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習得への情熱 チェスから武術へ の商品レビュー

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32件のお客様レビュー

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2024/11/12

まるで現代の修行者のような道を歩んだ男がいる。チェスの神童として知られ、後に太極拳のプッシュハンズで世界チャンピオンとなったジョシュア・ワイツキン。彼の著書『The Art of Learning』は、表向きは学習論の体裁を取りながら、実は古来より伝わる秘伝の現代的解釈とも読める...

まるで現代の修行者のような道を歩んだ男がいる。チェスの神童として知られ、後に太極拳のプッシュハンズで世界チャンピオンとなったジョシュア・ワイツキン。彼の著書『The Art of Learning』は、表向きは学習論の体裁を取りながら、実は古来より伝わる秘伝の現代的解釈とも読めるのだ。 幼き頃のワイツキンは、チェスの盤面に隠された神秘的なパターンに取り憑かれていた。彼は徐々に、初心者が執着する表層的な「数」の理解(ポーンは1点、ビショップとナイトは3点...)から、盤面全体を流れる「気」のような力の存在を感じ取るようになっていく。それは東洋の達人たちが語る「見えない力」の理解に驚くほど近いものだった。 面白いことに、彼のチェスの極意は、古代の武術の奥義と不思議なほど重なる。例えば、エンドゲームでの駒の動かし方。それは単なる「勝つための手順」ではなく、相手の動きを制限し、空間全体を支配する―まさに古来の兵法書が説く「形なき戦い」の本質そのものなのだ。 チェスの修練を極めた彼が次に導かれたのは、意外にも太極拳の世界だった。しかし、これは偶然ではないのかもしれない。プッシュハンズ(推手)という、一見するとチェスとは全く異なる技法の中に、彼は同じ真理を見出すのだから。 プッシュハンズでは、二人の修練者が互いの「中心」を探り合う。それは見た目には単純な押し合いに見えるが、実は古代中国の道家が説く「気」の運用の実践そのものだ。面白いのは、ここでもチェスと同じ原理が働くということ。相手の力が強ければ強いほど、それを利用できる―これはチェスで相手の強力な攻めを誘い込んで反撃するのと、本質的に同じ思考なのだ。 「投力」という太極拳の奥義がある。これは単なる技術ではなく、道家の言う「全身の気が一点に集中する」状態の表現だ。ワイツキンは、この感覚がチェスでの決定的な一手を放つときの感覚と酷似していることに気づく。どちらも、個々の「技」を超えた、より深い「理」の現れなのだ。 彼の修練法は、道家の内丹術を思わせる。チェスの特定の局面を数百回、太極拳の単一の動作を数千回と繰り返す。それは表面的には異なる実践でありながら、実は同じ「道」への沈潜だった。古来の修行者たちが説く「一を知れば万を知る」の原理が、ここに現代的な形で現れているのだ。 特に興味深いのは「形から無形へ」という彼の悟りだ。チェスでも太極拳でも、最初は決められた形を学ぶ。しかし真の達人は、最終的にそれらの形を超越する。これは禅の「守破離」の思想や、道家の「無為自然」の境地と驚くほど重なってくる。 「ソフト技術」という彼の概念も、実は道家の「柔よく剛を制す」の現代的解釈として読める。チェスでいう「地形を譲って反撃の機会を作る」という戦略も、太極拳の「相手の力を借りて制する」という原理も、実は同じ深い真理を指し示しているのだ。 ワイツキンは意識していたのかもしれないし、いなかったのかもしれない。しかし彼の探求は、古来の修行者たちが追い求めた「道」の、現代における再発見として読むことができる。チェスと武術という、一見かけ離れた二つの道を極めることで、彼は普遍的な真理に到達したのだ。 この本は確かに「学習の技術」を教えてくれる。でも実は、それ以上の何かが隠されている。それは個々の技術や方法論を超えた、より深い叡智への招待状なんじゃないだろうか。 古の修行者たちが命を懸けて追い求めた真理は、案外、現代のチェスや格闘技の世界にも姿を変えて息づいているのかもしれない。そう考えると、この本の読み方も、ぐっと深みが出てくる気がするのだ。

