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閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 の商品レビュー

4.3

24件のお客様レビュー

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2021/06/06

幾人かの学者らが、資本主義、近代が終焉に向かっている事を指摘するが、本書の著者・水野和夫氏もそうである。 水野和夫氏は、マクロな視点で歴史に注目し、超低金利が、『長い16世紀』が利子率革命により、中世を終わらせ、近代システムが開始したように、現在の低金利が、資本主義と近代システ...

幾人かの学者らが、資本主義、近代が終焉に向かっている事を指摘するが、本書の著者・水野和夫氏もそうである。 水野和夫氏は、マクロな視点で歴史に注目し、超低金利が、『長い16世紀』が利子率革命により、中世を終わらせ、近代システムが開始したように、現在の低金利が、資本主義と近代システムを終わらせるという。 その先の未来は、『世界は複数の『閉じた帝国』が分立し、その帝国の中で幾つかの『定常経済圏』が成立する。』状態がしばらく続くという。 その閉じた帝国の分立状態を、彼は、『長い21世紀』と呼ぶ。 『長い21世紀』とは、『長い16世紀』が国民国家が分立していたように、新たな中世のような状態『新中世』を意味する。 『長い21世紀』の始まりは、1973年のオイルショックであった。 『長い21世紀』は、今から2100年頃に完成するというポスト近代のシステム完成迄の過渡期である。 この時代のモットーは、『より近く、よりゆっくり、より寛容に。』だ。 つまり、近代システムの真逆だ。 『長い16世紀』の時代に、誰も次の時代がどんな時代になるか予想できなかったと同様、近代システム終焉後の新たなシステムは、誰も予想出来ないという。 ホイジンガが中世から近代への移行が、小さなさざなみが、やがて大きな波に変わっていったと表すように、ポスト近代のシステムもそのように完成して行くだろうという。 そして、縁故資本主義など、『悪しき中世』的な現象は、既に見られている。 これは、富める者の資産の三分の一は相続によるものなどを指す。 つまり、中世の王侯貴族のように、エリートら富める者が固定され、世界を支配しているということだ。 これらは、先日読んだ『ポスト・デモクラシー』のエリート企業が、ロビー活動で政治を支配し、民主主義の状態は、中世に逆戻りだという主張に通づる。 世界は閉じていくであろうというのは、経済的には僕にはわからないが、政治的にはそうであろうと思う。 何故なら、一国では対応するには難しい問題が幾つも存在し、各国が緊密に連携する必要があるからだ。 水野和夫氏も紹介するように、国民国家というシステムは、過渡期的存在であるというが、なるほど、国民国家の上位に位置する存在が無ければ、世界で何かを決定したり、アクションを起こすには、非常に難義である。 また、水野和夫氏は、『長い16世紀』において、『陸』の中世封建システムから『海』の近代世界システムへの大転換が起きたと述べる。 シュミットの言うように、世界史は、陸の国と海の国の戦いであるという。 『海の国』アメリカの時代は、終わりつつあり、『陸の時代』への移行期に現代はあるという。 近代システムの一つである『より遠く』のフロンティアが、最早存在しない。 金融の話で解り難い部分があったが、後半は読みやすく、よく理解できた。 また、水野和夫氏は、一見マイナーでありながら興味深い著作を読んでおり、読書家の一人としても参考になる。 本書は、ウォーラーステインの世界システム論に開かれており、必然的に、『近代とは?』や今後の資本主義に考えねばならず、読み応えがあるのは確かだ。 他に、本格的に資本主義とは異なるシステムに持っていくには、現在の株式会社と投資家の関係を変えて行く必要があるように思えた。

Posted byブクログ

2019/10/25

水野は「海の国」である英米が海洋から「金融・電子空間」にシフトしたものの、ゼロ金利時代を迎えた今、資本主義が滅びることは避けられないと説く。資本主義後を提示するのは困難極まりないが、「閉じた帝国」になると予測している。 https://sessendo.blogspot.com/...

