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働く女子の運命 の商品レビュー

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29件のお客様レビュー

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2018/10/24

労働問題の専門家による、女性の労働環境を中心に日本の雇用システムについて論じた本。精緻な調査に基づく学術的な内容となっている。特に、女性の雇用のあり方について、明治から現代に到るまでの経緯についての記述が興味深かった。 「(女工の出発点 富岡製糸場)当時の女工たちは誇り高い士族...

労働問題の専門家による、女性の労働環境を中心に日本の雇用システムについて論じた本。精緻な調査に基づく学術的な内容となっている。特に、女性の雇用のあり方について、明治から現代に到るまでの経緯についての記述が興味深かった。 「(女工の出発点 富岡製糸場)当時の女工たちは誇り高い士族の子女で、十台半ばの若さながら、その賃金は校長並みで、食事や住居など福利厚生も手厚く、まさにエリート女工でした」p32 「1870年代末には女工の出身は主として農村や都市の貧しい平民層に移行し、生家の家計を助けるために口減らしとして労働力を売る出稼ぎ女工が主になりました」p33 「(1932年 社会局監督課)男子労働者の賃金は自己及び家族の生活を支持すべきものでありますが、婦人労働者の賃金は家計を補助するにすぎないものと一般世間が考え、婦人労働者自身もそんなものと考えて居る事が婦人労働者低賃金の最大の理由であります」p43 「(市川房枝、山高しげり)大政翼賛会で、「むしろ女子を徴用せよ、躊躇はご無用、未婚女子は待っている」と、女子労務動員を積極的に求めました」p47 「(上坂冬子 BG論)女子社員は職場の花といわれるのが常識でした。花は枯れたら生けかえるべし。女子社員は25歳をすぎると、はっきり冷遇されたものです。たとえば入社3年目くらいまでは給料も順調に上がります。が、25~29歳の女性の給料は少しも上がらなくなり、35歳をすぎると若い頃より減ってしまうのです」p56 「業務計画立案等の高度の判断力を必要とする業務は逐次昇進して幹部従業員となる男子職員のみに行わせ、結婚までの腰掛とみなされた女子職員には高度の判断力を必要としない補助的業務のみを行わせるという男女差別的労務管理を前提とします」p66 「20世紀初頭の日本では年功的な賃金制度など存在せず、基本的に技能評価に基づく職種別賃金でした。しかし第一次大戦後、大企業に子飼い職工を中心とする雇用システムが確立するとともに、長期勤続を前提に定期昇給制が導入され、これが年功賃金制の出発点になります」p72 「(小池理論)守勢に回らざるを得なかった年功制を、欧米の職務給と同じように合理性のあるものとして、いやむしろ産業資本主義段階にとどまっている古臭い職務給に比べて独占資本主義段階にふさわしい新しい仕組みとして打ち出すことを可能にした」p128 「終身雇用的原理のもとでは、長期勤続を期待できる男子労働者と比べて、結婚、家庭責任等のために短期に退職する可能性及び確率の高い婦人労働者は、企業にとっては不安定な労働力とみなされる。日本ではこのことは致命的なハンディキャップとなる。そこで経営者は、彼女等に男子と同じ訓練費用を投資することや責任あるポストに登用することをためらう。一方、女子側は、本格的な仕事を与えられない挫折感から、結婚や出産を好機として未練なく退職することになる。こうして悪循環が繰り返される」p139 「(女子の長期勤続は歓迎されない)女子の従事する仕事の内容と賃金額との乖離が年とともに大きくなるからである。経営者は、女子にいつまでもいすわられてはソロバンに合わないと計算するし、同僚の男子労働者は、女子はワリが良すぎると嫉妬し、白眼視する。そこから、わが国特有の、女子の若年定年制、なるものも生まれる(労組は支持)」p140 「(女子の再就職)資格やかつての就業実績は活かされないまま、パートという名の臨時的労働者としての生活に甘んじなくてはならないのが実態である」p142 「もともと欧米は男女平等で日本は差別的だったなどということは全くありません」p144 「女性は、男性並みに働くことを条件に総合職、基幹職として活躍していきますが、それができない多くの女性は、一般職という安住の地から非正規労働という下界に追いやられていきます」p246

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2018/07/21

20171228 1章読みづらすぎ問題。結局小難しい議論をこねくり回してこの辺やばいよねー、っていう指摘で終わってるので、あまり学びにはならなかったなぁ。というかこういう社会問題について背景知識が足りなすぎる問題。社会問題全般そうだけどもうちょっと年取ってそういうことを考える当事...

