コンテクスト・オブ・ザ・デッド の商品レビュー
【概略】 変質暴動者=ゾンビが出現する世界の中、日本国内でゾンビの増加、人間への影響が増す中、編集者・デビュー10年目の売れない作家、寡作の美人作家、小説家志望の若者、福祉事務所につとめるケースワーカー、ゾンビに噛まれた女子高生、それぞれがそれぞれの立ち位置で、それぞれの文脈を...
【概略】 変質暴動者=ゾンビが出現する世界の中、日本国内でゾンビの増加、人間への影響が増す中、編集者・デビュー10年目の売れない作家、寡作の美人作家、小説家志望の若者、福祉事務所につとめるケースワーカー、ゾンビに噛まれた女子高生、それぞれがそれぞれの立ち位置で、それぞれの文脈を背負い、ゾンビから逃げ、時に立ち向かい、時に共存する。どのようにしてゾンビが生まれ爆増したのか?この世の食物連鎖の頂点は取って代わるのか、はたまた・・・。芥川賞受賞作家によるゾンビ世界を下敷きにした日本文化の風刺作。 2019年11月20日 読了 【書評】※若干のネタバレ含む 自分は、無類のゾンビ好きである(但し、ウォーキングデッドを除く)。そういったこともあり、本屋さんでぶらついていてタイトルに目がいってしまい、ジャケ買いならぬタイトル買いしてしまった本作。羽田圭介さんの作品を読むのは、実は本作品がはじめて。 無類のゾンビ好き、であるからして、「ゾンビとはすべからく〇〇である」「最近のゾンビは、〇〇だ」などいった文脈は、わかる部類に入る。しかもタイトルが「コンテクスト・『オブ・ザ・デッド』」というタイトル・・・ゾンビが登場する。読みながら脳内では、勝手にゾンビに関するストーリー・フローチャートが構築されて、それに沿って文章を進めていったんだよね。それが第一部。 ところが実際に、南雲晶という登場人物が、元AV女優に向けて「今、自分が見ているモノから判断をする(=過去の文脈に頼らない)」といったセリフを自身に投げかけたり、女子高生高崎希という登場人物が同級生が企画しているデモに加わらない決断をするあたりから「うん?おかしいぞ?普通のゾンビものとは違うぞ?」という違和感が。そりゃそうなのだけどね、ただのゾンビものを書くこと自体、羽田圭介さんじゃないだろうからね。 第二部の中盤あたりからやっと「『コンテクスト』・オブ・ザ・デッド」の意味が色濃く出てくる。自分自身もそうだけど、最近はストーリーを自身のコンテンツにくっつける意識が本当に流行していて・・・自分自身も、その意見に大いに賛成で、なんとかしてストーリーを作ろうと思案している。このストーリーはコンテクスト(文脈)と読み替えることも可能なのだよね。「いかに内輪ウケを増やすか?」という斜に構えた書き方にもできる。このコンテクスト=文脈に、この作品は違った角度で切り込んでいるのだよね。その下敷きとして文脈が積み上がっている「ゾンビ」というコンテンツを利用したというね。ゾンビって、どんな他ホラーキャラも肩を並べることができないぐらい多種多様な分派がされていて、綿々と、脈々と(まさしく「脈」!)、過去から現在まで「ゾンビとは?」という川ができてるからね。 そこに、おそらくは羽田圭介さんご自身が色々と抱えているであろう出版業界・文壇・・・いわゆる物書き界隈の沢山の文脈、そして、日本人の文脈への依存・・・そもそもハイコンテクストである日本語という言語の特質・・・そういったものが加味されて、この作品に昇華されたのだろうねぇ。 「ストーリー(文脈と読み替えてもいい、ここでは)」を重視してきた自分にとっては、少しショックだったし、基本に立ち返らなくては・・・と、身につまされた思い、あったね、正直(笑)もう少し正確に自分の感情を描写するなら、クリエイターの部分として身につまされ、そしてプロモーターの部分としては相反する感覚だった。 ただこの作品、これこそが「ゾンビ」という文脈を下敷きにしているから読者の反応は大きく分かれるだろうなぁと思った。純粋に「おぉ、羽田圭介がゾンビものを書いたか!」なんて感じで「ゾンビ物語」を楽しみたい・・・という文脈を期待した読者にとってはマイナスな展開だろうなぁ。逆に言語や文化の違いを楽しめるような読者からすると、「おぉ、そうきたか」というニヤリとした感覚、湧き上がると思う。読み手を選ぶ作品だよね。自分は両方とも楽しめる立場だったからよかったよ。 最後に本作品で文脈に苦しむクリエイターの箇所、それを全て「トーストマスターズクラブのコンテストスピーチ」と置き換えて読むと、とても興味深い印象になったよ。傾向と対策の向こう側に・・・どうやっていけるか?そんなことを考えるキッカケになったよ。
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中盤くらいまではとても楽しめた。もしかしたら伊藤計劃の「屍者の帝国」っていうのはこういう物語だったんじゃないのか?とまで思ったが、終盤にいくにつれて一般論が文学論に収束していく様が読んでいてつらかった。また、付和雷同、画一的、既視感、の範囲が広がりすぎて、そこかしこで、それを言っ...
