたが直後からけいれん、歩けない、慢性疼痛、記憶力低下などを訴えるケースが相次ぎ、これらは政府の公式な見解としても心因性のものであるということになっているが、「積極的な摂取勧奨の一時差し控え」が続いている。定期接種化前も各自治体の補助などで無料接種が行われており7割の接種率であったが、2014以降は1%以下になっている。 ・HANS(HPV Vaccine Associated Neuroimmunopathic Syndrome) 線維筋痛症学会などではHANSの治療薬としてメマリーやアリセプトを用いることになっているというが、ワクチンを危険だと主張しておきながら少女らに認知症の薬を投与することの矛盾。また、自己免疫のメカニズムが疑われているためステロイドパルス療法も標準的な治療だという。 ・ワクチン接種後に起きた症状はすべてワクチンのせいだという論理に無理がある。また、接種後数年立って起きた症状もワクチンのせいだということになっているので「証拠」はいくらでも出てくる ・婚前性交渉への反対の立場からこのワクチン接種に反対する人も多い ・厚労省によると、2015までに338万人が摂取し、副反応の疑いがあったものが1739名。いまだに症状が残っているものは186名だという
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もともとメディアは真実より わかりやすさや面白さをまず重視して 中身なんて実際大して大事ではない。 そしてSTAP問題でもそうだったけど 真実は信じたい側にある。 私自身、新聞やニュースの報道だけを見て 薄っぺらな常識に満足してしまいがちだし 一般の人には科学的エビデンスだって ...
もともとメディアは真実より わかりやすさや面白さをまず重視して 中身なんて実際大して大事ではない。 そしてSTAP問題でもそうだったけど 真実は信じたい側にある。 私自身、新聞やニュースの報道だけを見て 薄っぺらな常識に満足してしまいがちだし 一般の人には科学的エビデンスだって 一体なんぞやって感じだろう。 どんな問題でもいろんな視点から物事を見て 自分で判断する姿勢を忘れないようにしないと。 メディアが偏っている時は特に。
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坂村健 事態がわからない時に、非常ベルを鳴らすのはマスコミの立派な役割。しかし、状況が見えてきたら解除のアナウンスを同じボリュームで流すべきだ
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子宮頸がんワクチンは、原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぎ、子宮頸がんの発症を予防するワクチンである。日本では2009年に承認、以後、2010年から中学1年生から高校3年生相当の女子を対象に、接種の助成も行われてきた。 ところが、2013年、歩行障害や著しい記憶...
子宮頸がんワクチンは、原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぎ、子宮頸がんの発症を予防するワクチンである。日本では2009年に承認、以後、2010年から中学1年生から高校3年生相当の女子を対象に、接種の助成も行われてきた。 ところが、2013年、歩行障害や著しい記憶障害といった重篤な副作用を訴える例が大きく取り上げられたため、積極的な接種の呼びかけが控えられることになった。 2016年には子宮頸がんワクチンによる被害を訴えた国家賠償請求訴訟が起こされている。 日本では、毎年、子宮頸がんによる死者は3000人、摘出される子宮は1万個という。 子宮頸がんワクチンが有効であるならば、この数は0とはいかなくともかなりの減少を見せるはずである。 一方で、日本では、国家賠償請求訴訟が終わるまでには10年を要すると言われる。おそらく、その間は、助成金を伴うワクチン接種が本格的に再開されることは困難だろう。 年間1万個x10年、つまり10万個の子宮が、このために失われてしまうだろうというのがタイトルの主旨である。 いささか扇情的な印象も受けるが、著者は「敢えて」そこを狙っているのかもしれない。 Aが起きてBが起きる。時系列的にはそうであっても、それが即、Aが原因となってBが起こるという因果関係であることにはならない。そこを科学的に解明する際には、「エビデンス(証拠)」が必要となってくる。 だが、子宮頸がんと重篤な副作用の間にはそのエビデンスが控えめに言っても十分ではないというのが著者の主張である。 不幸にして、重篤な症状を示す少女たちは実際に出た。が、その原因が本当に子宮頸がんワクチンなのか。 そうではないとするならば、この問題がこれほど大きくなった背景には何があるのか。 著者は、このワクチンと副作用との因果関係に関して慎重に検討し、メディアを通じて発表してきた。 2017年には、国際的なジョン・マドックス賞を受賞している。この賞は、長年、科学誌Natureの編集長を務めたジョン・マドックス(2009年物故)にちなんで2012年に創設されたもので、「公共の問題に関して、堅実な科学とエビデンスを広めた個人(an individual who has promoted sound science and evidence on a matter of public interest)」に与えられる。受賞者には代替医療や認知の歪みの問題と取り組んだジャーナリストや医師、研究者が並ぶ(2016年受賞者はエリザベス・ロフタス(『抑圧された記憶の神話』))。 だが、これに先んじて、2016年にワクチン薬害を主張した医師の1人から、名誉毀損で裁判を起こされている。 国家賠償訴訟の影響もあり、本書のもとになる記事の連載は打ち切られ、本書刊行までも多くの出版社が難色を示したという。 本書では、子宮頸がんワクチン問題を整理し、データを科学的に検証し、ワクチン問題の社会学的側面を検討する。実際にワクチンを受け、重篤な障害を発症した少女本人にも取材している。 少女たちが重篤な症状を起こしたのは痛ましいことだ。 だが、それがワクチンのせいであるとする医師たちが行っている治療が、本当に妥当なものであるのか、という問題もある。 反ワクチン運動はとかく激しくなりがちである。それが感情的なものを伴うのか、あるいは「科学」や「巨大製薬会社」というある種の「権威」に対する反発なのか、さまざま考えさせられる点は多い。 この件には、報じられている以上に、大きな根深い問題が隠れているようにも思える。
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よく言ってくれた.普通の医者だったらけいれんの動画を見ただけで詐病ってわかると思うけどなあ.何でワクチンの副作用と主張する医者がいるんだろ?しかも偉いさんに.
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詐病ならいいけれど,患者さんが原因を偽ることで本当にすべき治療が遅れるのならそれはこわいことだと感じていました.でも事態はもっとひどいことだったのですね.朝日新聞を取るのをやめようかとも思いました.マスコミは本当に信用ならない.もっとこの本が読まれることを祈ってます.
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