色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 の商品レビュー
僕が村上春樹作品を読み続ける理由のひとつは、主人公が大好きだから、という事にあります。主人公はたいていイケメンで勉強が出来て生活習慣が素晴らしくジャズとクラシックに精通していますが、本人の自己評価は至って低く、自分は特徴の無い顔をしているし勉強も真剣に取り組んだことは無いし人とし...
僕が村上春樹作品を読み続ける理由のひとつは、主人公が大好きだから、という事にあります。主人公はたいていイケメンで勉強が出来て生活習慣が素晴らしくジャズとクラシックに精通していますが、本人の自己評価は至って低く、自分は特徴の無い顔をしているし勉強も真剣に取り組んだことは無いし人として空っぽで周りの人や世の中に何も与えることの出来ない人間だと思っています。夜中までウイスキー(銘柄はカティーサーク)片手にジャズ(スタン・ゲッツなど)を聴きながら本を読み、たとえ飲み過ぎたとしても翌朝の7時には規則正しく起きてチキンサンドウィッチを作って食べてジムかプールに行って適度な運動をし、日中は自分が十分に生活できるだけの少ない(決して少なくないはず)お金を稼ぐ為の仕事をこなし(無趣味なので散財もしない)、また夜になるとバーか自宅で酒を飲みながら本と音楽を楽しむ暮らしをしています。自宅には物が少なくシンプルで、炊事洗濯、料理にアイロンがけまで何でもこなし、自分ではそんなつもりは決して無いのに女性にモテます。こんな、現実世界に居たらきっとキザで嫌味だと罵られるであろう主人公像が僕は大好きだし、あぁかっこいいなと思いながら読んでいます。 今回の作品の主人公もまったく上述したとおりでクールでかっこよかったです(あくまで個人的感想)。 物語は、やはりこれも村上春樹作品に多いのですが、性と死と精神世界がテーマになっていてそこに時空の歪みが生じたり生じなかったりして、展開が進みます。5人の仲良しグループに悪霊なるものが取り付いてその仲が少しずつ上手くいかなくなる様子と、多指症(5本+余計な1本)であるが故にピアノが上手く弾けないピアニストとをリンクさせていたりと、相変わらず比喩的な表現が多いのも僕が村上作品が好きな理由のひとつです。村上作品は「意味がわからない」という感想を持たれる事が多いし、僕も全くもって同感ですが、この作品に関して言えば、誰が読んでも「意味が分かる部類」に入る作品なのできっと初心者でも読みやすいと思います。
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村上春樹は初めて読みました。 でもこの1冊では良さはつかみきれなかったので他にも読んでみようと思います。 物語の構成や内容は惹きつけられました。もっと抽象的な表現かと思っていたけれど、情景、心情の描写がとても鮮明に感じ読みやすかったです。全体的な雰囲気はうまく言えないけれどサイレ...
村上春樹は初めて読みました。 でもこの1冊では良さはつかみきれなかったので他にも読んでみようと思います。 物語の構成や内容は惹きつけられました。もっと抽象的な表現かと思っていたけれど、情景、心情の描写がとても鮮明に感じ読みやすかったです。全体的な雰囲気はうまく言えないけれどサイレント映画が合うなーという感じ。音楽だけはテーマのリストの曲が流れている。そんな感じでした。静かだけどもうねりがあるというか…。 登場人物の名前に色が入っているあたり関係ないと思うけれどポールオースターの作品を思い出しました。 色々重要なピースが散りばめられ、要所要所で効いてくるけどもピースは曖昧なままで謎も残されたままなのでもどかしい気もしますが、その良し悪しは人によるところだと思います。 私はこの物語に関してはすっきりさせて読み終わりたかったかなーと思います。 もし過去に戻れるとしたら?という質問にたいして誰しもピンポイントでここ!という取り戻したい出来事ってあるんじゃないかなぁーと思う作品でした。 読んでいて途中で気づいたのはつくる君の一人称で語られていないという事。とくに気にせず主人公語りと思っていたけど、語りはつくる君のことも彼って言ってるし。自分の分身に語らせている形になっているのかなぁと、その辺のさり気なさや語りはやはり流石といったところなのかもしれません。
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自分の気持ちに重なるところがあった。 死にたいということ、好きな人に対する想い、抑えることの出来ない感情、取り残された自分。
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今まで、村上春樹氏の本はあんまりだったけど、今回はめっちゃおもしろかった。好みが変わってきたのかな・・・?
