蓮の数式 の商品レビュー
夫と義母からのモラハラに耐え続ける千穂。その生活から透をきっかけにして生きるために逃げる。 ディスカリキュリア(算数障害)の透との刹那的な生活に希望を抱く千穂。でもその生活が続かない事は千穂がよく分かっている。そんな生活に希望を見ないといけない千穂の心情が破滅的だ。 出てくる...
夫と義母からのモラハラに耐え続ける千穂。その生活から透をきっかけにして生きるために逃げる。 ディスカリキュリア(算数障害)の透との刹那的な生活に希望を抱く千穂。でもその生活が続かない事は千穂がよく分かっている。そんな生活に希望を見ないといけない千穂の心情が破滅的だ。 出てくる人がみんな幸せではない重い内容だった
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
凄い作品だった。 人間の厭らしい所と素晴らしい所が随所に散らばっていて考えさせられる事がいっぱいあった。 ストーリー背景は何故か昭和をイメージしてしまう。携帯電話とかネットとか出てくるのにも関わらず登場する人物達が何故かその雰囲気を醸しだしている。 ミステリーというよりは官能的であり文学的だと感じた。 「コンプレックス」がテーマになるだろうか? 各々のコンプレックスが積み上げられ、過去が継続して現在に至り、苦しみの中で更に苦しみを重ねる。 勿論希望もある。しかし希望に希望を重ねる事はしない、それをしてはいけないという抑止力がそうさせる。 弱さが顕著には出せず、理解の薄い人間関係の中で飲み込むしかないようにその弱さを溜める。そして苦しむ弱い者達が更に弱い者を苦しめる。なめあおうとしない。 究極の人間らしさなのかもしれないと感じた。 最後は投げかけられるような、問いかけられるかのような終焉。 まるで自分に言われているみたいな感覚を覚えた。
Posted by
何度もため息をついて本を閉じた。 12年前の殺人事件の真相や高山透の正体のミステリーの謎解きはもちろん、二人の逃亡生活の顛末が気になって先を読み進めたいとはやる気持ちもあるのに。 僅かな自分の大切なものを守るために躊躇も罪悪感も後悔も無く人殺しを重ねる透の心の壊れっぷりが凄まじく...
何度もため息をついて本を閉じた。 12年前の殺人事件の真相や高山透の正体のミステリーの謎解きはもちろん、二人の逃亡生活の顛末が気になって先を読み進めたいとはやる気持ちもあるのに。 僅かな自分の大切なものを守るために躊躇も罪悪感も後悔も無く人殺しを重ねる透の心の壊れっぷりが凄まじくて、あまりに不幸な生い立ちに同情しても真っ直ぐに感情移入が出来きず、逃亡劇が順調でもモヤモヤするし悲惨な結末に突き進んでいっても悶々とする。 一筋の希望の光が差す結末ということなのか。この悲痛な物語を読んだ後には直ぐには素直にそうは受け止められない。
Posted by
人の想いもその想いの受け取り方も思うようにはいかなくて、すれ違ったり誤解を生んだり、重なって重なってある日悲劇がおこる。遠田潤子さんの作品は崖っぷちを歩く人がたくさん出てくるのでいつも胸が痛い。
Posted by
算数障害の男とそろばん塾の女の逃避行 ってことになるのかな 女は既婚だが夫と姑に挟まれて・・・ あの展開はしょうがないよなぁ でもやりすぎ 流れの中で徐々に明らかになる男の過去 そして男を追う男たち 引き込まれました
Posted by
長年の不妊治療と四度の流産と、高圧的な夫、姑との苦しい生活から逃れたのは、年下の影のある青年、高山透との出会いだった。 そろばん塾を経営していた千穂は、彼が算数障害を抱えて苦しんでいることに気づく。 浮気を疑う夫に暴行され、それを止めない姑。ボロボロになった千穂が頼ったのは、透だ...
