小松とうさちゃん の商品レビュー
表題作。小松と宇佐美(うさちゃん)の二人のおっさん。小松の恋の始まり。52歳同い年のみどりと出逢い距離が近づいていく。その過程の一つひとつがいい。年齢の落ち着きと恥じらいと二人の会話の微笑ましさ。ネトゲに夢中のうさちゃんもいい味出していてこの三人の空気感がとてもすてき。 『ネクト...
表題作。小松と宇佐美(うさちゃん)の二人のおっさん。小松の恋の始まり。52歳同い年のみどりと出逢い距離が近づいていく。その過程の一つひとつがいい。年齢の落ち着きと恥じらいと二人の会話の微笑ましさ。ネトゲに夢中のうさちゃんもいい味出していてこの三人の空気感がとてもすてき。 『ネクトンについて考えても意味がない』も印象的。クラゲと人間が心で会話を交わす。お互いが知らない世界を知るということ、命のこと、一緒に笑う相手がいるということ。一回の出逢いの奇跡のような瞬間の物語。 絲山さんは初めて読んだけれどこれからも読んでいきたいと思った。
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初読かと思っていたら、読み始めて既読感が。再読だったようだが随分前に読んだせいか、詳細は忘れていたので新鮮な気持ちで読めた。 50代の男性二人、小松とうさちゃん(正確にはうさぴょん)こと宇佐美を軸に、日常と変化とが描かれる。 はっきりとは書かれていないが、それなりの役職であり...
初読かと思っていたら、読み始めて既読感が。再読だったようだが随分前に読んだせいか、詳細は忘れていたので新鮮な気持ちで読めた。 50代の男性二人、小松とうさちゃん(正確にはうさぴょん)こと宇佐美を軸に、日常と変化とが描かれる。 はっきりとは書かれていないが、それなりの役職でありそうな宇佐美が、ネットゲーム内でもリアルの仕事と同じように根回しだの通達だのをして『何やってんだか』とため息を吐きつつ結局はネットでもリアルでも世話を焼いているのが何とも楽しい(だから出世するのだろう)。 50代にして非常勤講師で少ない給料しか得ていない小松だが、実家暮らしのせいか生活に困っているわけではなく時々飲みに行く程度の楽しみもある。その小松が人生初であろう真面目な恋の様子は一進一退ながらもほのぼのする。 小松の恋のお相手みどりは『見舞い屋』なる、『非合法ではない』けれどおおっぴらには言えない仕事をしているが、だからと言ってスレているわけでも浮世離れしているわけではなく、小松と同世代だけにそれなりの人生経験がある一方で純粋なところもあって不思議な魅力がある。 時に不穏な空気が漂いそうになりつつ、宇佐美のネットゲームシーンでほのぼのし、小松の倹しくも気楽な日常に共感する。 日常を離れて没頭する筈のネットゲームなのにいつの間にか惰性になっていたり、非常勤講師という弱者の立場ながらわずかな誇りにしがみついていたり。 かと言って、おじさん達の悲哀を描いているわけではない。逆に人生まだまだこれからよ、と張り切っているわけでもない。 程よい前向き感と、程よいお気楽感と、程よい悟り感とのバランスが心地好い。 何より濃くも希薄でもない、程よい距離感の小松と宇佐美の関係が心地好い。 絲山作品をそう沢山読んでいるわけではないが、読んだ中では一番好きな作品。 絲山さん自身も小松と宇佐美には思い入れがあるらしいので、そのうち続編も書いて欲しい。 もう一編の、瞑想の中で繋がる女性とクラゲの話はいかにも文学という感じ。
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久しぶりに絲山先生読もうと思って選んだら読んだことあるやつだった!笑。でもメディアマーカーにしか登録なかったから読み直し。絲山先生が見えるような話。
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中編「小松とうさちゃん」短編「ネクトンについて考えても意味がない」掌編「飛車と騾馬」 まずは「飛車と騾馬」。酒場での2人のおっさんの”今の若い人は”的なちょっと愚痴っぽい会話。飛車が蓄電業界でバリバリ働く宇佐美(うさちゃん)で、騾馬が大学の非常勤教師で結婚に縁遠く子を持たない(一...
中編「小松とうさちゃん」短編「ネクトンについて考えても意味がない」掌編「飛車と騾馬」 まずは「飛車と騾馬」。酒場での2人のおっさんの”今の若い人は”的なちょっと愚痴っぽい会話。飛車が蓄電業界でバリバリ働く宇佐美(うさちゃん)で、騾馬が大学の非常勤教師で結婚に縁遠く子を持たない(一代雑種に例えられる)小松。 この二つのキャラが絲山さんの中で消し去れず、中編になったのが「小松とうさちゃん」です。 主題は新幹線の中で知り合った長崎みどりと小松の52歳同士の恋。そして恋愛に不器用な小松になにくれと助けを出す宇佐美。伏線にうさぴょん名乗り、既にマンネリ化したゲームから抜け出せずにいる宇佐美とゲーム仲間のやり取り。もう一つがみどりを見舞い屋というちょっと怪しい稼業に引き込んだ社長・八重樫のみどりに対する屈折した愛情。最後にこれらが一点に集約されて行きます。 主題は良いですね。”小太りの中年男”小松の決断が格好良かったり、離婚歴のあるみどりが良い意味で純情っぽかったり、そこに意外にやり手の宇佐美の友情が上手く絡まって。中年らしくゆったりと暖かでちょっと微笑ましい。 しかし伏線はどうかな。主題だけでは薄っぺらくなるのでしょうが、それにしても結構ボリュームが多い。確かに最後に一点に集約はして行くのですが、特に宇佐美のネトゲ場面はもう少し減らして、主題を膨らませた方が良かったような気がします。 あらためて過去の絲山作品についての自分の感想を読みなおすと、そこかしこに「困ってしまう」「悩んでしまう」と書いています。良いのだけど、どこが良いのか掴めない。言いたい事が掴みきれないのだけど、しっかり読まされてしまう。この作品はむしろ判りやすい方なのかな。ともかくも上手い作家さんです。
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【内容紹介・引用】 ーー「小松さん、なんかいいことあった?」 52歳の非常勤講師小松の恋と、 彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱 52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この...