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今年一冊目の本。今更とても恥ずかしいが、村上春樹さんはこれが2作品目だ。ストーリー的に最後に残る???灰田はどうしたの?沙羅の仲良くしてた男は誰?などモヤモヤ感はいっぱいなのだが、何か満たされたような幸せな気持ちが漂った。作品中のテーマ曲である巡礼の年も聴いたことないけれど、何と...
今年一冊目の本。今更とても恥ずかしいが、村上春樹さんはこれが2作品目だ。ストーリー的に最後に残る???灰田はどうしたの?沙羅の仲良くしてた男は誰?などモヤモヤ感はいっぱいなのだが、何か満たされたような幸せな気持ちが漂った。作品中のテーマ曲である巡礼の年も聴いたことないけれど、何となく浮かぶような。 登場人物は少ないのに、それぞれの心情が、深く上手くえぐり出して表現されてると思った。 今年、もっとたくさん読んでみようと思う。
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久しぶりの村上春樹読了。 この歳になると自然とあの時こうしとけば良かったと思えることが増えてくるが、それをサスペンス仕立てにしたて、次の展開が実に気になるような感じで進んでいった。読んで損なし。
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新年1冊目の読了。 この本を読むことで、自分自身の心の何処かに瘡蓋となっている過去の出来事を振り返ること、その勇気の大切さを知ることが出来る。 知らなくてはならないこと、だけど、知りたくないことは多くある。 一見、難しそうな、いや、近くにある問題を読み易く、丁寧な言葉で色彩を描く...
新年1冊目の読了。 この本を読むことで、自分自身の心の何処かに瘡蓋となっている過去の出来事を振り返ること、その勇気の大切さを知ることが出来る。 知らなくてはならないこと、だけど、知りたくないことは多くある。 一見、難しそうな、いや、近くにある問題を読み易く、丁寧な言葉で色彩を描くような村上春樹作品は贅沢だ。 謎が多くあり、その余韻に浸ることができるのも有難い。
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闇の過去にも否定すべきでないものがある。目を閉じず見つめよ。閉ざすな、そこにあるものを見よ。自信と、勇気を持つためのヒントがある。
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主人公、多崎つくるは 高校時代に完璧なほど調和された 仲の良い5人グループに属していた。 彼以外の男女4人は 色を表す文字が苗字にあった。 ある日突然、理由を知らされずに 絶縁を申し渡された。 彼に大きな影響を与えたそのことを、 30代半ばになって新しい彼女に促され 理由を確か...
主人公、多崎つくるは 高校時代に完璧なほど調和された 仲の良い5人グループに属していた。 彼以外の男女4人は 色を表す文字が苗字にあった。 ある日突然、理由を知らされずに 絶縁を申し渡された。 彼に大きな影響を与えたそのことを、 30代半ばになって新しい彼女に促され 理由を確かめにいく。といような話。 良い感じにしっとり暗く、重くない。 タイトルから大筋が分かるにも関わらず ストーリー性があるから続きが気になり すぐ読めてしまう。 主人公は自分のことを個性がなく 空っぽだと思っている。けれど、 自分自身でよく思考して着々と 生きているる様は、私には たくましく羨ましく見えた。 『たとえ君が空っぽの容器だったとしても、それでいいじゃない。もしそうだとしても、君はとても素敵な、心を惹かれる容器だよ。自分自身は何であるかなんて、そんなこと本当は誰にもわかりやしない。それなら君はどこまでも美しいかたちの入れ物になればいいんだ。誰かが思わず中に何かを入れたくなるような、しっかり好感の持てる容器に。』 『すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃないんだ。僕らはあのころ何かを強く信じていたし、何かを強く信じることのできる自分を持っていた。そんな思いがそのままどこかに虚しく消えてしまうことはない』 未解決なこともあるので 読んだ後の想像が楽しい。
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文庫本が出たので再読。色彩を持つ、持たないという設定がまずひかれる。人生においてあまりにも大きく、その時点から自分が変わってしまったというできごとを、封印してしまうか、ある時期もう一度探ってみるか。探ったとしても探らないとしても、そう思わせたきっかけによって、あらためて過去のでき...
文庫本が出たので再読。色彩を持つ、持たないという設定がまずひかれる。人生においてあまりにも大きく、その時点から自分が変わってしまったというできごとを、封印してしまうか、ある時期もう一度探ってみるか。探ったとしても探らないとしても、そう思わせたきっかけによって、あらためて過去のできごとを、今の自分の中にどのように存在させていくか。読んだ後そんなことを考えました。
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