中盤くらいまではとても楽しめた。もしかしたら伊藤計劃の「屍者の帝国」っていうのはこういう物語だったんじゃないのか?とまで思ったが、終盤にいくにつれて一般論が文学論に収束していく様が読んでいてつらかった。また、付和雷同、画一的、既視感、の範囲が広がりすぎて、そこかしこで、それを言ったら生きている人間は全員がゾンビにならなきゃダメでしょ、ゾンビにならなかった人はその範疇にいないの?という素朴な疑問が解消できなかった。 ただ、内容自体はとても面白く、エンタメ的なストーリー運びにも引き込まれた。他の作品も読んでみたくなった。
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「何故にゾンビ??」と思いながら読み始めて、途中「からなるほどなぁ」と。映画でよくあるドタバタじゃなかった。読み終わった今、すごく考えてる。自分の事を。わたし、そっち側だわ…
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とーっても面白かったです。 でも、他の方のレビューをみたら(やっぱりみてしまった)必ずしも評価は高くなかったのでびっくりしました。 ゾンビ退治のエンタメ小説ではないためか、描写が怖くなくて、それがまたよかったです。スプラッター映画とか超苦手なので。。表紙はコワすぎですけどね。 ...
とーっても面白かったです。 でも、他の方のレビューをみたら(やっぱりみてしまった)必ずしも評価は高くなかったのでびっくりしました。 ゾンビ退治のエンタメ小説ではないためか、描写が怖くなくて、それがまたよかったです。スプラッター映画とか超苦手なので。。表紙はコワすぎですけどね。 ソンビが登場する奇想天外なオープニングなのに、いつもどおり著者の主題がストレートに伝わり、流石だと思いました。 空気を読めない人が批判される世間の風潮や、内輪にしか通じないコミュニケーションで盛り上がる様を明確に批判し、自分で考えることを放棄し人の意見に堂々と乗っかることの危うさを生きる屍(しかばね)=ゾンビとして表現する皮肉な面白さは格別です。 私自身ハッとすることが多くありました。 一番に頭をよぎったのが昨今の北朝鮮問題。ミサイル発射かも、核かも、などの情報があるのに、周りの空気を読み、思考を停止し、普通に日常を送り続ける・・・これってコワイなと。 でも、自分で考え(パニックを引き起こすような)声を上げるのは空気が読めない人のすることですから、誰もしないという・・・ 不安なのに、解決のための思考を停止させ、他人に委ねるのって思っている以上にまずいことだという気がしてきました。 思考の多様性が確保されないと種の存続の危険に繋がるという、その警笛を鳴らした挑発的な作品だと思います。
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第一部までわりと度肝抜かれつつも面白く読めたのですが、長かったな。。。笑。 結構皮肉がきいていて、とくにラストなんかは秀悦。 このKも羽田さん自身がモデルという体なのかしら。(わたしは成功者Kのほうを先に読んでいます) そもそもゾンビとかいう設定が苦手なのですがそのなかでは面白く...