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2024/06/21

プロセスを褒める。 成功した時、失敗した時にプロセスを褒める、見直すと良い。 そうすれば挫折する事がない。 自分でゾーンの出し方を見つける、ゾーンの入り方、入るポイントは違う。(テンションが上がる所)そこに見つけ、最終的にすぐにゾーンに入れるように鍛える。そうすれば良いパフォー...

プロセスを褒める。 成功した時、失敗した時にプロセスを褒める、見直すと良い。 そうすれば挫折する事がない。 自分でゾーンの出し方を見つける、ゾーンの入り方、入るポイントは違う。(テンションが上がる所)そこに見つけ、最終的にすぐにゾーンに入れるように鍛える。そうすれば良いパフォーマンスが引き出せる。(どのジャンルでも) それにしても読むのに苦労した!笑

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2024/04/30

チェスマスターでありながら、太極拳推手においても世界大会で優勝するほどの実力を持つ異例の経歴、ジュッシュ・ウェイツキン氏著の本書。心技体を丁寧にチェス、太極拳の上達に合わせて事例を交えて紹介し、チェス、太極拳以外のあらゆる分野に活かせるように洗練していった名著。初期段階、熟達した...

チェスマスターでありながら、太極拳推手においても世界大会で優勝するほどの実力を持つ異例の経歴、ジュッシュ・ウェイツキン氏著の本書。心技体を丁寧にチェス、太極拳の上達に合わせて事例を交えて紹介し、チェス、太極拳以外のあらゆる分野に活かせるように洗練していった名著。初期段階、熟達した段階、更に高みを目指す段階に合わせた精神的な修練が学べる。また著者自身の人生がドラマチックであるため、物語としても読み応えがある。精神や思考などの内面に迫る内容が多いが、自己啓発的な根拠のないものではなく、エビデンスベースであったり、自身で試行した結果であるものが中心であるのも◎。

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2024/04/06

チェスや太極拳を極めた著者がその習得過程を突き詰め、「極める」という事を考え抜いた本である。自己啓発本としても読めるが、学ぶ、体得するとは何かを考えさせられる。 ー 決められた動きをスローモーションで、徹底的に純化させながら、何千回も繰り返してきたことで、僕の体はもはや直感的に...

チェスや太極拳を極めた著者がその習得過程を突き詰め、「極める」という事を考え抜いた本である。自己啓発本としても読めるが、学ぶ、体得するとは何かを考えさせられる。 ー 決められた動きをスローモーションで、徹底的に純化させながら、何千回も繰り返してきたことで、僕の体はもはや直感的にそういう姿勢を取ることができるようになっていた。この種の学習体験はチェスでもよくあることだ。チェスのテクニックや原理、定石が自分の無意識と一体化するまで徹底的に学ぶ習慣がついていた。 ー 正解を出すことと知能レベルには因果関係は無いことが示されている。難問を突きつけられた時、実体理論者で頭脳明晰な子供の方が、習得理論者でさほど賢くはないとされている子供よりも、はるかにもろく崩れてしまう傾向が強い。 ー 騒音などの外部刺激に対して、いかに平常心を保つかと言う訓練。 気になった箇所を書き出したが、特に最後の「平常心を保つ」という点は今の自分には強く刺さる考え方だ。外部刺激だけではなく、内発的な感情に対し、いかに動揺しないか。そうしたコントロールスキルも向上するという事だろうか。ならば、人間は機械のように冷静でドライな存在になってしまわないのか。感情が鈍磨する事と、感情を統制する事の違いを理解して身に付けられれば、悲しみからの立ち直りは早いだろうか。生物として、心が囚われて身体が危機に晒されるのは、望ましくない。平常心は防御機能として、意識して鍛えるべきだと再認識した。