20171228 1章読みづらすぎ問題。結局小難しい議論をこねくり回してこの辺やばいよねー、っていう指摘で終わってるので、あまり学びにはならなかったなぁ。というかこういう社会問題について背景知識が足りなすぎる問題。社会問題全般そうだけどもうちょっと年取ってそういうことを考える当事者にならない限り限界あるかな。

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2018/02/04

本書は女性・職場・社会との連関を、近現代史、特に法令・政策の観点でまとめられている。自分自身は均等法施行後に就職したことと業界の関係もあり、日々の仕事の中でジェンダーギャップをこれまで感じる機会はほとんどなかった。しかしそれは、社会一般から見ればかなりレアな例だということが一読し...

本書は女性・職場・社会との連関を、近現代史、特に法令・政策の観点でまとめられている。自分自身は均等法施行後に就職したことと業界の関係もあり、日々の仕事の中でジェンダーギャップをこれまで感じる機会はほとんどなかった。しかしそれは、社会一般から見ればかなりレアな例だということが一読してわかった。そうした背景もあり、女性と労働のレリバンスは課題意識になかった。本書では女性にまつわる現行の制度が先人たち(特に女性)の労苦の上に成立していることが、史的に説明されている。まだまだ問題が山積している現代社会に、こうした諸問題に取り組める人材が、各所で求められる。とすれば大学教育が果たせる役割はまだまだ大きい。 本書の題名がやや本文と距離感がある。やはり編集部側の意向なのだろう。

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2017/11/29

この本は日本の女性の明治以降の労働史をていねいに紹介している。「女子」は結婚したり子供を産むので、長く雇ったところで荷物になるだけ。だから企業社会は若くて社会勉強をさせてあげられる軽い労働をするための女子しかいらない。それ以上の仕事をしたいという女子には分厚い壁だ。というようなこ...

この本は日本の女性の明治以降の労働史をていねいに紹介している。「女子」は結婚したり子供を産むので、長く雇ったところで荷物になるだけ。だから企業社会は若くて社会勉強をさせてあげられる軽い労働をするための女子しかいらない。それ以上の仕事をしたいという女子には分厚い壁だ。というようなことが書かれていた。   結婚したり子供産んだりしてると働けない。働いて生活費を稼ぐことができないということは自分以外が稼いだ生活費で食べて服着て屋根で雨風をしのぐことしかできない。私は何よりそれが自分としては嫌なんだ。シンプルに生活を自分の手で全うしたければ妊娠はできない。もう年齢的に妊娠はお役御免になりそうなことは少し安心だ。私は蜂社会だったら働き蜂だ。巣の壁ををひたすら塗り上げる。そんなに重要な仕事なんて望まない。会社でしたいことなんてそんなにないんだ。若くて社会勉強という働き方ではない場所は実際はあり、私はそこにいる。だがそういう生き方ができるのも先達たちの努力のたまものなのかな。たぶん50年前だったら日陰の座敷牢だろうし。おてんとうさまの下の道に寄れば時々あったかいし感謝しよう。  そういや私は30過ぎたとたん独身だと母親のリカちゃんハウスごっこの台本(20代で結婚し孫を産む役柄である)に合わないとして非難されて、で東京に出てきたとこもあるから、働く女子の運命は家庭内にもある。独身でボーナス貰ってる存在は母親が許さないのである。むしろ、単身で飛び出すことにより自由になった。子供はあまり生まれない世の中。人口が減る、若い人材は数が少なくなり、経験を積むチャンスもなかなかない中、私の世代以上の人材が搾取の使い捨てではあれ中心になっている。私はそれで現在は何とかなるが、個人を離れて全体を見れば危ういがだれがどうしたらよいのか?って感じだ。

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2017/10/20

タイトルで読者を選んでしまっているが、日本の雇用政策や歴史などを整理されており、非常に勉強になった。重要な内容が多く再度読み返したい。

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2017/09/11

読み始めてすぐに終了と判断。女性の労働について歴史的経緯も含めて詳しく解説しているが、どうにも関心を持って読むことができなかった。 大学生にはいいかも。。

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2017/05/14

日本的賃金制度や現在の労働時間は女性が家庭に入り男性が家計を支えるというモデルを想定し、作られたものなので女性の定年が引き延ばされて育休制度が導入され男性も家庭に入るようになった今、そのシステムのいたるところにひずみが生じうまく機能しなくなっている。 また、日本の雇用の仕方もかな...

