アウシュヴィッツの図書係 の商品レビュー
2017年1月12日(木)に近大の図書館で借りて読み始め、14日(土)に読み終える。実話に基づいたフィクションだけど、想像を絶するようなアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所やベルゲン・ベルゼン強制収容所などでの生活の描写には真に迫るものがあり(基本的な部分は実話に基づいているは...
2017年1月12日(木)に近大の図書館で借りて読み始め、14日(土)に読み終える。実話に基づいたフィクションだけど、想像を絶するようなアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所やベルゲン・ベルゼン強制収容所などでの生活の描写には真に迫るものがあり(基本的な部分は実話に基づいているはず)、恐くて読み進めるのが困難な場面も所々あった。 以下、特に印象に残った箇所からの引用。スラッシュは段落の切れ目。 「神が存在するなら、悪魔も存在する。どちらも同じ道を行く旅人だ。ただ、向きはさかさまだ。良くも悪くもお互いを必要としていると言えなくもない。もし悪というものが存在しなかったら、どうしてこれが善だと言えるだろう。まあ、アウシュヴィッツほど悪魔がのさばっているところは、世界のどこにもないだろうが。」(223-4頁) 「神様はアウシュヴィッツという存在をお許しになったのだ。しかし、悪臭を放つ堆肥の中から、この上なく美しい花が咲くこともである。神様は腕のよい時計職人のようだと聞いたことがあるけれど、もしかしたら神様は時計職人じゃなくて庭師なのかもしれない。/神様は種をまくが、悪魔はその苗を刈り取り、全てを破壊する。/この狂気のゲームに勝つのは誰だろうとディタは自問した。」(224-5頁)
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アウシュヴィッツの悲惨で残酷な話しではあるものの、子供目線なので目を背けずに読める感じでした。未来のある、未来しか見えない子供目線だからこそ辛すぎる生活も前向きに語られる部分が多かった気がします。この世界の何処かで今も尚、戦争が続き飢えや人種差別、暴力での支配が行われています。決...
アウシュヴィッツの悲惨で残酷な話しではあるものの、子供目線なので目を背けずに読める感じでした。未来のある、未来しか見えない子供目線だからこそ辛すぎる生活も前向きに語られる部分が多かった気がします。この世界の何処かで今も尚、戦争が続き飢えや人種差別、暴力での支配が行われています。決して、このアウシュヴィッツの話が遠い昔の話しの、過去の話しではない事に心が痛いです。
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アウシュビッツの収容所内の描写が凄まじい。 これほどまで劣悪だったとは…。 これまで映画やドキュメンタリーなどで ある程度の知識はあったけど 初めて知ることがいっぱいあった。 あらためてこの凄惨な状況の中で亡くなった 大勢の方たちに思いを巡らせた 私には関係ないと言ってしまえば...
アウシュビッツの収容所内の描写が凄まじい。 これほどまで劣悪だったとは…。 これまで映画やドキュメンタリーなどで ある程度の知識はあったけど 初めて知ることがいっぱいあった。 あらためてこの凄惨な状況の中で亡くなった 大勢の方たちに思いを巡らせた 私には関係ないと言ってしまえばそれまでなのだけど どうしても、申し訳ない、救えなくて… と思う気持ちが止まらない。 あの中で生き延びた聡明で本好きの少女のことを 書籍化してくれた著者がいて また、それを日本語で読めることを 心から感謝したい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
アウシュヴィッツの家族収容所の学校で 図書係をしていたディタのお話。 事実を元に読みやすくストーリーのある小説となっている。 ディタの強さ、優しさに惹かれる。 フレディ ヒルシュの強さにも。 アウシュヴィッツで生き抜いた人たちは 彼らの強さに救われることも多いだろう。 小説だからいないはずの登場人物ではなく、 ディタもヒルシュも実際に生きていたんだ。 後書きに出てくる本物のディタ(エディタ)は 80歳になった段階でも強さを感じることができた。 闘い続ける登場人物たちに辛くなる場面もあったが、 それでも最後まで闘い抜いた、生き抜いた人たちに敬服。
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すごい引力のある物語。いま、日本が幸せで、本を通じていろんな世界を知ることができる環境を改めて幸せに感じた。アウシュビッツのような過酷な状況の中でも、本や物語があれば、人は希望を抱き心は自由である。
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タイトルでお察しの通り、独裁政権下による言論弾圧、その一環としての書籍への弾圧に対する抵抗が物語の主題として描かれる。 非常に強い意志を持った主人公「ディタ」であるが、それ以上に強い濁流として氾濫する「戦争」という大河。 大きな流れの中でも心が輝き続ける人間がいるというこ...
タイトルでお察しの通り、独裁政権下による言論弾圧、その一環としての書籍への弾圧に対する抵抗が物語の主題として描かれる。 非常に強い意志を持った主人公「ディタ」であるが、それ以上に強い濁流として氾濫する「戦争」という大河。 大きな流れの中でも心が輝き続ける人間がいるということ。悪い人間でなくても、うねりの中でその人の心は壊れてしまうこと。この手の物語は何百万回と描かれている気もする。ましてや8月になるたびに戦争の教訓をガッツリ教わる日本人としては。本書の特筆すべき点はそれが実話に基づいているという点なのだろうか。
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事実をもとに脚色したフィクション小説。 アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所内、囚人であるフレディ・ヒルシュが開いた子供ための学校がある。そこで図書係を任された少女、ディタを主人公に、時に彼女の周囲の人物に視点を移しながら語られる、アウシュヴィッツの悲惨な日常と、解放までの...
