わが記憶、わが記録 堤清二×辻井喬 オーラルヒストリー の商品レビュー
全13回のインタビューだったが、読みやすいので、厚い割にサクサク読めた。 「堤清二」という軸をとおして、戦後〜2000年代まで、という歴史を俯瞰する一冊。 そもそも、自分自身、セゾングループの存在を知らなかった。物心ついた時には解散してたようなので。そのため、「え、セゾンっ...
全13回のインタビューだったが、読みやすいので、厚い割にサクサク読めた。 「堤清二」という軸をとおして、戦後〜2000年代まで、という歴史を俯瞰する一冊。 そもそも、自分自身、セゾングループの存在を知らなかった。物心ついた時には解散してたようなので。そのため、「え、セゾンってクレジットカード会社じゃないの?」「西武百貨店、無印、ロフト、西友、吉野家、ファミマとかって同じグループだったの?」という、そもそもの前提知識を知らなかったので、そこが面白く感じてしまった。池袋には随分お世話になってるのに、そこを知らないとは…という感じ。 また、堤清二という人物自体の面白さにも惹かれた。 経営者であるが、語られているのは経営云々ではなく、「反体制」という考え方。こうすれば儲かる、とかではなく、自分の思いに従って会社を切り盛りしているイメージ。経営者というよりは、思想家の面が強い印象を抱く。 同時に、政治にも関っているところにも面白さを覚える。おそらく、堤清二だけでなく、さまざまな経済人が政治に関わりつつ、フィクサーとなっているのだろう。それを考えると、政治の政策決定などは、政治家に着目していては解明できない部分もあるだろう。オーラルヒストリーによって、ある特定の人、アクションに注目して紐解くことで、歴史を俯瞰する新たな軸が一本とおる気がする。 オーラルヒストリーの手法としても、これだけ大変なのか、ということがよくわかった。全13回の、30時間にも及ぶインタビューを文書化し、確認を経て出す。これは相当大変な作業だろうな…。
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https://amzn.to/3oD48Xc セゾン文化の影響下で育った人間として、興味深く読んだ。そして、自分がなぜ堤清二に惹かれ、こだわるのか分かったように思う。キーワードは反逆と自己否定なんでしょう。もう、こんな経営者は出てこないと思う。
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内容は、堤清二9割、辻井喬1割という印象です。政治家秘書時代や、百貨店・セゾンのビジネスマン時代の話が面白かった。セゾン文化全盛と自分の若い頃が重なっているので、そういう意味でも感慨深い。
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堤清二が、もし父の地盤を継いで政治家になっていたら…もし父の遺産を放棄して西武百貨店だけを受け取るという選択をしていなかったら…もし「おいしい生活」というコピーがなかったら…もし渋谷に進出しなかったら…パルコを同級生の増田通二に託していなければ…数え切れない、もし?を抱える男、堤...
堤清二が、もし父の地盤を継いで政治家になっていたら…もし父の遺産を放棄して西武百貨店だけを受け取るという選択をしていなかったら…もし「おいしい生活」というコピーがなかったら…もし渋谷に進出しなかったら…パルコを同級生の増田通二に託していなければ…数え切れない、もし?を抱える男、堤清二/辻井喬のオーラルヒストリーです。単なるインタビューではなく政治学の御厨貴、哲学の鷲田清一、経済学の橋本寿朗という異なる専門家からの言葉に反応することで炙り出される多面体としての堤清二/辻井喬が余りにも巨大で複雑で。でも重厚感ゼロ。高度経済成長の末期に現れ、80年代の空気を作った男は実に饒舌にディテールを語っていきます。自己評価でも軽薄という言葉を使っていますが、その軽さが「無印良品は反体制商品」なんて深い言葉を生んでいるのだと思いました。共産党→政治家秘書→ビジネスマン=詩人これがメタモルフォーゼではなく、始めっから同じものであったからセゾン文化は生まれ消えたのでしょう。「私のヒストリーは、ユートピアイズムの消滅の歴史ではなかったか、と感じています。」帯のこの言葉すごいです。そう、セゾンとは詩人が経営した会社なのだと思いました。
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セゾングループを率いた堤清二氏に対する、御厨先生のオーラルヒストリー活動による聞き語り。 政治家秘書を経験し、経営者でありながら文化人でもあった堤清二氏に対して、御厨(政治)・橋本(経済)・鷲田(文化)の3名が濃密なヒアリングをしている。 驚かされる点は堤氏の圧倒的な知識・見...
セゾングループを率いた堤清二氏に対する、御厨先生のオーラルヒストリー活動による聞き語り。 政治家秘書を経験し、経営者でありながら文化人でもあった堤清二氏に対して、御厨(政治)・橋本(経済)・鷲田(文化)の3名が濃密なヒアリングをしている。 驚かされる点は堤氏の圧倒的な知識・見識の深さ。この人だからこそセゾングループ・パルコ文化が形成・興隆され、そして堤氏が去った後に衰退したことがよく分かる。 そして終章の御厨先生の著者解説が素晴らしい。 なぜこのオーラルヒストリーをつくったのか、そしてこの本のサブタイトルが「堤清二×辻井喬」なのか、この終章を読むと、もう一度本書を読みなおしたくなる。 御厨先生が手掛けるオーラルヒストリーシリーズの中で間違いなく最高傑作と言える名著。
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