日本的賃金制度や現在の労働時間は女性が家庭に入り男性が家計を支えるというモデルを想定し、作られたものなので女性の定年が引き延ばされて育休制度が導入され男性も家庭に入るようになった今、そのシステムのいたるところにひずみが生じうまく機能しなくなっている。 また、日本の雇用の仕方もかなり特殊で新卒一括採用や総合職、一般職といった現在も当たり前に行われている事が何を発端にして実施されだしたのか理解しておかないと不利益を被ることになるだろう。 日本の労働問題を解決するためには根本的な見直しが必要であり、本著はその問題を的確に指摘した良書だ。

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2016/12/21

この著者の新書を何冊か読んだことがあるが,どの本も説明がわかりやすく説得的であった。今回の本もどうようでわかりやすく説得的であった。この著者のように複雑なこともきっちり整理できるようになりたいと思った。 今回は,日本の女性労働の歴史であったが,日本の雇用の歴史も同時に振り返るこ...

この著者の新書を何冊か読んだことがあるが,どの本も説明がわかりやすく説得的であった。今回の本もどうようでわかりやすく説得的であった。この著者のように複雑なこともきっちり整理できるようになりたいと思った。 今回は,日本の女性労働の歴史であったが,日本の雇用の歴史も同時に振り返ることができた。 最後のほうで,女性の労働を論じるにあたって非正規雇用をとりあげなかった理由が述べられているところで,非正規雇用だけで1冊書けるとあったので,非正規雇用をテーマとした次作が出ることを期待したい。

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2017/12/01

今なおなぜ”女子”が働きづらいのか、明治期からの女子の働き方、日本の雇用(男性の)の歴史を概観することで、今の”女子”の置かれた状況をあぶりだす。 欧米では日本より女性が働きやすくなっており、M字型も台形型になっているが、それはそう昔のことではなく60年代になってからだという。...

今なおなぜ”女子”が働きづらいのか、明治期からの女子の働き方、日本の雇用(男性の)の歴史を概観することで、今の”女子”の置かれた状況をあぶりだす。 欧米では日本より女性が働きやすくなっており、M字型も台形型になっているが、それはそう昔のことではなく60年代になってからだという。その源泉は賃金に対する考え方で、欧米では企業の中の労働をその種類ごとに職務(ジョブ)として切り出し、その各職務を遂行する技能(スキル)のある労働者をはめこみ、それに対して賃金を払う。経理のできる人、旋盤のできる人といったように。なので女性の労働問題は、女性の多い職種はおおむね賃金が安く、男性の多い職種(管理職とか)に女性も進出する、ということであったという。 それに対し日本は、会社のメンバーを募りメンバーはどんな職務内容でもやるというやり方。しかも賃金は労働者の生活を保障するべきものである、という生活給思想が根本にある。それは大正11年に呉海軍工廠の伍堂卓雄の発表した「職工給与標準の要」であるという。それは第二次大戦中、戦後の労働運動の中でも継承された。扶養手当の思想はここから始まっていたのだ。 そして85年に均等法ができるが、それは世界的に男女平等が進められた時代で、欧米はジョブ型に立脚して女性の雇用を進めたのに対し、日本は生活給という日本型雇用・会社のメンバーとして一丸で働くという立脚点で進められた点にねじれがある、というのだ。 日本型の女性労働の平等化は会社のためなら深夜でも外国でもいとわず、どんな仕事でもやります、という男性の土俵に女性も乗せるもの。均等法から30年、ワークライフバランスという言葉がむなしく響く。

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2016/06/28

戦後の女性の労使関係史をまとめた新書だが、(戦後の)日本的労働観がその前提としてまとまっている良書。 欧米の仕事内容が規定された労使関係は、もともと女性と男性のジョブを分け賃金格差もあった。1950年ごろを見れば男女差別は日欧米共に歴然としてあった。 現在の欧米では流動性の高い就...

戦後の女性の労使関係史をまとめた新書だが、(戦後の)日本的労働観がその前提としてまとまっている良書。 欧米の仕事内容が規定された労使関係は、もともと女性と男性のジョブを分け賃金格差もあった。1950年ごろを見れば男女差別は日欧米共に歴然としてあった。 現在の欧米では流動性の高い就職状況下で規定されたジョブと賃金が結びつくことによって、女性を賃金の高い職につけるというアファーマティブアクションで分断の壁を少なくすることができている。一方日本は、流動性がなく、会社が従業員の生活給を出す著者の言う会社に従業員の生活が取り込まれるメンバーシップ制を敷いており、ジョブと賃金が結びつかず、無理やり、総合職、一般職という職業コースで賃金の区分けを行った。またこのことでメンバーシップ制度がそのまま温存され、女性を総合職ルートに取り込んでいく際に、ワークライフバランスや子どもや介護対象のいない他の従業員との軋轢が生まれることとなる。

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