最良の嘘の最後のひと言 の商品レビュー
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平熱系超能力コン・ゲーム小説。Googleをモデルにしたと思わしきハルウィンという企業が超能力者探しをするという、一見すると壮大なシチュエーションだが、その大風呂敷に反して、話自体は緻密なトリックと嘘の応酬である。限定条件のバトロワ的な、血で血を洗う荒っぽさや緊張感はないものの、応用力のある超能力や偏執的なまでのルールの恣意的解釈などはこの作者ならではの持ち味だろう。他の作家ならもっと大仰な嘘をつくのだが、この作者は他の作者なら捨てる部分を拾って有効活用するような、謂わば捨てられた食材で美味しく調理するスキルに長けた作家だと思う。 ただ、いくつか難点もあり、まず登場人物の描写がやや薄っぺらいことだろう。キャラクターはテンプレートではないものの、能力のほうの印象が先行するばかりで人間的魅力のあるキャラクターがおらず、感情移入できなかったのは残念であった。恐らくその理由としては登場人物の数がやや多すぎたのと、身振りが極端に少ないことで、台詞以外に判別がつく要素がなく、写実性に乏しい。それがどこか浮世離れした雰囲気の理由でもあるので、一概に欠点とは言えないのだが……。それに就活で遭遇する競争相手というのは非常に印象の薄いものなので、そういう意味ではリアルかもしれない。登場人物とその能力一覧は途中で出たものの、もくじに欲しかったように思う。 あと、超能力のトリックや逆転劇などは面白いものの、流石にルールそのものを捻じ曲げるのにはノレなかった。参加者の一人が運営側、運営側の意図的な仕込み、までは許せるし、ルールの抜け穴を探すのは燃えるが、ルールや条件そのものが嘘だというのはとてもつまらない。特にナビゲーション役や勝利条件などがあらかじめ仕組まれていたことというのは後出しジャンケンめいていてミステリとしては微妙である。それなら最初から矛盾するルールを仕込むなり、途中でルールを疑うなどの、ルールに対する疑念という描写も欲しかった。スマートフォンによる紐付けは面白かったが、スマートフォンを入れ替えるだけで入れ替わりが成立したりというのはガバガバな気がしていまいちノレない。最大の欠点はルール周りの不備や曖昧さで、それすらも織り込み済みで書いているため一応破綻はなく成立してはいるのだが、それがいまいちのめり込めない欠点と表裏一体になっている。ガチガチに決められたルールがあるからこそ、かいくぐる楽しみがあり、新たなルールや条件の設定は、状況が変わる一手となるため、そういう部分に面白さを感じる人はいまいち肌に合わない小説だった。 しかしそういった普通のバトロワ的シチュの小説を河野裕流に解釈したら、といぅような面白さはあったように思う。また、超能力に寄り添う人間の悩みや思春期の心情を描かせたら、この作者は天下一品だろう。能力の派手さはないものの、その能力との距離感の取り方の筆致はこの作者ならではである。
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図書館で。 面白かった!能力ジャンケンみたいな感じのお話で、テーマが嘘。でもジ・エンターテイナーって言われてもわからなかったよ… 後書きの開設みたいに、映画スティングのテーマって書いてくれたら一発でわかったんだけど…(笑) というわけで4番だったかな?の女の子がこの作者さんのヒ...
図書館で。 面白かった!能力ジャンケンみたいな感じのお話で、テーマが嘘。でもジ・エンターテイナーって言われてもわからなかったよ… 後書きの開設みたいに、映画スティングのテーマって書いてくれたら一発でわかったんだけど…(笑) というわけで4番だったかな?の女の子がこの作者さんのヒロインっぽくないな~って思ったらやっぱり裏ヒロインが居た。うん、そうだよね。 途中退場になったかと思われた人も最後まで活躍したり、え?そこがトリックだったの?という所もあり、良い意味で最後まで裏切られた展開でした。面白かった。
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『鋼鉄都市』のSFミステリを思い出させるような 超能力者同士のMF(マジックフィクション?)ミステリ 『ジ・エンターテイナー』のリズムでさくっと読める一冊 『サクラダリセット』もそうだったけれど よくぞこの設定で破綻なくミステリ仕立てに出来るものだと感心する ただライトノベルだっ...
