君たちはどう生きるか の商品レビュー
マンガにもなった名著との評価に期待しつつ読みました。大人になった自分にとっては、昭和初期の時代背景描写が気になるぐらいで特に感じるところがなかったのが残念。やはり、著者や山本有三が期待した読者層である小中学生が、自分で考えることの大事さに気づくために読んでもらいたい本だと思う。
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梨木香歩の小説を読む前に、元ネタの本も読んでおこうということで。 もちろん、私の中学生時代にも、この本はすでに名作として図書室に置かれていたのだけれど、今になってから読んでよかったと思う。たぶん、同級生にも大人たちにも嫌気のさしていた当時の自分には、「おじさん」の語る倫理は、...
梨木香歩の小説を読む前に、元ネタの本も読んでおこうということで。 もちろん、私の中学生時代にも、この本はすでに名作として図書室に置かれていたのだけれど、今になってから読んでよかったと思う。たぶん、同級生にも大人たちにも嫌気のさしていた当時の自分には、「おじさん」の語る倫理は、ただ反発を感じるだけだっただろう。 実際に読んでみると、自由主義にもとづく倫理を説くような面もあることはあるが、むしろ、有機的な社会構造の分子としての個人であるとか、「生産関係」や階級関係など、若い読み手を社会科学的な考察へと導こうとする側面が強く出ているのは意外だった。 自己を中心とする狭い見方から外へ出ること、社会の決めた道徳ではなく自己の倫理にしたがって行動すること、過ちを認めて正す勇気をもつこと。この本が説く自由主義的・進歩主義的理想は、今の時代から見れば、多少ふるくさく、そしていつの時代にも、若いひとにとっては説教がましく聞こえるかもしれない。しかしこの本が書かれた1937年という時代において、その一言ひとことは、考慮をかさねて絞り出された抵抗の言葉だったのだ。特に、まちがったことが行われているときに、正しいと信じることをなす勇気をもてない苦しみ、その過ちを認めることの苦しみについて語るとき、作者は、どれだけ苦い思いをかみしめていただろうか。 そのような残酷な時代において、「君たちはどう生きるか」という問いは、苛烈な問いかけでもあったはずだ。その問いは、もはや今の時代において意味を失ったといえるだろうか。
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