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みかづき の商品レビュー

4.3

439件のお客様レビュー

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    194

  2. 4つ

    146

  3. 3つ

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2017/01/18

「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、渾身の大長編。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。...

「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」昭和36年。人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、渾身の大長編。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。 本屋大賞ノミネートおめでとうございます。 私自身、小学生から高校生まで塾に通い、大学時代は個別指導という塾での勤務経験があるので、テーマそのものが面白くて引き込まれました。私は自分に教えてくれた教師たちを今でも恩人だと思っているし、どちらかというと学校の授業をバカにしていた千明に近い。でも、そんな好き嫌いを超えてただひたむきに教えることに熱意を持ち、子供たちのために尽くし続ける吾郎や千明の思いに胸を打たれる。個人的に血縁の意味を信じていないので、血がつながっていようがどうしても無理な人間はいるし逆に赤の他人でも心から信頼できる人間もいると思う。そういう意味で吾郎と蕗子のつながりは羨ましいな。吾郎のしたことも千明のしたことも決して許せる話ではないけれど、それでも二人が最後まで教育に向き合い続けたことには意味がある。一郎の選んだ道を見てそう思った。そしてこれからの日本が子供たちにとって強く優しい国でありますように。

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2018/02/09

とてもいいお話。 昭和の頃、用務員室で授業についていけない子の勉強を見てあげる21才の吾郎。この不思議な魅力のある青年が「教育」に嵌まっていく人生。 吾郎の教える才能を見抜いて強引に伴侶にした千明。 ふたりが塾を立ち上げた頃、まだ日本では私塾に対する風は厳しかった。 「教育は、...

とてもいいお話。 昭和の頃、用務員室で授業についていけない子の勉強を見てあげる21才の吾郎。この不思議な魅力のある青年が「教育」に嵌まっていく人生。 吾郎の教える才能を見抜いて強引に伴侶にした千明。 ふたりが塾を立ち上げた頃、まだ日本では私塾に対する風は厳しかった。 「教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。」 「すべての子どもに等しく勉強を教えられない現実に、絶えずある種の鬱屈を抱いている」 貧しくて塾に通えない、勉強についていけない子どもが吾郎の孫の一郎が立ち上げたボランティア勉強会で受験に臨むエピソードには涙腺が緩みました。 感動です。 そして終わり方がまた良かった。

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2017/01/12

こーれーはー素晴らしかった!大事にとっておきたい一冊。教育をテーマに親子3代を描いた物語。主人公がたくさん。それぞれにとても魅力的。悲しい出来事が悲劇的にではなく、するっと描かれているところに好感が持てた。最初の1行目から、最後の1行目まで目が離せなかった。森絵都バンザイ。

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2017/01/12

教育の究極の目的は、「自ら学ぼうとする意欲を育むこと」だと思う。指導者は知識を教えるのではなく、学ぶ方法を教えることが肝要。これが何とも難しい!

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2017/01/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「大島さん。私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです。太陽の光を十分に吸収できない子どもたちを、暗がりの中で静かにテラス付き。今はまだ儚げな三日月に過ぎないけれど、かならず、満ちていきますわ」  太陽と月。はたして教育という宇宙に二つの光源が必要なのだろうか。  いぶかりながらも、吾郎の耳には自信に満ちた女の声が張りついて離れないのだった。(p.25) (勝見)「掃除機をほしがるなと、世の中の奥さん方に言えますか?そこに、手をのばせば届く高等教育に、求めるなと誰が言えますか?どんだけきれいごとをならべたところで、貧乏暮らしからぬけだすには、まず勉強するしかないんです。だとしたらせめて、私は彼らに意味のある勉強をさせてやりたい。試験対策をつめこむだけの授業に可燃性はありません。火ですよ、火。彼らの向学心を永久不変に燃えあがらせる、それぞ自分の使命と私は思っとります」(p.73)  生徒たち自身も目に見える結果を求めていた。勉強とは何か。指導とは何か。塾の役割とはなんなのか。日を追うごとに見えなくなっていった。塾という未知の地平を拓き、世間の批判にさらされながらも懸命にもがいていたあのころ、何が正しくて何がまちがっているのか明言できることなど一つもなかった気がする。(p.198) 「(吾郎)今は万事小器用な人間がウケる時代かもしれんが、要領のいいタイプというのは、その場その場の小さな成功に満足してしまうきらいもある。時間をかけて大きな仕事を成すのは、容量よりもむしろ粘りに長けたタイプだ」(p.383) 「(国分寺)我々の最終目標は、子どもたちに自主学習の姿勢を身につけさせることだ。決まった時間に机にむかい、自分で決めた課題にとりくむ。それができるようになった子、つまり自立心を手に入れた子は、その後、何があっても容易には崩れない。逆に、丸暗記のような知識のつめこみ方をした子は、大学に入ったあたりでぽきっと折れてしまうことがままある」(pp.402-403) 「ママ、いつも台所で立ったままごはん食べているから」 日頃無口な萌が言葉を発するたび、一郎は自分という存在がガタガタと足元から崩れていくのを感じた。貧困家庭の子どものことを考えているつもりで、自らが甘受してきた生活環境から一歩も想像の枠をこえていなかった俺。 「それに、船橋は、電車じゃなきゃ行けないから」 それがとどめの一語だった。 「電車賃、往復で、180円もかかるからだ」(p.408)  教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。  不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだ。けれど、この時点ではまだそこまで思い至らず、泣き笑いのような顔で直哉の頭をなでるのが精一杯だった。 「直哉、おまえ、すごいな。イカしてるよ」 直哉は唇の上にてからせた洟をすすりあげて笑った。 「あたぼうよ」(p.457) 「(吾郎)それから妻はこんな話をしました。これまでいろいろな時代、いろいろな書き手の本を読んできて、一つわかったことがある。どんな時代のどんな書き手も、当世の教育事情を一様に悲観しているということだ。最近の教育はなってない、これでは子どもがまともに育たないと、誰もが憂い嘆いている。もっと改善が必要だ、改革が必要だと叫んでいる。読んでも読んでも否定的な声しか聞かれないのに最初は辟易したけれど、次第に、それはそれでいいのかもしれないと妻は考えはじめたそうです。常に何かが欠けている三日月。教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない、と」(p.464)

