明日なき身 の商品レビュー
生活保護受給高齢者の日常。結構凄絶だが飄々とした文章。コンビニ店員への執着、段ボールを燃やしてボヤのインパクト。現在消息不明とあるがどういう経緯でそうなのだろう。
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私小説。ホームレス一歩手前の凄絶な日常を淡々と描いている。読みながら終始、出版社と著者と読者、この三者結託して織りなす悪趣味な事業に自分も今まさに荷担しているかのような居心地の悪さを感じ続けた。現代が舞台ということもあるだろう。大正昭和の私小説ならば、金銭感覚や生活様式の違いから...
私小説。ホームレス一歩手前の凄絶な日常を淡々と描いている。読みながら終始、出版社と著者と読者、この三者結託して織りなす悪趣味な事業に自分も今まさに荷担しているかのような居心地の悪さを感じ続けた。現代が舞台ということもあるだろう。大正昭和の私小説ならば、金銭感覚や生活様式の違いからフィクションと変わらない心持ちで読むことができるだろうから。280円の鉢植えを買うことも躊躇う作家が書いた私小説を、1650円払って読む人がいる。しかも著者は行方知れずなので、出版社から著者に利益が回ることは無いのだ。 「作品」としては、「ムスカリ」が良かった。青い小さな花の存在が鮮やかで、救いがある。次の「ぼくの日常」はしっちゃかめっちゃかで、ちょっとよく分からない。「明日なき身」「火」は出来が云々という以前に内容が壮絶すぎて…しかしこれも紛れもない現代の現実なのだ。私自身、もしかしたら何十年か後にこの様な身の上となるかもしれない。最後の「灯」は生活保護ビジネスに呑み込まれてしまった著者の、諦めまじりの空虚な日常。作品としてはこれも良い。しかし文字通りこれが最後なのだと考えると、言いようのない寂しさを感じる。
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スペースでお話をしていた時に知りました。3度の離婚の末、生活に困窮し、生活保護と年金で生きる日々。その生活はあまりにも壮絶だ。けれども彼の筆からは悲愴感は感じられず、淡々と描かれている。ここに書かれた貧困は決して著者だけの苦しみではなく、今の日本社会に蔓延する病だと感ずる。生活保...
スペースでお話をしていた時に知りました。3度の離婚の末、生活に困窮し、生活保護と年金で生きる日々。その生活はあまりにも壮絶だ。けれども彼の筆からは悲愴感は感じられず、淡々と描かれている。ここに書かれた貧困は決して著者だけの苦しみではなく、今の日本社会に蔓延する病だと感ずる。生活保護の問題、貧困ビジネスなどの問題が透けて見える。その点に置いても本作は究極の「私小説」だと 思う。現在、著者は消息不明とのこと。一体何処で何をしているのだろう。彼の無事を祈る。
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「ムスカリ」 生活保護を受けて暮らす後期高齢者 前立腺がんの疑いあり 妻に去られて一人暮らし 自炊できないので、主にコンビニのおにぎりを買う あと外食 もちろん経済は苦しい しかしあるとき、街の花屋の店頭で 青い花(280円)に心を奪われてしまう 「ぼくの日常」 生活保護を受け...
「ムスカリ」 生活保護を受けて暮らす後期高齢者 前立腺がんの疑いあり 妻に去られて一人暮らし 自炊できないので、主にコンビニのおにぎりを買う あと外食 もちろん経済は苦しい しかしあるとき、街の花屋の店頭で 青い花(280円)に心を奪われてしまう 「ぼくの日常」 生活保護を受けるようになった少し前の話 週刊誌ライターをやりながら、おんぼろの一戸建て団地に住む筆者は 便所のつまりを直すお金もままならず きわめて不潔な環境での生活を余儀なくされている 脚本家で、文学仲間の田波靖男に援助を受けつつ 長編小説を書き始めるが どうも濡れ場に自信が持てない 「明日なき身」 たとえどんなに貧乏な老人で 生活保護を受ける暮らしなどしていても 民主主義の国家では、人権が尊重されるべきのはずだ しかしこの複雑に入り組んだ現代社会には 人権を盾にとるようなヤカラもいるし わざわざ他人の痛みや悲しみを想像するのが多数派とは言えないもんで 法の影では、暴力の嵐が吹き荒れることになる そこで選択肢はふたつにひとつ、孤高を気取るか?卑屈になるか?だが これもいずれにせよ、貧乏な老人であることに変わりあるまい 「火」 不眠症で朦朧としており また、貧乏ゆえに暖房が不十分で、寒い正月だった それで 室内に火をおこすことを思いついたのだけど 「灯」 火災ですべてを失いはしたものの 各地の養護施設を転々として、彼は生きていた 心配した旧友たちの訪問を受け、中華料理をおごってもらい 再会を約束して別れるのだが 2010年、この作品を最後に岡田睦は失踪 以後、消息不明であるらしい
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