水野は「海の国」である英米が海洋から「金融・電子空間」にシフトしたものの、ゼロ金利時代を迎えた今、資本主義が滅びることは避けられないと説く。資本主義後を提示するのは困難極まりないが、「閉じた帝国」になると予測している。 https://sessendo.blogspot.com/2019/10/21.html

Posted byブクログ

2019/06/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2019/06/14:  600年続いた、西欧の資本の蒐集による資本主義は、未開拓の地がなくなったことで、限界に達した。  アメリカが電子空間を新たな未開の地としたが、一時的な者だった。  これからは、再び帝国の時代に、それも「閉じた帝国」の中で、資本の拡張を前提としない「定常経済圏」による社会がうまれる。 --- という内容。以前民主党が政権をとっていたとき、仙石さんのブレーンとして内閣官房の内閣審議官をやっていた人。 --- 海の帝国の時代から、再び、陸の帝国の中国やロシアが勃興し始めたとも書いている。日本の向かう「閉じた帝国」は、どこって考え始めると、それは中国じゃない、アメリカは没落するので、もしかして、ロシアとかインドとか??とか、考えると、閉じた帝国ってのも、なかなか難しいと思う。

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2019/04/14

70年代以降の新自由主義的グローバリゼーションに対して、世界は閉じていくプロセスに突入した。歴史の危機の解決策は、この国民国家へのゆり戻しの延長には無い。5百年続いた近代システムそのものが資本主義とともに終わりを迎えつつあるからだ。 帝国というと、ダースベイダー、悪い皇帝が支配...

70年代以降の新自由主義的グローバリゼーションに対して、世界は閉じていくプロセスに突入した。歴史の危機の解決策は、この国民国家へのゆり戻しの延長には無い。5百年続いた近代システムそのものが資本主義とともに終わりを迎えつつあるからだ。 帝国というと、ダースベイダー、悪い皇帝が支配するイメージでしたが、国家を超えた大きな閉じた経済・政治圏ということなら、ありかも、と思いました。

Posted byブクログ

2019/01/18

今後の世界経済の動向を見据えた上で日本がどの方向へ行くかを示唆した一冊。 ただ、抽象的な話が多く、正直あまりよく理解できなかった。 最後の「日本がEUに加盟すれば」というのも荒唐無稽すぎ。

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2019/10/20

前作を受けて、「長い21世紀」の果てに、世界はどうなるのか、といった問題について、著者の展望が述べられている。それは十分に説得力のあるものだ。ヨーロッパはやはり底力がすごい。米国追随一辺倒のこの国に未来はあるのか?あきらめないことが大事と著者はいう。

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2018/10/28

【由来】 ・図書館の新書アラート ・楽天ポイントで失効するのが1100ポイントあったので、買った。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ ...

【由来】 ・図書館の新書アラート ・楽天ポイントで失効するのが1100ポイントあったので、買った。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】

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2018/10/21

経済の専門家による、資本主義について述べたもの。資本主義は資本の増加により成り立っており、経済規模が膨張することによって万民に富が行き渡り、それによって民主主義も成り立つ。今後、フロンティアがなくなり資本が増えない状況では、資本主義は成り立たないため、閉じた社会へと変革が必要だと...