『鋼鉄都市』のSFミステリを思い出させるような 超能力者同士のMF(マジックフィクション?)ミステリ 『ジ・エンターテイナー』のリズムでさくっと読める一冊 『サクラダリセット』もそうだったけれど よくぞこの設定で破綻なくミステリ仕立てに出来るものだと感心する ただライトノベルだった『サクラダ』と比べると 登場人物の造形着地点がもうひとつ定まらない感じ 感心はするが娯楽小説として不可欠の感動に至る押しがどの作品でも弱いと思う 悪い意味であざとくなく自然に押し付けがましくない より印象深く記憶に残る揺り動かしとなる舞台上の場が欲しいところ 『ジ・エンターテイナー』が示すようにそういう効果を狙ったお話ではないのだろうけれど
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超能力者のだましあい。 舞台設定も含め、一捻りした展開と、隠されたキバの強さに終始驚かされた だましあいのような頭脳戦が好きだが、特にSF的な要素があるのは面白い 作中、最良の嘘とは?という問いかけがある。 嘘にもいい嘘と悪い嘘があるなんていうが、「いい嘘」のルールが分かると...
超能力者のだましあい。 舞台設定も含め、一捻りした展開と、隠されたキバの強さに終始驚かされた だましあいのような頭脳戦が好きだが、特にSF的な要素があるのは面白い 作中、最良の嘘とは?という問いかけがある。 嘘にもいい嘘と悪い嘘があるなんていうが、「いい嘘」のルールが分かると、少し生きやすくなると思う。 よく考えてあると思うので、参考にしたい
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ある大企業が「年収8000万で超能力者を一人採用する」との告知を出し、自称超能力者の七名が一通だけの採用通知書の奪い合いを始める。果たして誰が勝者になるのか?・・・という話。 嘘、裏切り、騙し合い、が連続するコン・ゲーム小説。そこに超能力も加わるので集中して読まないと訳が分からな...
ある大企業が「年収8000万で超能力者を一人採用する」との告知を出し、自称超能力者の七名が一通だけの採用通知書の奪い合いを始める。果たして誰が勝者になるのか?・・・という話。 嘘、裏切り、騙し合い、が連続するコン・ゲーム小説。そこに超能力も加わるので集中して読まないと訳が分からなくなる。良くも悪くもイマドキの小説であり、近年頭が堅くなってきた私には少なからずつらかった。 着地点がキチンとミステリになっていたのと、エピローグで親切な解説があったのを評価。もっと若い頃読んだら傑作に思えたかな?
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【あらすじ】 検索エンジンとSNSで世界的な成功を収めた企業・ハルウィンには、超能力研究の噂があった。それを受け、ハルウィンはジョーク企画として「4月1日に年収8000万で超能力者をひとり雇う」という告知を出す。審査を経て、自称超能力者の7名が最終試験に残った。ある目的のために参加したナンバー7の大学生・市倉真司は、ナンバー4の少女・日比野瑠衣と組み、奇妙な最終試験に挑むが……。『いなくなれ、群青』〈サクラダリセット〉の著者が贈る、コンゲーム・ミステリ、文庫オリジナルで登場! 【感想】
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最良の嘘とは誠実な嘘と 大学生・市倉は答えているが 誰が誰でどの嘘をついているのかは 途中読んでいてもわからないけど 最後でまとめみたいのが出てくるから それを読めば少し理解できる。 ただそうすると つかなければいけない嘘が 嘘のための嘘という仕組みになってて それぞれの能...
最良の嘘とは誠実な嘘と 大学生・市倉は答えているが 誰が誰でどの嘘をついているのかは 途中読んでいてもわからないけど 最後でまとめみたいのが出てくるから それを読めば少し理解できる。 ただそうすると つかなければいけない嘘が 嘘のための嘘という仕組みになってて それぞれの能力と 参加しなければいけない理由が ネタバレを読んでもふーんとしかならず キャラクターと結びつかず 最後種明かしされても モヤモヤが残ったまま。
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企業が超能力者を求めてる。ただし雇い入れるのは1名。自称超能力者によるバトルロイヤルが始まる。 もっとブラフによるウソつきゲームかと思ったら思ったよりホンモノの超能力者という設定。それでも騙されるのが気持ち良いストーリー。
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河野裕さんらしいミステリでした。まんまと最後まで騙されました。人によって持っている情報量が違うから読者はさらに騙される。嘘がたくさん、言葉で翻弄されます。超能力系だから派手なバトルなどを想像しますがそういう展開にしないところが好きです。ヒントがたくさん散りばめられているけどそれに...
河野裕さんらしいミステリでした。まんまと最後まで騙されました。人によって持っている情報量が違うから読者はさらに騙される。嘘がたくさん、言葉で翻弄されます。超能力系だから派手なバトルなどを想像しますがそういう展開にしないところが好きです。ヒントがたくさん散りばめられているけどそれに気づくのは難しい。サクラダリセットを彷彿とさせる超能力者たちがたくさんで、ファンにはある意味楽しかったです。
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かなり複雑なストーリーだった。登場人物がほとんど本当のことを言ってない。まさにコンゲーム。誰が誰を騙しているのか、整理した上でもう一回読みたい。
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