脳が壊れた の商品レビュー
警察庁が毎年発表している犯罪白書の中に、自殺者数の統計があります。 自殺を選ぶ原因、1位が病気、2位が経済・金銭です。 この本を読むと、今まで、できたことが、全くできなくなると人は、ヤバいことを考えるなと、 よくわかります。 貧困女子の取材から、著者の名前を知っていたので、 まさ...
警察庁が毎年発表している犯罪白書の中に、自殺者数の統計があります。 自殺を選ぶ原因、1位が病気、2位が経済・金銭です。 この本を読むと、今まで、できたことが、全くできなくなると人は、ヤバいことを考えるなと、 よくわかります。 貧困女子の取材から、著者の名前を知っていたので、 まさか、最近、脳の機能障害を発症していたとは、思いませんでした。 また、奥様が、かなりヘビーな人だったことも、この著作で知りました。 あらためて思うのは、生死や長い苦痛を伴う病気になると、人は、自殺を考えるが、 自殺を選ばない条件があるとするならば、周囲の人間のサポートと、それまでの人間関係なんだと思いました。 多くの人は、病気をしても、助けてくれる人は、少ないんじゃないでしょうか? また、助けを呼ぼうと、思わない人は、結構いると思います。 そういう意味は、著者は、凄く恵まれている人なんだと思います。 現代の日本は、ますます、生活が便利になっていますが、それと比例して、 人間関係は箕臼になっています。友人と呼べる人もいないし、家族関係も、あんまり、 やりがいある仕事を持っている人は少数で、いつクビを切られるか、わからない人もたくさんいます。 そういういった状況で、「病気」になるケースも多いと思います。 個人的には、そういう状況だったら、どうすればいいのかな?と考えます。 もちろんそうなる前に、「ライフライン」を構築するように動かなくてはいけませんが、 今の日本では、それができる人は、かなり優秀な人では、ないでしょうか?
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病気の当事者が、発症から急性期、リハビリにかけての実体験を緻密に著すことができていることに一番驚きました。 罹った者でなければわからない症状や感覚を読み手にズバンと伝わるような比喩を交え緻密に綴り、時にクスリとするような一節も交えていたりして、リズムよく一気に読んでしまいました。 リハビリを若者の発達支援と積極的に結びつけられないかという問題提起は目から鱗。
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高次脳機能障害の当事者の方が、ご自身を振り返り解説された本。 『奇跡の脳』に近いものがあるけれど、日本人の本業ルポライターの方が書かれただけあって、こちらのほうが身近な例や生活の中で「あれか」と思いあたる点が多い。 具体的な症状のひとつひとつにはなんとなく分かるものもあれば、言語化されていてもどんな感覚なのか想像もつかないものもある。その理解の出来なさに、高次脳機能障害の難しさを感じる。 気づきの多い一冊だったけれど特にはっとしたのは第8章で個性的な配偶者の病的な家事のできなさを解説してから、脳梗塞の主因は自分自身だと言い切るくだり。「僕が彼女の家事を奪ってきただけだった」と、こう言えるのはすごいことだと思う。 あとがきに配偶者の方のコメントも有り、著者から見て意外なたくましさを発揮したようでいて、実は本人の中ではとっくに肚が決まっていたことが書かれていて、驚かされる。 あとは第10章の「人の縁」は資産だ、のくだり。 ほんとになあ…と思うのだけど、なかなか思うように築けない者としては身につまされる思いで読んだ。ほんとになあ…。
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「最貧困女子」「家のない少女たち」のルポライター鈴木大介が脳梗塞になって、高次脳機能障害状態になったという。高次脳機能障害とは、外から見てわかる麻痺や障害ではなく、感情が抑えられなくなったり、注意力散漫になったりといった方面で問題が発生すること。外からは当人の性格や個性の問題のよ...
「最貧困女子」「家のない少女たち」のルポライター鈴木大介が脳梗塞になって、高次脳機能障害状態になったという。高次脳機能障害とは、外から見てわかる麻痺や障害ではなく、感情が抑えられなくなったり、注意力散漫になったりといった方面で問題が発生すること。外からは当人の性格や個性の問題のように見えるので、障害として理解されにくく、それがさらに当人には辛い。 著者はルポライターなので、外から見えにくい高次脳機能障害を自らの経験として言語化しようと試みる。それが本書だ。 見えているのに左側だけ無視してしまう半側空間無視とは、主観的にはどういう感じなんだろう。感情が抑えられないというのは、当人には自覚があるんだろうか? 不思議だ。知的好奇心といえば聞こえはいいが、ぼくがそういうことを知りたい理由は、つまるところ不思議だからだ。障害に苦しんでいる人に興味本位で聞いたりはできないので、こういう本はありがたい。 ただ、だいぶ食い足りない。 鈴木大介は(自分でも本書でそう書いているが)対象に感情的にのめり込むタイプのルポライターだ。だからこそ「最貧困女子」「家のない少女たち」は迫力があって考えさせられたのだが、本書は主役が著者本人で、ぼくは鈴木大介個人には別段興味がない。奥さんや、義母との関係や、生活信条を細かく書かれても、それ脳の話と違うよね。その分薄まった感じだ。 リハビリを助けてくれる理学療法士たちに感謝し、リスペクトする一方、医師には反感を持っているようだ。それは個人の勝手ではあるけれど、そのせいか著者の脳の状態に関する医学的な情報や所見があまりない。どの程度のダメージだったのかもよくわからない。体験談(それはそれでもちろん貴重だけれど)にとどまってしまい、もう少し客観的な情報がほしかった。ぼくの経験では、今の医師はわかっていることについては詳しすぎるくらい説明してくれる。自分の状態について書く分にはプライバシーの問題も起きないし、はしょっちゃったのか、それとも本当に説明してくれなかったのか(だとしたら、患者としてだけでなくプロのルポライターとしてちゃんと説明を求めなくちゃダメだと思うが)はよくわからない。
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本書は、取材記者である著者が、脳梗塞を患い、高次脳機能障害となった体験を克明に記録したものである。例えば、呂律が回らず発話ができない。手の指が動かせない。いわゆる半側空間無視(左側にあるものを認識できない)。その後徐々に回復していくも、右側にあるものから目が離せなくなり注視してし...
