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不死身の特攻兵 の商品レビュー

4.3

159件のお客様レビュー

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    65

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2020/12/20

「"いのち"を消費する日本型組織に立ち向かうには」という帯の言葉が気になり、読みました。副題の「軍神はなぜ上官に反抗したか」という問題提起にもアンサーがなされる本ではないと思います。しかし、現代の日本でも脈々と同じ構造が繰り返されているのではないかと、ハッと...

「"いのち"を消費する日本型組織に立ち向かうには」という帯の言葉が気になり、読みました。副題の「軍神はなぜ上官に反抗したか」という問題提起にもアンサーがなされる本ではないと思います。しかし、現代の日本でも脈々と同じ構造が繰り返されているのではないかと、ハッとさせられる文章の連続でした。 特攻隊そのものについて関心があって読み始めたものではありませんでしたが、当事者が生きているうちには議論できなかった、ようやく特攻について冷静に考えられるようになったのだ、という箇所がとても印象に残りました。

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2020/10/10

陸軍の第一回の特攻隊、万朶隊に選ばれた若きパイロット佐々木。 出撃を前に、日露戦争を生き延びた父の「人間は、容易なことで死ぬもんじゃない」という口癖と、上官の岩本大尉の命を賭けた抗命を目の当たりにして、生きて帰ることを決意する。 持ち前の操縦技術と強運により、9回出撃してなお生還...

陸軍の第一回の特攻隊、万朶隊に選ばれた若きパイロット佐々木。 出撃を前に、日露戦争を生き延びた父の「人間は、容易なことで死ぬもんじゃない」という口癖と、上官の岩本大尉の命を賭けた抗命を目の当たりにして、生きて帰ることを決意する。 持ち前の操縦技術と強運により、9回出撃してなお生還した特攻隊員を追いながら、特攻という愚行の真実を紐解く。 末期の戦闘の中にあって、軍部の各階級の人物たちがそれぞれどのように特攻を捉えていたのか、佐々木はなぜ命令に背きながら生還できたのか。 特攻隊について初めて知ることが多く、文中に引用された他の書もぜひ読んでみたいと思った。

Posted byブクログ

2020/09/03

「飛行機に乗ったら何もかも忘れる」 佐々木友次さんの、空を飛ぶことが好きだという気持ちが、9回の出撃からの帰還につながったのでは、とする鴻上尚史の文章(朝日新聞2020.8.10朝刊)を目にして読んでみた。戦争物はほとんど手にしてこなかった自分に、もっともらしいことを言う資格は...

「飛行機に乗ったら何もかも忘れる」 佐々木友次さんの、空を飛ぶことが好きだという気持ちが、9回の出撃からの帰還につながったのでは、とする鴻上尚史の文章(朝日新聞2020.8.10朝刊)を目にして読んでみた。戦争物はほとんど手にしてこなかった自分に、もっともらしいことを言う資格はないので、覚書のみ。 「万朶隊は5人の将校さんが、攻撃に出る前に戦死したんです。佐々木は将校5名分の船を沈めるまでは、死なないつもりです。」(p127) 「(友次さんの言った)「寿命」という言葉は強く響きました。それ(9回の生還)は「寿命」で、寿命は自分で決めるものじゃない」(p207) 「「特攻はムダ死にだったのか?」という問いをたてることそのものが、亡くなった人への冒涜だと思っています。死は厳粛なものであり、ムダかムダでないかという「効率性」で考えるものではない~けれど「命令した側」の問題点を追及することは別です。」(p227) 「いかに戦争であっても、生還の見込みがゼロの作戦を、組織として採用すべきではない。どんなに不利な戦いでも、どんなに負け戦でも、指導者として踏みとどまる限界があるのではないか。それが人類の英知」(p239) 特攻兵として飛び立った空の上で、信じられないことに、飛ぶことの楽しさを感じていた友次さん。 その自由な、若者らしいキラキラした感覚に、人間の強さを見る気がする。戦争のなんて虚しいことかと思う。

Posted byブクログ

2020/09/15

いわゆる「神風特攻隊」というものに対するイメージが、がらりと変わる一冊。これまでそのイメージを形作ってきたのは、「命令する側」が作った物語でした。「命令される側」から見た戦場のリアルがここにあります。

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2020/08/03

この本は、特攻の出撃を9回命じられても、上官に逆らい生き残った男の話だ。 こう書くと英雄のように受け取れるが、話はそういうことだけではない。 英雄の話というよりも、バカな上官の話なのだ。 これは日本人の避けられない特徴なのだろうか? あまりにも現代の会社の経営陣と酷似していて、辟...

この本は、特攻の出撃を9回命じられても、上官に逆らい生き残った男の話だ。 こう書くと英雄のように受け取れるが、話はそういうことだけではない。 英雄の話というよりも、バカな上官の話なのだ。 これは日本人の避けられない特徴なのだろうか? あまりにも現代の会社の経営陣と酷似していて、辟易してしまう。 日本軍はなぜあんなバカな作戦を遂行したのか? なぜその悪行を止められないのか? そして今でも会社組織の中で歴史を繰り返すのか? 問題点は非常に沢山ある。 単純な一つの原因だけはないのだろう。 あまりにも不思議だ。 なぜこんなことが、戦争終了から何十年経ってもまかり通っているのか? つまり日本ではリーダーを育てていない。 現場で優秀な人員をリーダーにすることが多いのだが、現場で優秀な人材と、マネジメントが出来る人材は根本的に違う。 「リーダーはこうあるべき」で最初から育てないと、不向きな人が上官になったときの部下の不幸さはない。 特攻というバカな作戦がまかり通り、止めらなれかった原因の一端である。 それと「戦略的思考」をあまりにも学んでいない。 これも単純な勉強不足の部分と、「答えの出ない質問に対して、議論して、今の段階の答えを出す」の部分がある。 後者の方が圧倒的にスキル不足だ。 これは多様性を受け入れない体制にも等しい。 他人に違う意見を言われると、議論を深めるのではなく、そこで意見を遮断してしまう。 プライドの高い人ほど、そういう傾向にある。 本来は地位の高い人ほど、部下の意見を聞いて、その場での最適な答えを選択していく必要があるはずだ。 戦争の悲惨さという観点だけでなく、「優秀な現場と無能な上司」という視点で、今のビジネスマンにこそ是非読んでほしい一冊。 (2018/6/5)