長年の不妊治療と四度の流産と、高圧的な夫、姑との苦しい生活から逃れたのは、年下の影のある青年、高山透との出会いだった。 そろばん塾を経営していた千穂は、彼が算数障害を抱えて苦しんでいることに気づく。 浮気を疑う夫に暴行され、それを止めない姑。ボロボロになった千穂が頼ったのは、透だった。 罪に罪を重ねて、二人の逃避行が始まる。 久しぶりの遠田作品。 毎回読む前からわかっているのに、ズンと気持ちが凹む。これでもかという程、理不尽な目に合い、闇を抱えた主人公につい感情移入してしまう。 逃げて、逃げて、逃げ切って欲しいとラストまで一気に読んだ。 終章の恵梨視点の内容に唖然とし、無性に腹が立つ。子供だったとはいえ、麗を更にあの環境にしてしまった罪は重いはずだ。 娘にも申し訳ない気持ちがあったから、父が真実を伝えてないだけで、読み手の自分はなんだこいつ?!と怒りが・・・・笑 今回も遠田ワールドにどっぷりはまってしまった。
Posted by
今まで読んだ遠田作品の中では一番好きかも。 遠田作品は基本暗くて重いから、読み終わった後にもう読むのやめようと毎回思うけど、なぜかまた手に取ってしまう。 本作が一番好きと思ったのは新藤賢治という救いがあったからかな。 相変わらず結末は悲しいけど、読後感は悪くない。
Posted by
自分を大切にしてくれない夫と義母の生活にぷつんと切れた妻の逃避行。逃避行の相手は闇を抱えた男。登場人物みんなに悲しい過去が…。
Posted by
不妊は病気ではないと思うが治療で苦しむ千穂が、算数障害という病に苦しむ透と結びつく。辛い人生の中でどうやって生きる意欲を見つけていくかという旅をしているかのような物語だった。スリリングというよりは、ドロドロとした粘っこいストーリー展開が胸に刺さる。文庫化で書き直したという終章はち...
不妊は病気ではないと思うが治療で苦しむ千穂が、算数障害という病に苦しむ透と結びつく。辛い人生の中でどうやって生きる意欲を見つけていくかという旅をしているかのような物語だった。スリリングというよりは、ドロドロとした粘っこいストーリー展開が胸に刺さる。文庫化で書き直したという終章はちょっと違和感ありかしら。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
これは完成度の高い大人の小説だと思いました。 主人公は結婚して13年間、高圧的な夫の安西真一から、義母を殺して逃げようとした千穂35歳と、一緒に逃げた高山透27歳。 千穂は、夫と義母から異常なまでに子供を望まれ、不妊治療を何年もしていましたが、4度の流産を繰り返しています。 真一は結婚してから、性格も性癖も歪んだ倒錯的な人物だったことがわかります。 高山透は数字認識に障害があり、そろばん塾の講師であった千穂と知り合います。 透には子供の頃の殺人事件の犯人として、追いかけてくる新藤賢治という男がいます。 そしてまた透は人との交流を持つ手段をセックス以外に待っていない女性との関係の絶えない人物でした。 そんな二人が逃げたのは透が子供の頃の楽しかった思い出のある能登のスナック「ダリア」。 そこで二人は束の間、夫婦として認められ夢のような短い日々を過ごしますが、透の祖母の邦子に「あんたは誰や。透ではない」と言われ、透は邦子を殺し、またもや逃避行の生活に。 追手は真一と賢治、そして警察も二人を追っています。 逃げ切れる訳のない罪を犯してきた透。 たくさんの人を殺めた透と千穂ですが、この二人にはその不幸な経歴からなぜか感情移入をして、逃げ切って欲しいと思わされます。 そして千穂は透の子供を自然妊娠します。 ラストはエンタメ的要素がさらに加わって、ハッピーエンドにはなりませんが、人間ドラマの描き方が濃密で余韻の残るラストでした。
Posted by