恋風街道 他二編 の商品レビュー

山手樹一郎(著者)

2024/08/28

戊辰戦争のなか、旗本の高梨三郎の嫡子として生まれた雄太郎は、勤王の志をいだき「和泉雄介」という変名をつかっていまだ新政府軍に抵抗する動きのある幕府の動向をさぐっています。彼は、幕府の敗走兵に取り巻かれていた露という女性を助けますが、彼女は三郎によって定められた雄太郎の許嫁であり、江戸を去った雄太郎のゆくえをさがしていることが判明します。

三郎の後妻として高梨家に入ったお沢は、弟の大篠範之助を高梨家の養子にしようとたくらみ、範之助もお露を自分の妻にしようと彼女の後を追いかけてきます。その一方、太夫のお栄とその付き人の粂は、範之助の父の範十郎とその仲間にかたき討ちを果たそうとしていました。お栄は範之助に敵対する雄太郎に協力し、しだいに彼に魅かれます。こうして、雄太郎が露とお栄という二人のヒロインのあいだを行き来しつつストーリーが展開されていきます。

結末部分は、勝海舟という大物がとつぜん登場してやや性急に幕引きを図ったような印象もありますが、概しておもしろく読むことができました。