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2017/01/09

戦後から現在に至るまでの親子孫4代に渡る教育、特に塾に関わり続けた一族の話し。 ピアノに興味が無くてもピアノの森が面白いように、将棋のルールを知らなくても四月のライオンやサトシの青春が面白いように、教育や塾に全く興味が無くても知らなくても、この本の世界に没入してしまう本。 今...

戦後から現在に至るまでの親子孫4代に渡る教育、特に塾に関わり続けた一族の話し。 ピアノに興味が無くてもピアノの森が面白いように、将棋のルールを知らなくても四月のライオンやサトシの青春が面白いように、教育や塾に全く興味が無くても知らなくても、この本の世界に没入してしまう本。 今年1冊目の本だったけど、もしかして今年一番の本に出会ってしまったかも。冬の搾油所で読み始めて止まらなくなり、最後の1ページを読み終わると、涙が止まらなくなくなってしまった。 内容は書きません。この本皆に読んでほしい。特に教育関係者は必ず読まないといけない本だと思う。 自分も20年、民間の教育の会社にいたのだが、もっともっとできることがあったんだなと、今更ながら反省してしまう。もう戻ることはないだろうけど、どっかで教育という魔物が今も自分の体の中にあるような気がして恐ろしい気もする。 森絵都さん、随分前に風に舞うブルーシート?だったかを読んで、あまり好きではなくなってしまったのが、もったいなかった。一発で森さんのファン。 今年最高の一冊。 いやこれ以上の本が読めるとするとそれだけで生きている歓びがある。

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2017/05/05

正月ののんびりした時間を使っていい本を読ませてもらいました。 地元千葉が舞台の、塾 勃興時期の教育に関わった家族のお話ですが、自分の小中学時代の状況とも一部重なるところもあり、共感して一気に読み上げました。昭和の人達の熱い思いと、今のギャップ、、。教育に限らず、様々な環境に置かれ...

正月ののんびりした時間を使っていい本を読ませてもらいました。 地元千葉が舞台の、塾 勃興時期の教育に関わった家族のお話ですが、自分の小中学時代の状況とも一部重なるところもあり、共感して一気に読み上げました。昭和の人達の熱い思いと、今のギャップ、、。教育に限らず、様々な環境に置かれている人にきっと支持される作品なんだと思いました。おすすめの一冊です!

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2017/08/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

昭和36年、千葉県にある小学校の用務員室から始まるこの話は、親子孫4代にわたる激しくも優しい家族の物語。 どの登場人物も魅力的だったが、私が好きなのは吾郎と一郎。二人とも打てば響くタイプではないが、おっとり、粘り強いタイプ。激しい女が多い大島家においては男性陣がいいバランスを保っている。 塾を開いた時、「学校が太陽なら塾は月。今は三日月だけど満月を目指す。」とがむしゃらに突き進んできた千明だが、死の間際に気づく「教育も常に何かが欠けている三日月。欠けている自覚があればこそ人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない」と。 そして、一郎は思う。「満ちるのをあきらめたとき、ばあちゃんはもしかしたら満たされていたのではないか」と。 清々しい作品でした。

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2017/01/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公が入れ替わり目線が変わっていく構成が新鮮でおもしろい。自分で学ぶ力を育てたいというところに共感したが、プリントを工夫し手助けをするだけで伸びるかは疑問。教育格差について考えさせられた。仕事に全力を注ぎ没頭する姿にも親近感をもった。

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2017/01/04

こちらもちょっとしんどかった。エネルギーはあるんだけど、結局理想の教育って何?というのが見えない。腕を持った吾郎となり上がらんとするエネルギーのある千明の二枚看板までは良かったが、千明1人だとどうにも何がしたいのか。時代時代の政策を入れたりしてたけどこの辺もなんというか取材したも...

こちらもちょっとしんどかった。エネルギーはあるんだけど、結局理想の教育って何?というのが見えない。腕を持った吾郎となり上がらんとするエネルギーのある千明の二枚看板までは良かったが、千明1人だとどうにも何がしたいのか。時代時代の政策を入れたりしてたけどこの辺もなんというか取材したものをそのまま出されても…

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