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2020/06/30

9度の出撃から生還した特攻兵・佐々木友次氏の体験談・インタビューを軸に「特攻」の真実を記した一冊。 美談になりがちな特攻隊の背景に触れて驚きを隠せなかった。同時に隊員たちの思いにやるせなさを感じ、人命を軽んじる上層部に憤りを禁じ得ない。 後半の考察部も含めて非常に考えさせられる。...

9度の出撃から生還した特攻兵・佐々木友次氏の体験談・インタビューを軸に「特攻」の真実を記した一冊。 美談になりがちな特攻隊の背景に触れて驚きを隠せなかった。同時に隊員たちの思いにやるせなさを感じ、人命を軽んじる上層部に憤りを禁じ得ない。 後半の考察部も含めて非常に考えさせられる。軍部の異様さ・愚かさは現代の組織にも十分に当てはまる。 戦争の語り部が少なくなる中でこういう著書を通じて歴史としてではなく真実として認識し、しっかりと考え向き合うことの大切さを改めて実感した。

Posted byブクログ

2020/05/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 腕のある操縦士ほど特攻に対してバカげていると考えているのに真っ先に投入されてしまうのがつらい。そんな中最初の特攻兵だったにもかかわらず何度もしれっと生還する佐々木さんがすごい。次第に上官もあきれ果ててしまうし、地元では2回も葬式をされてしまい、戦後も肩身を狭くして生き続ける。存在が奇跡そのもの。今現在の政府によるコロナへの失策ぶりととても似た状況が描かれていて、過去の出来事として切り離せない。

Posted byブクログ

2020/05/09

戦争のこと、特攻兵のこと、全く知らなかったが、勉強したいと思えるほど衝撃的な内容。 特攻隊は勇敢であると思っていたが、それだけではなかった。背景には彼らの葛藤や上司の圧力など、、 この本を読んで今平和な日本にいられることの幸せをとても感じられる

Posted byブクログ

2020/04/15

第二次世界大戦で、日本軍は色々な愚行を繰り広げましたが、最も愚かで痛ましい事の一つが特攻隊でしょう。様々な媒体で取り上げられて、無数の作品のモチーフになっていますが、昔であればあるほど特攻隊というものは美化されていたと思います。 実際自分が直面するとしたら死にたくないに決まってい...

第二次世界大戦で、日本軍は色々な愚行を繰り広げましたが、最も愚かで痛ましい事の一つが特攻隊でしょう。様々な媒体で取り上げられて、無数の作品のモチーフになっていますが、昔であればあるほど特攻隊というものは美化されていたと思います。 実際自分が直面するとしたら死にたくないに決まっているし、こんなに馬鹿らしい事に付き合っていられるか。という気持ちが本当の所だと思います。 この特攻隊という命を投げ出すことで相手に「気合が入っている」と思わせ、それによって起死回生を狙ったのでしょうが、発想からその効果を測れない精神からしておかしくなっていたとしか思えない事です。 しかし、これは今の世の中の常識が有ればこそ分かる事で、同調圧力と世間体と上意下達が基本であった世の中では、道を外れる位であれば死んだ方がいいと考えてもおかしくはないと思います。 おかしいとは思いつつも、皆が命を投げ出しているのだからと、個々の命が軽く扱われる時代の中で、生きる事を一番に考えて特攻命令から9回生還した方からのインタビューを基にしています。 皆が皆特攻して散って行ったというイメージでしたが、実際は飛行機が飛ばなかったり、故障で引き返したりした事もあったようです。 生き残った事というよりも、同調圧力や強権に負ける事無く自分の意思を貫き通した事に価値が有ります。上司が死ね死ねと言っている中で、意味の無い死を拒否する強さというのは、時代を超えて必要な考え方だと思います。 特にネットで不特定多数の人が「世間」を構築している今、無数の同調圧力にさらされているという事が出来ると思います。 自分が実際にどう思うのか、を大事にしていかないと、どんどん自分の意思と違う場所に流されていくのではないかと感じます。

Posted byブクログ

2020/03/20

特攻隊というものに抱いている幻想(良くも悪くも)を打ち砕くような著作である. 基本的に特攻といわれる戦術に初めこそ敵を驚かし多少は損害も与えたろうが,アメリカの対策が施されたあとはほとんど効果がない悪手であり,むしろ国内向けの「命を捨てて頑張ろう日本キャンペーン」にすぎなかった...

特攻隊というものに抱いている幻想(良くも悪くも)を打ち砕くような著作である. 基本的に特攻といわれる戦術に初めこそ敵を驚かし多少は損害も与えたろうが,アメリカの対策が施されたあとはほとんど効果がない悪手であり,むしろ国内向けの「命を捨てて頑張ろう日本キャンペーン」にすぎなかったわけです. そのようなキャンペーンのなかでも命を捨てず9回出撃して9回帰還した男の話です. とても読みやすい一冊になっており,鴻上尚史がここにいてくれて本当によかったと思わされます.

Posted byブクログ