【内容紹介・引用】 ーー「小松さん、なんかいいことあった?」 52歳の非常勤講師小松の恋と、 彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱 52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。 この表紙はあれか?小松か?怖いじゃないか。やくざか? この本の中の小松さんは薄給の臨時講師で生徒を愛する温厚な紳士。50才オーバーの恋の話ですがエンタ-テイメント性よりも穏やかで人間味に溢れた中編です。 飲み屋仲間の宇佐美(うさちゃん)もなかなかいいキャラですが、濃い演出とかは無いので結構薄味。この濃い味を求める感覚はもしかしてエンタメに毒されている僕? この関係性結構魅力的なので続編あったら読むかもしれない位には気に入りました。
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全体に流れる滑稽さとシリアルさになんともいえずひきこまれる。そして、気持ちの奥のほうでざわざわと落ち着かない居心地の悪さのような感覚がまた癖になる。
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はっきりとした章立てしないまま 人生に限界を感じ半ば諦めがちの大学非常勤講師 小松 ネトゲの盟主をやりながら日々の生活をキチンとこなす 宇佐美ことうさちゃん 見舞い屋というややグレーな仕事に若干の負い目を感じながら何とかやり過ごす みどり この3人とみどりの仕事斡旋者 八重樫...
はっきりとした章立てしないまま 人生に限界を感じ半ば諦めがちの大学非常勤講師 小松 ネトゲの盟主をやりながら日々の生活をキチンとこなす 宇佐美ことうさちゃん 見舞い屋というややグレーな仕事に若干の負い目を感じながら何とかやり過ごす みどり この3人とみどりの仕事斡旋者 八重樫で 短くトントンと話が進んでいく。 人生に疲れきった人は 美味しい話が目の前にあっても そう簡単には飛びつかない。 それでも飛びつきたい心の揺れを ヤキモキしながらも楽しめた。
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大学で非常勤講師をしている52歳独身の小松と、40代のネトゲにはまっている家族持ちのうさちゃんこと宇佐美。 このオヤジ二人組のゆるゆるした関係がとても良かった。 仕事も家庭環境も違う飲み友達の二人は居酒屋「たられば」で何てことのない会話を続ける。 そこに52歳の「見舞い屋」をしているみどりが加わり、物語にも深みが増してくる。 3人共儘ならない悩みを持ちつつ、大人としての適度な距離感を保って付き合っている様子が読んでいて好感が持てる。 52歳同士の大人の男女のもどかしい恋愛もコミカルでドラマを観ているよう。 ラストのみどりの見事な返し(途中から予想していた)に慌てるうさちゃんも微笑ましい。 年齢も近いせいか、この3人の大人同士の関わり方が羨ましい。 もう一つの短編『ネクトンについて考えても意味がない』は海の中の幻想的な物語。 海に潜ってただただ漂う。 流れに逆らうことなく、クラゲのようにネクトンからの影響を受けずに生きていけたらな。 クラゲ流の笑っている姿は穏やかで優しい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
大学非常勤講師の小松の52歳にしての恋。 ネトゲを惰性で続けてしまうのが悩みのうさぴょん。 見舞い屋として八重樫に言いくるめられてしまうみどり。 小松とみどりの不器用ながらの恋愛。 うさぴょんのゲーム仲間のムジナとネカマのしおんが、実はみどりさんだった事実。 おっさん二人のどうでもいい話なんだけど 面白いと思ってしまった。 クラゲと精神交流する話も面白かった。 波に逆らって活発に生きる人、波に身を委ねる人。 20代前半に著者の本読んで なにが面白いのかちんぷんかんぷんだったけど 三十路近くなって、面白さがわかってきた。 年を重ねるとわかってくることがあるんだね、小説も。悟りの境地。 ネルソンの庭、懐かしい。 また新潟に行ってみたい。
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タイトルにだまされた!うさちゃんって、うさぎじゃなくて、宇佐美という名前のネットゲームにハマっているおじさんだった!つまり、おじさん2人の話。小松さん、のほほんとしたいい味を出している。 一緒に載っている短編「ネクトンについて考えても意味がない」が良かった。私もクラゲと一緒に笑い...
タイトルにだまされた!うさちゃんって、うさぎじゃなくて、宇佐美という名前のネットゲームにハマっているおじさんだった!つまり、おじさん2人の話。小松さん、のほほんとしたいい味を出している。 一緒に載っている短編「ネクトンについて考えても意味がない」が良かった。私もクラゲと一緒に笑いたい。
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