事実をもとに脚色したフィクション小説。 アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所内、囚人であるフレディ・ヒルシュが開いた子供ための学校がある。そこで図書係を任された少女、ディタを主人公に、時に彼女の周囲の人物に視点を移しながら語られる、アウシュヴィッツの悲惨な日常と、解放までの過酷な道程。 図書館のティーンズコーナーでこの本を見つけた。大人でも十分に読みごたえがあるが、平易な言葉を選んで書かれており、中学生や高校生向けだと思われる。 アウシュヴィッツの名前や強制収容所の悪夢のような事実は、学校も習う有名なものだし、子供の頃にアンネの日記を漫画で読んでいたから、大体のことは想像がついた。それでも、負の遺産は何度触れても痛ましい。 人一倍の勇気と正義感を持つ少女、ディタは、収容所内には持ち込み禁止であるはずの書物、そのたった8冊の管理を担う「図書係」を、学校のリーダーであるヒルシュから託される。見つかれば即刻処刑という危ない仕事だが、必ず学校の建物内でのみ扱い、持ち運びの際には服の中の秘密のポケットに仕込むなどの工夫で監視の目をかいくぐる。 絶望の淵に沈みながらも、囚人たちのレジスタンスのようにほんのわずかに希望の光が覗く瞬間を狙い続ける人たちもいる。「戦争が終わったあと、普通の生活に戻るために学ぶ」というようなセリフがあって、それがとても印象に残った。 未来を諦めなかった人たちの記録や証言によって、アウシュヴィッツや各地の収容所でのホロコーストの実体が、いま、克明に残されているのだろう。 物語を読破された方は、著者あとがきでこの本が書かれることとなった経緯もぜひ読んでみてください。
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これは良かった。事実に基づいたフィクション。 「アウシュヴィッツ」での出来事なので、読むのが辛い場面もありました。それでも、この本をたくさんの人に読んでもらいたい。 「生きることをあきらめない」、そんな意志を持った人々がいかに強いか。 [private]ディダはボロボロの...
これは良かった。事実に基づいたフィクション。 「アウシュヴィッツ」での出来事なので、読むのが辛い場面もありました。それでも、この本をたくさんの人に読んでもらいたい。 「生きることをあきらめない」、そんな意志を持った人々がいかに強いか。 [private]ディダはボロボロの本を丁寧に修復しながら図書係に打ち込んだ。父は痩せ細って死んでいった。病気がちの母は危うくガス室送りになるところだった。しかし、ディダは以前読んだ「魔の山」のみずみずしい文章を思い出しは自分を励まし、教師から聴かされた「モンテ・クリスト伯」の話に精神の不屈さを学ぶ。そして、彼女の愛読書は「兵士シュヴァイクの冒険」だった。ユーモアによる権力への抵抗と諧謔。明日をも知れぬ悲惨な日々のなかで本を読んでいる時だけは辛さを忘れ、希望を消さずにおれた。彼女は本によって自らを高め、強さを身につけていく。聡明で強い意志を持った姿には毅然とした美しさがあった。わずか14歳の少女だというのに。 冬が近づいた朝。空から白いものが舞い落ちてきた。雪かと思えば灰であった。「あの人たちが帰って来たよ」と母がディダに語りかけた。前日に家族収容所の半数がガス室送りになっていたのだった。同郷の親しかった人たちが灰になって空を舞っていた。その母は解放を前にして息をひきとり、ディダはすべての家族を失い独り取り残されたのだった。 [/private]
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本へのオマージュを抱かずにはいられない作品。 アウシュビッツの収容所内は、劣悪で自由のない絶望的な現実が広がっているが、8冊の本の中だけでは自由に生きられる。そこで見出した希望を道標に、何とか日々を生きていく。 本来なら禁じられている書物を、図書係として管理する少女とその周りの...
本へのオマージュを抱かずにはいられない作品。 アウシュビッツの収容所内は、劣悪で自由のない絶望的な現実が広がっているが、8冊の本の中だけでは自由に生きられる。そこで見出した希望を道標に、何とか日々を生きていく。 本来なら禁じられている書物を、図書係として管理する少女とその周りの人達が織りなすストーリーは必読。 少女の本への愛情、そして本の持つ力。 希望を持つ大切さ。 それらが詰まった一冊。
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※このレビューにはネタバレを含みます
毎年8月は戦争関連の書籍を読むことにしている。今年、選んだのがこの一冊。 アウシュヴッツ強制収容所内に秘かにつくられた学校。そこには8冊だけの秘密の図書館があった。図書係に任命された14歳の少女・ディタは所持が禁じられているその8冊の本を懸命に守り抜いていく。 まさに死と隣り合わせの地獄の環境、人間らしさを保つことさえ困難な状況下で本が人びとの心にわずかな希望を繋いでいく。 本書が事実に基づいたフィクションという点は非常に大きい。アウシュヴッツの悲劇を「事実」として捉えると同時に、ディタが絶望のなかで苦しみながらも大人に成長していく姿、登場人物たちが織り成す人間模様を「物語」として感じることができる。 何よりの救いはディタという女性が実在すること、彼女が力強く誇りを持ってその後の人生を生きていることだ。 途中で何度か挫折しかけた。しかし読み終えた時には「この本を読んで良かった」と心底思えた。迷うことなく自分の中の特別な一冊に加えることにした。
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