温泉の平和と戦争 の商品レビュー
すごいタイトルだ。だが読めばすぐに納得できる。 南北朝時代に一進一退の攻防を繰り広げていた洛中の湯屋では、合戦が無い日は敵も味方もなく世間話をして過ごした、と。 源平の合戦で、捕らえられた敵の大将を湯浴みでもてなした、と。 ヨーロッパでも浴場はアジール、平和領域、聖域、憩い...
すごいタイトルだ。だが読めばすぐに納得できる。 南北朝時代に一進一退の攻防を繰り広げていた洛中の湯屋では、合戦が無い日は敵も味方もなく世間話をして過ごした、と。 源平の合戦で、捕らえられた敵の大将を湯浴みでもてなした、と。 ヨーロッパでも浴場はアジール、平和領域、聖域、憩いの場だった。それ故喧嘩は禁じられているし、また罪人の入浴には制限があったりもした。 一方で、温泉獲得は戦争の歴史でもある。温泉発見伝説のコアは、動物発見伝説、高僧・聖者発見伝説に加えて、国王・為政者・有力武将発見伝説がある。最後のそれは、明らかに戦争がらみである。まあ、実際に温泉地を巡ると弘法大師空海による温泉ばかりがあちこちにあるのだが、山岳・山林で修行をしたり、鉱物も含めて山水に明るかったりで、もっともでもある。 日本神話から戦国時代、幕末に日中戦争、太平洋戦争と、それぞれの時代でずっと温泉が愛されている。当然横取りしようとする人もいる。冷戦時にはアメリカで温泉地を密かに核シェルターが作られた。ドイツ帝国は温泉に大本営を置いたりもしていた。 現代の日本では温泉に戦争も平和もないようにも思えるが、アメリカと中国は潜在的温泉ポテンシャルが高いというから、この二国では、まだまだ温泉が平和と戦争のシーンになりそうな予感もする。 なんとも面白い視点の本だった。
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