経済の専門家による、資本主義について述べたもの。資本主義は資本の増加により成り立っており、経済規模が膨張することによって万民に富が行き渡り、それによって民主主義も成り立つ。今後、フロンティアがなくなり資本が増えない状況では、資本主義は成り立たないため、閉じた社会へと変革が必要だと著者は述べている。ピケティの考え方にも同意しており、格差の拡大に警鐘を鳴らしている。ウォーラーステインやケインズにも触れ、歴史的分析もされており、面白く読めた。 著者の考え方には概ね同意するが、閉じた社会に移行しつつある欧州との意見には、ドイツの状況を見る限り疑問。今後、日本のとるべき方向についても、単純には同意できない。今後の生き残り戦略を考える上で、閉じる社会や陸上国的考え方の導入は、わが国には困難であろう。 「日本の賃金は、1997年以降、現在に至るまで下落傾向が続いています。その一方で企業の当期純利益は2001年度をボトムに増加基調に転じ、2015年度の最終利益はリーマンショック前の最高益を49%も上回っているのです」p21 「アメリカに流入する国際資本は、2007年の最盛期には対GDP比で26.6%もあったのですが、2016年1~9月期には8.8%へと、およそ1/3にまで低下しました。これは、1982年の8.7%とほぼ同じ水準で、グローバリゼーションのスタート時点に戻っていると言えます」p26 「資本と国家が円満な結婚生活を送るためには、パイの拡大、すなわち経済成長が必須条件です。逆に言えば、経済成長が止まれば、民主主義と資本主義の両立はできなくなります。その転換点となったのが、1973年のオイルショックでした。これが「長い16世紀」に匹敵する歴史の転換期、「長い21世紀」の始まりです」p30 「世界的な低金利が示唆しているのは「実物投資空間」では、もはや経済成長ができないということなのです。しかも、資本の反対側には生産力が存在します。生産力が過剰になれば、もはや需要を新たに生むことはなく、不良債権が生まれるだけです。10年国債利回りがマイナスになったということは、新規投資をすると既存の資産が不良化するというサインなのです」p41 「「より遠く、より速く、より合理的に」→「より近く、よりゆっくり、より寛容に」」p240 「中国を待ち受けているのは、バブル崩壊後の日本と同様、長期にわたるデフレや低金利です。それはすなわち、投資機会の消滅に向かっているということになります」p170 「現代は、かつてないほどマネー過剰経済になっています。マネー過剰経済では、バブルが発生して膨れ上がっていく局面で設備投資や雇用が増加し、それが崩壊すると一気に需要が減り設備過剰となって、工場の稼働率が下がり、リストラが行われ、デフレとなります。このとき当然、工業の原料である鉱物資源も価格が急落しますから、中国の本格的なバブル崩壊は、ロシア、ブラジルなど他の新興国にも及ぶことになるでしょう」p173 「高利貸しは、教会や貴族にとってライバルとなる危険性があったため、教会は利息をとることを禁じていました」p177 「国民国家においては、かつては国王と貴族しか味わえなかった贅沢を国民全員が平等に求めるようになりました。欲望に限界はないので、人々は過剰な要求をします。民主主義の下では、施政者はそれに応えなくては、政権の維持ができません」p182

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2018/07/09

資本主義は蒐集する。フロンティアが存在した時代は蒐集することで資本主義の拡大は担保されたが、フロンティアが存在しない現在においては勝手の帝国主義がひとつの生き方である。EUは陸の帝国を目指している。 金利は自分の使える金を預ける事に対するプレミアムであるのでゼロ金利は投資にプレミ...

資本主義は蒐集する。フロンティアが存在した時代は蒐集することで資本主義の拡大は担保されたが、フロンティアが存在しない現在においては勝手の帝国主義がひとつの生き方である。EUは陸の帝国を目指している。 金利は自分の使える金を預ける事に対するプレミアムであるのでゼロ金利は投資にプレミアムがつかないと言う事である。 ゼロ金利、成長無き時代の日本が歩むべき道について示唆を与える書物である。

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2018/07/04

「より遠く、より速く」周辺へ拡大を続けることで維持されてきた資本主義というシステム。だが、もはやすでに拡大の余地は残されておらず。経済的な成長は望めない。それに抗おうと金利を下げても、投資先がないのだから、効果は低く、せいぜいが短期間の延命策にすぎない。これからは、拡大ではなく閉...

「より遠く、より速く」周辺へ拡大を続けることで維持されてきた資本主義というシステム。だが、もはやすでに拡大の余地は残されておらず。経済的な成長は望めない。それに抗おうと金利を下げても、投資先がないのだから、効果は低く、せいぜいが短期間の延命策にすぎない。これからは、拡大ではなく閉じていくしかない。その大きな流れでみると、トランプ政権の施策、ロシア、英国の動きも腹に落ちてくる。 16世紀に海の向こうとの貿易で拡大が始まった資本主義は、これから逆方向へ向かう。その時参考になるのは、16世紀までの社会の仕組み。もちろん、専制君主的な社会は全否定すべきだが、低成長で地味だけど、もしかすると穏やかな社会。これからそういう社会に向け、着地点を探るいろいろな動きが出てくるのだろう。 歴史、経済の視野から大きな歴史の転換点を読み解いた本書はすごい。前作も読んでみたい。

Posted byブクログ