第一部までわりと度肝抜かれつつも面白く読めたのですが、長かったな。。。笑。 結構皮肉がきいていて、とくにラストなんかは秀悦。 このKも羽田さん自身がモデルという体なのかしら。(わたしは成功者Kのほうを先に読んでいます) そもそもゾンビとかいう設定が苦手なのですがそのなかでは面白く読めました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館で借りた本。 ゾンビの話。と知らずに借りてしまって、ゾンビ苦手なので苦労しました。登場人物が多く、場面も多く変わるので、ついていくのに苦労し、大変読み終わるのに時間がかかりました。結局、ちゃんと理解しないまま、読了。苦手ジャンルには手を出してはいけないということがよくわかりました。
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同時期に芥川賞を受賞した本職芸人又吉クンよりやたらとテレビに出まくり最近はバス旅のレギュラーにもなってしまった本職小説家羽田圭介、奴はいったいどこに行こうとしているのか?と思ってたらちゃんと本も書いていた。 で本作、目立ちがり屋らしいド派手な装丁でモデルにアイドルまで起用して気合...
同時期に芥川賞を受賞した本職芸人又吉クンよりやたらとテレビに出まくり最近はバス旅のレギュラーにもなってしまった本職小説家羽田圭介、奴はいったいどこに行こうとしているのか?と思ってたらちゃんと本も書いていた。 で本作、目立ちがり屋らしいド派手な装丁でモデルにアイドルまで起用して気合と勢いは十二分にも伝わってくる反面内容はセオリー通りのお約束はキチッと守ったゾンビ小説でその辺りには彼のマジメな一面も見え隠れする。 でもやっぱり長過ぎる、狙いも言いたいこともわかるのだがそれを伝えるのにこの長さは必要か? 小説の文脈もバス旅の経路もコンパクトさは結構大事だぞ
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いい。 読書ってホント楽しいって再認識させてくれる。 「あたしの想像力たるや!」 と良い気持にさせてくれる濃い筆致・・・ゾンビ映画を観た事がないのにさ。 そして同時に、 自分を省みたり、 世の中を憂いたり、 「羽田くん、超イラついてんの?」 「後で怒られちゃうんじゃないの?」...
いい。 読書ってホント楽しいって再認識させてくれる。 「あたしの想像力たるや!」 と良い気持にさせてくれる濃い筆致・・・ゾンビ映画を観た事がないのにさ。 そして同時に、 自分を省みたり、 世の中を憂いたり、 「羽田くん、超イラついてんの?」 「後で怒られちゃうんじゃないの?」 「んもう、やっぱり面白い。」 などと、ストーリー以外にも思考がぐるぐると忙しい。 楽しい読書だったなー。
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文脈のゾンビ。 ゾンビとはなんだろう。言葉とはなんだろう。物語とは何だろう。どんどんわからなくなっていく。 たぶん、私は、この世界にそこまで愛がなかったのだろうなぁと思う。
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ゾンビの物語であると同時に文芸界の物語でもある。 ウォーキングデッド大好きで見ているのですが、昔からあるゾンビもののお約束、面白かったです。 でも、この世界はなんだかちょっとのんびりしていて、あぁ確かに日本だとこんな感じになるのかも…と思いました。 ものすごく恐ろしいことだと...
ゾンビの物語であると同時に文芸界の物語でもある。 ウォーキングデッド大好きで見ているのですが、昔からあるゾンビもののお約束、面白かったです。 でも、この世界はなんだかちょっとのんびりしていて、あぁ確かに日本だとこんな感じになるのかも…と思いました。 ものすごく恐ろしいことだとは思うけれど、まあ動き遅いし…と傍観する人々。 なんとなく他人事な感じ。などなど。 噛まれてもすぐには発症しない人。 ゾンビにならなかった人。 ゾンビになってしまったけれど、人間に戻った人。 あなたは、生きているのか?と問われている感じがした。
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