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慶應本科と折口信夫 の商品レビュー

3.7

5件のお客様レビュー

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2022/03/01

大正から昭和初期の日本の名家層の豊かさがよくわかる。   家に借金があって苦しいとあっても、結局、真に迫った危機感はなく、歌舞伎、音楽会に銀座での食事などなど、現代の我々から見ても相当優雅な生活である。 恐らく、次巻で語られる時代は、かなり厳しいものになるであろうことを考えると時...

大正から昭和初期の日本の名家層の豊かさがよくわかる。   家に借金があって苦しいとあっても、結局、真に迫った危機感はなく、歌舞伎、音楽会に銀座での食事などなど、現代の我々から見ても相当優雅な生活である。 恐らく、次巻で語られる時代は、かなり厳しいものになるであろうことを考えると時代の波の恐ろしさが実感できる。

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2021/06/12

「いとま申して」3部作の2作目。北村薫さんが父君である宮本演彦氏の日記を基に構築した青春譚である。舞台は昭和4〜8年、演彦氏が慶應義塾大学で折口信夫に師事した4年間が描かれる。 前作にも増して舞台に通い、西脇順三郎、折口信夫ら非常に豪華な講師陣の薫陶を受けて、学問に情熱を燃やす...

「いとま申して」3部作の2作目。北村薫さんが父君である宮本演彦氏の日記を基に構築した青春譚である。舞台は昭和4〜8年、演彦氏が慶應義塾大学で折口信夫に師事した4年間が描かれる。 前作にも増して舞台に通い、西脇順三郎、折口信夫ら非常に豪華な講師陣の薫陶を受けて、学問に情熱を燃やす演彦氏。昭和初期の学生たちの息遣いを感じつつ、こちらも若かりし頃を思い出しながら読み進めた。 ただ、これが当時の庶民の暮らしと思ってはいけない。なにしろ、大正末から昭和初期の大学進学率はおそらく5%前後。つまり、大学に行けるのはごくわずかなエリートに限られる。実家の経済状態が芳しくないと言いつつ、演彦氏が働くでもなく、頻繁に舞台に通い、書籍を買い漁るのは、やはり恵まれた境遇だったのだろう。 そして本作では、折口信夫がタイトルロールをはる。当時の学生の日記、それも世に出たことのない日記を基に、教師折口の姿が立体的に浮かび上がる。かつて教職にあった北村さんが教育者としての折口の姿を描くのだ。読まない手はない。 父だけではない、去っていく人々の姿を記すことが目的だとする本作。サイドストーリーでは歌舞伎の五代目中村福助のエピソードが印象的だ。写真で見るその姿は、確かに孫の九代目福助、曽孫の六代目勘九郎によく似ている。ここでも歴史は途切れることなく続いている。 次巻でシリーズは幕となる。1作目の冒頭の謎解きも気になる。あまり間を置かずに手を伸ばそう。

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2019/02/06

パソコンの故障で、レビューを書けずにおいて、その後もそのままにしていた。 遅ればせながら、忘備録として記する。 本の雑誌の連載コラムで、北村薫さんが父君の慶応時代に西脇順三郎や折口信夫の謦咳に触れたという話を読んだ。それで、本書は本の雑誌社から出版されたものと勘違いして、本屋...

パソコンの故障で、レビューを書けずにおいて、その後もそのままにしていた。 遅ればせながら、忘備録として記する。 本の雑誌の連載コラムで、北村薫さんが父君の慶応時代に西脇順三郎や折口信夫の謦咳に触れたという話を読んだ。それで、本書は本の雑誌社から出版されたものと勘違いして、本屋で探すのに一苦労。莫迦ですな。 北村さんが父君の日記に、当時の状況などを裏打ちして作品にしたもの。 西脇順三郎については、予科時代の英語教師として、ベニスの商人を題材にした授業のことが語られる。ナニー。無茶苦茶、羨ましいゾ。 しかし、やはり本書の白眉は折口信夫からの薫陶。授業や今ならゼミでの直接指導に、ああ、その授業の声を生で聴いてみたいと何度も感じいった。 家業が苦しい中で後ろめたさを感じながらの歌舞伎観劇。裕福な友人との交際に、変に見栄を張る父君。薫さんの筆は冷静に、でも肉親でなければ書けない心根を感じさせるもの。 当時の桃介の命を削る舞台の凄さにも感じ入った。 それ以外にも、不思議に当時の街の息遣いが間近に感じられる文章だった。 折口の古代研究も、いつか読まなければ。

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2018/04/22

折口信夫とか西脇順三郎とか、本の中の人というか、歴史の登場人物、というくらいの遠さだったのだけど、そうか、そんなに遥か昔の人ではなく、すぐそこで生きていて、授業を教えていたりしたんだよね、と当たり前のことを不思議な心持ちで思ったりしました。歌舞伎はまったく門外漢で、どれだけ凄い人...

折口信夫とか西脇順三郎とか、本の中の人というか、歴史の登場人物、というくらいの遠さだったのだけど、そうか、そんなに遥か昔の人ではなく、すぐそこで生きていて、授業を教えていたりしたんだよね、と当たり前のことを不思議な心持ちで思ったりしました。歌舞伎はまったく門外漢で、どれだけ凄い人なのか実感として把握できなかったけれど、美しさや迫力は伝わってきたし、生きた文章の力ですね。 それにしても、この父にして…という感じだ。ものすごい勉強家。頭が下がる。これから大戦の時代になっていく中でどうなっていくのか、三作目が気になります。

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2017/12/28

【著者のライフワークである三部作第二弾!】昭和四年。慶應本科に進んだ著者の父は、人生に大きな影響を与える知の巨人――折口信夫と西脇順三郎の謦咳に接し、青春を謳歌する。

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