本書は、取材記者である著者が、脳梗塞を患い、高次脳機能障害となった体験を克明に記録したものである。例えば、呂律が回らず発話ができない。手の指が動かせない。いわゆる半側空間無視(左側にあるものを認識できない)。その後徐々に回復していくも、右側にあるものから目が離せなくなり注視してしまう、感情が溢れてきて(感情失禁)それを抑えるために顔がニヤけてしまうといった「不自由感」を著者は体験する。 しかし、著者の場合、なまじ自立歩行ができるだけに、傍目には「ちょっとヘンな人」で済まされてしまうのではないか。半身不随などのわかりやすい障害があれば、同情や支援の手を差し伸べてもらえるかもしれないが、こうした健常者と障害者のボーダーライン上にいる人間は、その苦しみをわかってもらえない。そのことに著者は気づき、その「当事者意識を言語化」しようと試みる。 また、その過程で著者は、自分の感じている不自由感が、高次脳だけでなく、精神疾患やうつ病、さらには社会の底辺に追いやられている貧困層にも当てはまることを、自らの取材経験から悟る。彼らもまた、境界線上にいる人々であり、適切な支援を受けられていない、声なき声なのだ。 個人的なことを書く。私の勤める会社で、ある時期から遅刻や欠勤が目立つようになり、出勤してきても覇気がなく、明らかに仕事に身が入らないといった同僚がいた。その同僚はほどなくして退職してしまったが、私は彼のことを、ただやる気がないだけだ、もっと気合いを入れろ、と勝手に思っていた。しかし、違っていた。いま思えば、彼はうつ病だったのだ。うつ病患者にとって、気分が落ち込む、何もやる気が起きないといったことは、どうしようもないことであり、ちょっと休んだくらいでよくなるものではない。ましてや気合いでどうにかなるものでもない。彼に必要なのは、適切な「治療」だ。どうして私はそのことに気づけなかったのだろう。どうして私は彼に優しく接することができなかったのだろう。 このように、世の中には声を上げられずに苦しんでいる人々、「不自由感」に苦しみながらも表現の手段や機会を持たない人々がいる。せめてその代弁者になれないだろうか。それが著者の本書を書く強い動機となっている。 こう書くと、何やら辛気臭くて暗い本のように思うかもしれないが、そうではない。著者の性格ゆえなのだろう、自分自身を取材しながらも、そのトーンは常に明るく、ユーモアに溢れている。脳梗塞になってよかったとは言えないだろうが、結果として「黒字決算」だったと書いている。 人生にはさまざまなことが起こる。しかし、その善し悪しはそのときどきで決まるものではない。そのときは損したと思っても、あとでお釣りが返ってくることもある。それはその人しだいである。著者の前向きな姿勢は、読者に勇気を与えると信じる。
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人は資産の一つ、という言葉がとても響きました。 鈴木さんが仰るように、高次脳機能障害に限らず、何かに困っている人、しんどい思いをしている人に一番必要なのは、たくさんの人の手、「依存先、居場所を増やすこと」ではないかなあと思います。 ユーモラスな文章の随所に、鈴木さんの、奥さんやご家族、ご友人に対する温かな気持ちが感じられて、とてもほっこりしました。同時に、この想像を絶するような辛さを、面白おかしくかつわかりやすく言語化されていることに、感嘆のため息が止まりませんでした。「人に何かを伝える」ということの難しさについて、改めて考えさせられました。
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噛み砕いたユーモラスな文章で、スラスラ飲み込むように読めた。 医者の論文などより、こういう表現を出来る人が書く書物の方が、医学にとって何倍も価値のあることだろうな。
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ルポライターである著者が脳梗塞を発症してからの記録、が後半は夫婦のいい話になっていた 笑 高次脳機能障害という目に見えにくいからこそ理解されにくい状態は本人も家族も辛さの次元が 身体障害とは違うものがあるのだろうと思う 医療面で出来ることが終わってしまうとあとはリハビリで本人...
ルポライターである著者が脳梗塞を発症してからの記録、が後半は夫婦のいい話になっていた 笑 高次脳機能障害という目に見えにくいからこそ理解されにくい状態は本人も家族も辛さの次元が 身体障害とは違うものがあるのだろうと思う 医療面で出来ることが終わってしまうとあとはリハビリで本人がやるしかない どれだけ大変だったんだろうが 妻の立場がなかなか面白い 「相手がやってほしいことをやる」「自分がしたいことと相手がしてほしいことは違う」は 夫婦で大事なことだと思う 病気で1番必要ことはやはり 頼れる人 (頼るべき人」「頼れる人」「頼りたい人」も違う
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41歳で脳梗塞を患ったルポライター鈴木さんご自身の渾身の闘病歴。自らの高次機能障害についても冷静に分析していて、非常に分かりやすかった。一方で、自分のことを未だにうまく伝えられない私の父親(脳出血後に寝たきり)を思い涙しながら読んだ。
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電車の中にいる、見ちゃイケない!って人の脳内が少しわかる本。とても面白 くて、重くなりがちな障害?について、声に出して笑えるほど面白い!そして、分かりやすい。いや、わからないけど。そんなことが脳内で起こってるの?!って、すごく不思議。一読の価値あり。
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