危機と決断(上) の商品レビュー
上巻は生い立ちからリーマン破綻、下巻はリーマン破綻からFRB退任までです。FRB独自の経済分析から政策決定の過程が詳細に描かれていて、またFRB議長としての立場と一般的な考えの葛藤も描かれています。 伝記や回顧録としても読みごたえがありますし、投資をする上でも金融政策やマクロ経済...
上巻は生い立ちからリーマン破綻、下巻はリーマン破綻からFRB退任までです。FRB独自の経済分析から政策決定の過程が詳細に描かれていて、またFRB議長としての立場と一般的な考えの葛藤も描かれています。 伝記や回顧録としても読みごたえがありますし、投資をする上でも金融政策やマクロ経済を理解できて且つこういう指標に着目すると投資に役立つかもと思う内容もありました。 登場してくるFRBの委員や議長の仕事をサポートする人それぞれが優秀で、人が違っていれば金融危機への対応が上手くいかなかったのでは?とも思いました。
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2006年から2014年までFRB議長を勤めたベン・バーナンキの回顧録。上巻は幼年期からリーマン・ブラザーズ破綻までを描いている。世界金融危機に対して、大胆な量的緩和を行ったことから、サブプライム危機以降にFRBが一致団結して金融緩和を推し進めたという印象があった。しかしながら、...
2006年から2014年までFRB議長を勤めたベン・バーナンキの回顧録。上巻は幼年期からリーマン・ブラザーズ破綻までを描いている。世界金融危機に対して、大胆な量的緩和を行ったことから、サブプライム危機以降にFRBが一致団結して金融緩和を推し進めたという印象があった。しかしながら、実際は、FOMC(連邦公開市場委員会)内のタカ派たちを説得し、原油高によるインフレ率や市場の反応を観ながら徐々に利下げを行っていたのが事実だ。タカ派が頑張ってしまうのは、どこの中央銀行も変わらないようだ。 FRBは、「物価の安定」と「雇用の最大化」をデユアル・マンデートとして定めているが、バーナンキは、「固定されたインフレ目標と並行して固定された雇用目標を持つことは、不可能だ」と述べており、飽くまで「感触を掴める」程度だと懐疑的だったのが意外だった。(P.226) 2007年八月にサブプライム問題が表面化してから、FRBは連鎖危機を防ぐために、中央銀行による「最後の貸し手」機能を十全に生かして、ベアー・スタンレーやファニーメイ・フレディマックの救済に乗り出す。中央銀行の面目躍如といったところか。リーマン・ブラザーズ破綻に関しては、余りに負債が大きくて買収者が見つからなかったのが原因だと述べられているが、これは共に行動していたティム・ガイトナー(ニューヨーク連邦銀行総裁)、ヘンリー・ポールソン(財務長官)の回顧録を読んでみないと真相は分からないかもしれない。 当時の金融政策決定者だけあって、貴重な回顧録だ。長年に渡って、金融政策を研究していただけあって、学識に満ちた提言が述べられている。サブプライム危機以降に、状況がどんどん悪くなっていく様子が臨場感溢れて語られており、大変おもしろかった。バーナンキは、市場との対話を重視して、常に「市場の声」を聴いて政策決定をしていた。現在の日本銀行は、少しは見習って欲しいと思う。
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サブプライム問題の発生からリーマン・ブラザーズの破綻まで、自分の知りたかった期待に十分に応えてくれた。 ベン・バーナンキ氏の繊細な面が随所に見て取れる。 マエストロと呼ばれた前任のアラン・グリーンスパン氏の後を継ぐというプレッシャーは相当なものだったのでないだろうか。また、FRBという特殊な環境下で発する言葉へのこれでもかと言うくらいの配慮。本当に危機下においては大変なことだと感じた。 ベアー・スターンズを助けて、リーマン・ブラザーズをつぶしてAIGを救ったのはなぜかが非常に気になっているので、下巻も非常に楽しみ。
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