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2024/03/30

チェスと太極拳で世界一になった著者の意識的学習法を紹介した本。 思考が揺らぎ始めたら、少しの間だけすべてを忘れて回復させる。

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2023/12/25

チェスのトッププレーヤーでもありながら、太極拳の世界でもトップに登りつめた著者が、習得のための方法論を自身のエピソードを交えながら語っている本になっている。 当然、トッププレーヤーの経験による方法論なので、難しいと感じるところもあったが、 読んでいて、考えさせられるというか、真...

チェスのトッププレーヤーでもありながら、太極拳の世界でもトップに登りつめた著者が、習得のための方法論を自身のエピソードを交えながら語っている本になっている。 当然、トッププレーヤーの経験による方法論なので、難しいと感じるところもあったが、 読んでいて、考えさせられるというか、真似していきたいと思わせてくれる内容だった。 そもそも、能力や知識への考えとして、生まれつきや人によって得意不得意の決まっているものと考えるのでなく、誰でも少しずつ、身につけ、上達していけるというマインドセットは大切だと感じたし、 ゾーンに入るための習慣づくりの方法論、特に、困難な状況でも、むしろそれを利用して高い集中を保てるように訓練していくということは、この本を読むまであまり考えなかった内容で、勉強になった。 方法論としても、ドキュメンタリー的にもおもしろく読める良い本だった。

Posted byブクログ

2023/09/21

気になる箇所を書き出していったら、膨大な量になったので、そんなメモたちの要約にあたるんじゃないかと思われる部分を記す。 * それがどんなに小さなものであれ、ある一つの技術を徹底的に磨き上げさえすれば、その感覚をクオリティの指標にすえて、磨く対象をさまざまな別のものに広げていけ...

気になる箇所を書き出していったら、膨大な量になったので、そんなメモたちの要約にあたるんじゃないかと思われる部分を記す。 * それがどんなに小さなものであれ、ある一つの技術を徹底的に磨き上げさえすれば、その感覚をクオリティの指標にすえて、磨く対象をさまざまな別のものに広げていけるところにある。よい感覚がどんなものが一度わかってしまえば、別の何かを追求する際にも、その感覚を得られるようになることを目標にすればいい。 単純な日常のなかに価値を見いだすこと、平凡なものの中に深く潜って行き、そこに隠れている人生の豊かさを発見することが、幸運だけでなく成功も生み出すはずだと僕は強く信じている。 * 具体的な練習メニューを書いてくれてる部分もあるし、チェスや太極拳の試合の攻防を詳細に描写している部分もある。 著者は、とても努力する人で、繊細で、工夫を凝らして上昇していった人なのだとわかる。 ハイレベルな話だけでなく、ハイレベルを極めると上のような、平凡な日常も発見の連続のようになるのだろう。 この本を読むと、自分の日々の努力にはまだまだ努力が足りないと思えてくる。くさってるんじゃなくて、やる気を起こさせてくれる。 * 訳者の言葉づかいで気になった箇所 「ゆく」を多用。たまに「行く」。「行」の意味合いが強い時に使ってるのか、平仮名が多いから漢字にしただけなのか。 私、個人的には「いく」が好きだけどなー。

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2022/02/07

フィードバックの重要性、そしてフローに入ることで2つの分野の頂点を目指した著者。 折れない気持ちが大事ですね。

Posted byブクログ

2021/09/03

自分自身の失敗や成功、そしてプロセス、リカバリー方法について、ここまで冷静に分析している事が素晴らしい。 メンタルの要素についても、とても論理的で分かりやすい。

Posted byブクログ

2021/08/17

よく、続けられる才能があるからこんなに素晴らしい記録が残せたとか、そこが天才だとか言われているのをきいてきたけど、何故続けられるのかが少しわかった。 こんなことを書いた人は初めてなのでは?

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