日本語動詞のアスペクト の商品レビュー
国語学の研究史において、アスペクトの分析において画期を切り開いた金田一春彦の二つの論文と、この研究に触発されそれを継承・発展させた論者たちの論文をまとめて収録している本です。 中国語の「我明白」は日本語で「私はわかります」となり、「私はわかっています」とはなりません。しかし、「...
国語学の研究史において、アスペクトの分析において画期を切り開いた金田一春彦の二つの論文と、この研究に触発されそれを継承・発展させた論者たちの論文をまとめて収録している本です。 中国語の「我明白」は日本語で「私はわかります」となり、「私はわかっています」とはなりません。しかし、「我知道」は「私は知っています」となり、「私は知ります」とはなりません。金田一は、中国人に日本語を教えた経験から、こうした日本語のアスペクトにかんする研究の重要性に気づいたといいます。論文「国語動詞の一分類」では、動詞を「状態動詞」「継続動詞」「瞬間動詞」そして「第四種の動詞」の四つに分類し、それぞれの意味と用法が論じられています。また論文「日本語動詞のテンスとアスペクト」では、「~している」「~してある」「~してしまう」といったアスペクトの意味の分類と、それが実現される条件についての考察がなされています。 藤井正の論文「「動詞+ている」の意味」は、金田一によっておこなわれた動詞の分類において複数の基準が混淆してしまっていることを指摘し、その修正を試みたものです。また鈴木重幸と高橋太郎の論文は、多くの用例を挙げてアスペクトの諸相を示しています。 本書の半分近いページ数を占める吉川武時の論文「現代日本語動詞のアスペクトの研究」は、上記の諸成果を踏まえて、アスペクトについての包括的な研究の成果を報告したものであり、本書の到達点を示すものとなっています。 また巻末に収められている高橋太郎の「解説 日本語動詞のアスペクト研究小史」は、松下大三郎以来のこの分野の研究史を簡潔にまとめるとともに、本書所収の諸論文の意義についても解説がなされています。
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